26話 大手通信会社社員、拉致される
本日は3話アップ予定です。
**アム視点**
「あああああああ! デンーー!!!」
どうしよう!! デンが連れ去られちゃった!! 蜘蛛の子分がいたんだ!
さっき、ウィドーが叫んでた時に呼び寄せたのかもー!
「ゴメン、フルフルー! デン連れ去られちゃった!」
早く追わないと!!
フルフルなら……大丈夫でしょ!
**第三者視点**
「ゴメン、フルフルー! デン連れ去られちゃった!」
アムは、戦線を離脱し走り去る。
(む!? アムがどこかに行ってしまった。そうかデンが連れ去られたのか。
しょうがないの、一旦距離をとるか。後ろに飛び跳ねることにしよう)
フルフルは、足に風のエンチャントを施し突進していたが、急停止し一旦離れることにした。
1発『轟・雷哮弾』を放った後、思いっきり踏み込み離脱を試みる。が――
(む!? 足に絡まる!?)
思い切り踏み抜いた地面にフルフルは足を取られた。
「ッチ、擬態か……!」
アンチマジックウィドーの周囲には数か所トラップが仕掛けられていた。
自身の糸を地面と同化させて、踏んだ瞬間足を取られるトラップだ。
フルフルは咄嗟に足に『雷哮弾』を放つ。
だが、アンチマジックウィドーの糸に対しては魔法は効果が無い。
(糸を擬態させれるとはな。油断した。
ククク、トラップまで仕掛けているとは接近対策は万全というわけか)
フルフルは視線をアンチマジックウィドーに向ける。
「ギッッギッギギシャ!」
アンチマジックウィドーは待っていましたとばかりに糸を噴射する。
脱出に手間取ったフルフルは躱せず、モロに糸を受ける形になった。
(流石にチャンスを逃すほど愚かではないか)
「っく!?」
フルフルは顔こそ護ったものの、体に糸が絡み付く。振りほどこうにも噴射したての糸でも中々の強度だ。
(ふむ、身動きがとれぬ)
「クシャア!! クシャアアア!」
アンチマジックウィドーは笑っているようだ。
(念入りに糸を絡ませてくるのう。なかなかマズいの)
アンチマジックウィドーの糸はフルフルを覆いつくし、繭のようになっている。
捕獲完了と言ったところだろうか。後は弱った獲物に毒を盛り、衰弱死を待ち餌にする。
アンチマジックウィドーの必勝パターンだ。――いつもならば。
(ふん……こんな場所で使うとはのう。後が面倒だが……今回はアムもおるし良いか)
「フン!!」
フルフルは保有する大半の魔力を使い全身を雷化する。
普段、雷化は長距離移動用でしか使わないが、短時間なら戦闘でも使える。
雷化したフルフルは糸から脱出する。雷で糸は切れないが、糸で雷は縛れない。
雷の化身となったフルフルは、少し離れた木の枝に仁王立ちした。
アンチマジックウィドーはフルフルを見失っている。そもそも繭から脱出していることもわかっていない。
(ククク、奴はまだ異変に気づいたようじゃのう。
仮に隙間なく糸が絡み付いておったら危なかった。わしの力では糸を引き裂けんからのう)
フルフルは仁王立ちの姿勢から両手で足元の枝を掴む。幼女は獣に変わろうとしていた。
(雷化・雷獣)
獣になったフルフルは雷弾を放った。優しく。
(ほれ、こっちじゃ)
雷弾はアンチマジックウィドーに直撃した。やっとフルフルを見つけることが出来たようだ。
「グギャアァァアア!」
アンチマジックウィドーは威嚇する。
(ククク、困惑しとるようじゃの。雷を縛れるわけが無かろうに。
じゃが、こちらの魔力が尽きるのも時間の問題。――20秒が限界か)
フルフルは少しだけ前傾姿勢に。
(――まあ、10秒耐えれるかのう)
刹那、糸の隙間を縫いアンチマジックウィドーの懐に飛び込んだ。
(牙雷)
胸をまず一突き。アンチマジックウィドーの外殻が凹む。
(打たれてから気付いたようじゃの。……ぬるい)
アンチマジックウィドーは挽回せんと、咄嗟に4対8足の足で切りかかってくる。
8本のほぼ同時攻撃。
(牙雷・牙雷・牙雷・牙雷・牙雷・牙雷・牙雷・牙雷)
フルフルは順番に撃ち落とし、8本あった足は4本になった。残った足も使い物にならないぐらいダメージを受けている。
(まずは手足を潰させてもらった。さあ。どうする?
