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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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337/715

337 話は良く聞きましょう



 ――莉奈は。




 その後の事は良く覚えていないが、気付いたら白竜宮のとある部屋のソファで寝ていた。

 多分、いや絶対、フェリクス王に抱えられて来たに違いない。

 お姫様抱っこ……な訳がないから、肩に抱えてか脇に抱えてだろう。荷物か私は。




 ――ボボッ。




「あ〜あ〜あぁ」

 顔があんなに近くにあったし!! 

 なんなら吐息がかかってたし!!

「あ〜!!」

 莉奈は再び思い出し、ソファの上で悶絶するのであった。





 ◇◇◇





「リナ、なんか大変な事になってたね」

「見てて面白かった」

 いつまでも、ソファの上で悶えている暇などなく、莉奈は真珠姫の宿舎にいた。

 空気を読んで手伝いに来てくれた近衛師団のアメリアと、たまたま居合わせた警備兵のアンナがいる。

 面白かったと他人事なのがアンナである。



「しっかし、スゴイよね。この部屋。コンセプトは何なんだろう」

 アメリアが真珠姫の部屋を見渡し、口をポカンと開けていた。

 自分も趣味が良いとは思わないが、これよりはマシだと思う。

 いや、逆に何か極みを感じると感嘆する。

「なんか知らないけど『おめでとう』って言いたくなる部屋だよねぇ」

「それ分かる!!」

 アメリアとアンナが楽しそうに笑っていた。

「シュゼル殿下にそう伝えとく」

「「うわぁ!! 嘘うそ。ステキナ部屋デスヨ!!」」

 莉奈に棒読みで言われ、誰が改装したのか思い出した2人は、慌てて否定していた。




 ーー2時間後。




 真珠姫の部屋は入り口のレースはそのままだが、ほぼ跡形もなくなった。

 あの紅白ピンクの垂れ幕は、残念ながら撤去させてもらった。

 シュゼル皇子には悪いけれど、あんな垂れ幕の掛かっている部屋で寝たくはない。落ち着かないし。

 しかし、こんな改装をしたシュゼル皇子の自室って、どんな感じなんだろう?

 エギエディルス皇子に訊いてみようかな。




「変われば変わるモノだな」

「「っ!?」」

 その突然の声と姿に。近衛師団兵のアメリアと警備兵のアンナは、飛び跳ねるようにして距離を取った。

 それもそうだ。ヒョイと現れたのは王竜だった。

「王も真珠姫の部屋を見たのですか?」

 この口振りから、改装前の部屋も覗いた感じがする。

 2人は怯えているけれど、莉奈は怖くないので飄々としていた。

「あやつが、この世の終わりみたいな表情かおをして部屋から出て来た時に少し」

「あぁ〜」

 この世の終わりって、真珠姫は余程ショックだったに違いない。

「人の趣味をとやかく言うつもりはないが、アレはないと我でも思う」

「アハハ」

 莉奈はもう笑うしかない。

「リナ」

「はい?」

「コレをやるから、我の部屋も改装してくれ」

 そう言って王竜は、右手でカリカリッと自身の首を掻き毟り、ポロポロと5枚程、鱗を床に落とした。



 とうとう、王竜も改装を求めますか。

 苦笑いしながら、莉奈は王竜が無造作に掻き毟って落ちた鱗を拾った。

 学校で使うノートより少しだけ大きいその黒い鱗は、宝石のオニキスか黒曜石オブシディアンみたいでもの凄く綺麗だ。

 表面はツルッとしているし、想像以上に軽い。土や埃を洗い流して乾いた布で磨き上げれば、自分の顔が映るに違いない。

「5枚もイイのですか?」

 破格も良い所である。

 口とは裏腹に、莉奈の瞳は爛々としていた。

「皆で分けるとイイ。その娘も、金食い虫を番に持ったからな」

 王竜はチラッとアメリアを見た。

 金食い虫……そう言えば、アメリアの黄色の竜【琥珀こはくの月】も女の子だ。確かに改装にはお金が掛かったし、すぐに破壊されたりもするし、これからもお金は掛かるだろう。

 アメリアとアンナに1枚ずつ渡し、後は手伝ってくれる誰かにあげよう。勿論、1枚は莉奈の懐にも入れた。

「あ、あ、あ、ありがとうございます!!」

 ビクビクしながらも、アメリアは頭を何度も何度も下げていた。

 怖いけれど嬉しいみたいだ。



「あたしもいいんですか?」

 アンナがササッと莉奈の背後に隠れながら、王竜に近付いて訊いた。

 関係のない自分にまで、こんな貴重なモノを良いのかと。

「直に必要になる」

 王竜は思わせ振りに笑った。

 その口振りに、莉奈はまさか? と思った。

 この話の流れからして、竜がアンナを? そう感じ取ったーー。

 ーーのだが、勘の悪過ぎるアンナの言動に愕然とする。



「んじゃ、早速鱗売って砂糖をいっぱい買って来るね!! だから、アイスクリーム、ケーキ、お菓子を作ってよ、リナ!!」

「イヤいや、アンナ聞いてた? 直にーー」

「そうだ! この間、部屋のソファを燃やしちゃったから、ソファも新しいのを買おう!! ベッドも脚が折れて傾いてるし、カーテンビリビリだし、王竜様ありがとうございました〜!!」

「ちょっと、アンナ!?」

「アハハハハ〜ッ、ソファにベッドにアイスクリーム!!」

 王竜の話どころか、莉奈の話にも一切耳を傾けなかったアンナは、一方的に喋りまくるとケラケラ笑いながら走り去ってしまった。

 あの子、本当に人の話を聞かないよね。

 鱗の対価が王竜の部屋の改装なんだって事、全然聞いてもいないし。

「何をしたら部屋のソファが燃えるんだ?」

 アメリアは色んな意味で唖然としていた。

 暴れているんじゃない? アンナだし。




「王はどんな部屋がいいですか?」

 すっ飛んで行ったアンナは放っておくとして、真珠姫みたいに忘れたら大変だと、王竜に訊いた。

 レースやリボンなんか好みではないだろうし。

「簡単に、黒い布を部屋全体に掛けてくれれば良い。こんな飾りなどいらん」

 王竜は、真珠姫のレースやリボンをウンザリした目で見ていた。

 ただ、ログハウスか馬の宿舎みたいに、木が剥き出しの壁がつまらないと言う。それを隠す程度で良いらしい。

「食事用の台と、天窓はいかが致します?」

「飯用の台はどうでもいいが、星は見えた方がいい。とにかく、ゴテゴテさせんでくれ」

「色は黒一色ですか?」

「一色。あぁ、そうそう、部屋の端にこのくらいの頑丈な台を」

 ついでに作ってくれ、と王竜は手を使って高さを指定した。

 高さ的に1mくらいだろうか。食事用の台ではなさそうだ。

「何に使うか訊いても?」

「枕にする」




 ――ま・く・ら!!




 アメリアは目を丸くしていたけれど、莉奈は苦笑いしていた。

 そういえば、以前祖母が飼っていた犬は、ソファの縁やぬいぐるみを枕代わりにしていた。

 人間と同じで頭が楽なのだろう。



「なら、台の上に藁を詰めた硬めのクッションを、付けておきます」

「任せる」

 莉奈と交渉し満足した王竜は、去り際にチラッと真珠姫の部屋を見て鼻で笑うと、ノシノシとどこかへ歩いて行くのであった。













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