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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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211 レッツゴー【黒狼宮】



 チキンカツサンドセットはモメている間に、近衛師団兵が来てしまい、さらにモメ始めていた。

 もう、収拾出来ないと悟った莉奈は、ひっそりともう1つセットを増やしておいた。ないよりはあった方がイイだろう。

 どこに行ってもモメる……それは、もうこの国の宿命。莉奈は呆れていた。関わらないに限る。

 そしてエギエディルス皇子と、そそくさと厨房から逃げる様に出たのであった。




 ◇◇◇




 【転送の間】

 窓のない20畳程の部屋の真ん中には、円が大小と2重に描かれている。その中に六芒星。そして、見てもまったく読めない文字が、絵画の様に描かれていた。

 触っても擦っても消えない。焼き付けてあるのとも違う。ペンキとも違う。特殊なモノで描かれているのだろう。

 アニメや漫画で見た様な魔法陣に興奮する。



瞬間移動テレポートはいいけど、どうすればイイの?」

【転送の間】に着いた莉奈は、キョロキョロしながら訊いた。

 この間来た時は、フェリクス王と一緒だったから、落ち着いて見ていられなかった。先程、エギエディルス皇子に連れて来られた時にも見たが、何度見ても不思議で楽しい。

 この魔導具ペンダントをどうやって使えば瞬間移動テレポート出来るのだろうか。

 エギエディルス皇子は、莉奈のワクワクした様な表情に苦笑いしていた。さっき説明しようとしていたのに、遮ったのはお前だろう……と。

「まず行きたい場所の宮の色に合わせる」

「ふんふん。ならタールさんの所に行きたいから "黒狼宮" の黒」

「1階か最上階に転送の間がある訳だけど、そのツマミを軽く引いて魔力を注げば最上階。そのままなら1階」

「ほぉほぉ」

 コイン型のツマミを、軽く引っ張ってみるとカチリと数ミリ下に動いた。

 途端にコインの色が、銀色から金色に変わった。



 ――――え?



 このコイン……ただの飾りやスイッチじゃないんだ!!



「お前……あまり、カチカチやるなよ。壊れるぞ?」

 色が変わる事を知った莉奈が、カチカチと弄り倒して遊んでいたからだ。そこまで変化するのが楽しい……いや面白いらしい。

「金色は上? 銀色は下?」

「そうだよ」

 魔導具1つで、莉奈がここまで嬉しそうにするとは思わなかった。なら、もっと早くあげれば良かったと、エギエディルス皇子は笑った。

「宮の色に合わせ、階を選ぶ。そして……魔法陣―――」

 魔法陣の真ん中で魔力を流せば使える……と言う前に、すでに莉奈は魔法陣の真ん中に立っていた。瞬間移動テレポート自体は一緒に何回か使った事があったから要領は分かる様だった。

「魔力ってどのくらい? 少し? ガッツリ?」

 莉奈の瞳は好奇心でいっぱいだった。

 人に発動してもらって瞬間移動テレポートするのと、自ら発動させるのとでは大違いだ。

「ガッツリってなんだよ」

 "少し" に対してなら "多め" だろう……とか、ヤル気満々過ぎるだろうとか、ツッコミ所が満載過ぎる。

「ガッツリはガッツリだよ」

 小躍りしそうな程、莉奈はウキウキしていた。

 瞬間移動テレポートが自分で使えるなんて嬉しくて仕方がない。早く早く!!

「……少し落ち着けよ」

「そういえば、魔力のない人はどうやってコレ使うの?」

「はぁ……」

 エギエディルス皇子は、莉奈のあまりの変わり様に眉間を押さえていた。

 興奮していたかと思えば急に冷静になり、真面目な質問をしてきたからだ。女と言う生き物がそうなのか、コイツが特別そうなのか……後者な気がする。



「魔力のないヤツは、魔力を補う補助装置の付いた魔導具を渡す」

「ふ~ん」

 莉奈は話を聞きながら、首から下げているペンダントを楽しそうに触っていた。

 魔法を使える人も、あまりいないこの世界。魔法を使えない者にも使える様に、色々工夫されているらしい。

「……はぁ」

 その様子にエギエディルス皇子は、再びため息が洩れた。兄フェリクス王から下賜されたモノだと、散々文句を垂れていたのに結局喜んでいるからだ。

「さっさと行くぞ? 俺も暇じゃない」

「付いて来てなんて言ってませ~ん」

 ツンデレのツンのみのエギエディルス皇子に笑いつつ、莉奈は教わった通りにペンダントを発動させてみるのであった。



 魔導具のペンダントに微力の魔力を注ぐと、ペンダントはポォとうっすら光る。それが、発動した合図の様だった。

 それと同時に魔法陣も柔らかく光り、身体が光りに包まれた。眩しいなと目を細めていると、目の前の空間はグニャリと歪み、例の目眩に似た妙な感覚がした。



 ―――数秒後。



 先程とは違う【転送の間】に移動していた。

 何故違う部屋かどうか分かるか……それは目の前にある部屋の扉、その少し上にある印を見たからだ。宮それぞれには印、いわゆる紋章と色にちなんだ鉱石が、埋め込まれてあるプレートがはまっている。

 金天宮は見た事はないけど、王家の紋章である【門の紋章】が画かれていて、そこに金が埋め込まれているとか。

 自分のいる宮【碧月宮】は確か月だった。三日月の紋章とエメラルド。

 この【黒狼宮】は狼が画かれていて、黒曜石がはまっている。



 1つ1つがなんかカッコいい。どこの王宮もこうなのかな?



 プレートも外して売れば高値になりそうだと、邪な考えが浮かんだのは仕方がないと思う。

 【鉱石】は【宝石】と同じだもん。






 

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