ふむ、口を開けたか。毒か? 糸か? どちらにしてもぬるいな)
超至近距離からの攻撃。だがフルフルは目視した後に避ける。
「ククク、毒じゃったか」
フルフルは見下すように喋りかけた。ちなみにフルフルは雷化中は喋ることが出来ない。
つまり雷化は解除されている。
アンチマジックウィドーの顔面は、驚きか、それとも毒を吐いた反動か、だらしなく口が開いておる。
「魔法に強いみたいじゃが……体内はどうかのう」
フルフルは口内に右手を突っ込み、舌らしきものを握る。
「アッギャッギャ……オェ」
アンチマジックウィドーは恐怖で顔を引きつっている。
それもそのはず、フルフルの右肘から肩にかけて膨大な雷を纏っているのだから。
「耐えたら主の勝ちじゃ」
(牙雷牙雷蛇)
アンチマジックウィドーの体内を雷撃が暴れまわる。
(アンチマジックウィドーが震えてるのは、死への抗いか? ただ痺れておるだけかの?)
(ククククク……)
**アム視点**
「いたーーー!!」
アンチマジックウィドーだ! 昔見たサイズ!
「待て――!」
デンは……気絶してる?? もー! どうしよう!
蜘蛛ちゃん結構足速いし~、グルグル巻きにしたデンを抱えてるから魔法も使えないよー!
とにかく追おう!
**
「うっそ……マヂ?」
川じゃん。渡れないじゃん! そっか大瀑布の近くって言ってたじゃーん!!
向かい側にアンチマジックウィドーが見えるのに!
てか止まってる。渡れないのわかってるんだ! なにあいつー!
「もーー! え!?」
あいつ……! デンにチューしようとしてる!!
アタシだってまだホッペにしかしたことないのに!
あの蜘蛛野郎……。下等モンスターの分際で!!
**デン視点**
気を失ってたみたいだ。
なんかに激しくぶつかったんだな。いでで。
ん? 誰だろう??
「ウグゥゥゥーー! ――ンンーーー!」
く、口を塞がれてる!!
それに化け物が目の前に!!
アンチマジックウィドーか? 随分小さい、ダンクさんより少し小さいぐらいだ。
僕は……寝かされているのか??
アンチマジックウィドーの顔……無表情だと綺麗なお面見たいだ。
次の瞬間、口を大きく開けた。
「ン! ン!! ンー!!」
む、無理無理無理無理無理! 口の中が生き物のようにうねってる!
緑の液体出てるー! い、いやだーー! 死にたくないーー!!
ゆっくり近づいてくる。ダメだ……。終わった……。
僕の首筋を狙っているアンチマジックウィドー。吐息が首筋にかかり失神しそうになったその時。
「――オイコラァ」
声が低すぎて誰かと思ったが、アムだ。
アンチマジックウィドーも不意を突かれ驚いている。
咄嗟に反撃を仕掛けようとしたのだろう。だが――
「爆・ラード」
それは優しい平手打ちだった。仮に擬音をつけるなら『ペチ』かな。
そんな慈しみを感じる優しい平手打ち。
次の瞬間、アンチマジックウィドーの上半身が弾け飛んだ。
首から上ではなく、上半身だ。
そして衝撃波が僕を襲う。台風なんじゃないかと思うぐらいの暴風。
更に、体の奥を揺らすような振動。
アムさん……怖いっす。
そして暫くの沈黙。そして振り向くアム。
「デンー!! 大丈夫!?」
よかったいつも通りに戻ったみたいだ。
「心配したんだよー! 糸取ってあげるね~」
巻き付いた糸を解いてくれる。あれ?? アム髪がおとなしい色になってる気がするな。
しかしまあ、なんとか助かってよかった。そういえば、フルフルさんはどうなっただろうか?
「ん~~、解放された~」
「良かったね、デン。えへへ」
「う、うん」
いや~さっきのアムは怖かったな。いつもをギャルアムとするなら、さっきのはヤンキーアムだな。
怒らせないようにしないとね。
「そういや、フルフルさんは?」
「わかんなーい、デン追っかけちゃったし」
「そっかありがとうね」
「どーいたしまして」
「それじゃ……」
「もどろっか」
なんとか拉致から解放されました。良かった良かった。




