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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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210 チキンカツサンド作り



 オニオンリングの作り方は簡単なので、説明したらリック料理長達が作ってくれるとの事だった。まぁ、皇子の分というよりは自分達のついでの様な気もするけど。



 お言葉に甘えてチキンカツサンドを作ろう。だがその前に、パンを魔法鞄(マジックバッグ)から何個か取り出した。バゲットもどきは皆が食べているから、厨房にある。でも、それより柔らかいふかふかのパンは、砂糖を使うからあまり普及されてないのだ。

 王族に出す機会が多い……というか、出す機会しかない莉奈の魔法鞄(マジックバッグ)には色々と食材や出来た物が、たくさん入っている。

 おかげで、容量がギリギリ。「お前は何をそんなに入れているんだよ?」と呆れられたが、なんとかならないかエギエディルス皇子に相談中であった。



 軽く焼いたパンにバターを塗って、レタス、ルッコラ、玉ねぎ、チキンカツ……そして、主役になりつつあるタルタルソースを入れて挟めば "チキンカツサンド" の出来上がりである。

 小さいエギエディルス皇子でも、食べやすい様に半分に切って油紙に包んだ。こうすれば、タルタルソースが漏れても手が汚れない。

「パンに挟んだ後、紙に包むのか……なるほど」

 リック料理長は、そういう食べ方もあるのかと感心しながらジッと見ていた。

「随分と作るな」

 マテウス副料理長は、食べ方より個数が気になり呟いた。

 エギエディルス皇子にあげると作り始めた割には、個数が多いからだろう。

「面白道具を貰ったので、魔法省のタールさんの所に持って行こうと思ってね」

 タールさんのには、タルタルソースは入れてはいないけど。味見して、大丈夫なら後から自分で入れて貰おうと考えている。


 それにしても "黒狼宮" になんて、この "白竜宮" なみに全然行かない。用がないのも理由だけど、自分を喚んだ魔法省の人達に会ったら……どういう顔をしてイイのかイマイチ分からないからだ。

 よっ元気? って挨拶するのも可笑しな話だし、無視も出来ない。会釈するだけなのもナンか違う気がする。



「……」

 国宝とまで行かないが、数少ない転送魔法の付与された "魔導具のペンダント" を面白道具という莉奈に、エギエディルス皇子は苦笑していた。


「ふ~ん?」

 マテウス副料理長達は、そんな事よりもタール長官に持って行くと聞き、なんか不服そうである。これはきっと―――

「食べたいんでしょう?」

「「「食べたーい!!」」」

 莉奈が試しに訊いてみたら、やっぱり全員から心地よい返事が返ってきた。

 ふかふかのパンで作るチキンカツサンドセットは、まだ皆は食べれないしね。

「なら。2つだけセットを作ってあげるから、くじ引きで決めなよ」

 パンに挟まなくても、似たのは食べれるのだから……まぁ文句はないでしょう。

 莉奈は木製のお盆……じゃないトレイに、チキンカツサンドと出来上がったオニオンリング。そして、改めて作ったリンゴジュースを置いた。

 チキンカツサンドセットである。なかなか良い感じに出来た。放課後、友達と行ったハンバーガー店が懐かしい。



「「「くじ引きって?」」」

 新たな言葉に、皆は頭にハテナを浮かべていた。

「この箱の中に、先端が赤い棒が1本入っているから、それを引いた人がこのセットを食べられる」

 莉奈は魔法鞄(マジックバッグ)から木の箱を取り出した。少し長細め長方形の木の箱には、上部に500円くらいの丸い穴が1つだけ開いている。その中には割り箸より少し細い木の棒が、10本くらい差してある。

 そのうち1本だけ、先端を赤く染めた棒が入っているのだ。何回かに分けてやれば、丁度いい感じに決まるだろう。ちなみにコレ、神社にある "おみくじ" とバラエティー番組で順番を決める番号札をヒントに作った物だ。

 何かある度に揉めるこの人達のために、じゃんけんとは別の運試しを用意しておいたのである。

 アミダくじでもイイけど、毎回書くのは面倒だからね。



「ナニそれ。面白い」

「まずは、俺が引く!!」

「なんでだよ。俺が先に引く」

「はぁ? 誰が引くかを勝手に決めるなよ。俺からだ!!」


 

 ナゼモメる!!

 くじ引きを引く順番からモメ始めるって事があるの?

 話を聞いていると、先に引いた方が有利だとか後の方が確率がどうとか、どうでもイイ事でモメている。実にくだらない。



「こっちがエドの分、お兄ちゃんの分はこっちね?」

「……あ……あぁ」

 莉奈は、皆のくだらない論争に呆れているエギエディルス皇子に、さっさと作ったチキンカツサンドセットを渡した。

 巻き込まれても面倒くさい。エギエディルス皇子は魔法鞄(マジックバッグ)にしまいつつも、皆の言動に少しヒキ気味であった。





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