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細川 鈍太郎はヒキニートである。
その生活は、あの日からちょっとだけハードモードである。
ニュースや、ラジオから流れる怒号や叫びは、他所の世界のように思えた。
だが、しかし。
彼は、今、その世界へと足を踏み入れようとしていた。
否、久々に家から出ようとしていた。
そう決心したのは、数分前にさかのぼる。
「でゅふふふ、ふふ。今日もレイカたんは可愛いなぁ…。いつも、あの男が側にいるのが解せぬが…。」
睨みつけるは、カーテンの隙間から見える男の姿。
だが、その男は…観察し始めてから、4日ほど全く動いていない。
トイレや食事を行う様子も無く、ただただ、ソファーに身をあずけているのだ。
双眼鏡で見てみれば、首元とズボンの辺りに乾ききった血のあとがあるのが見受けられる。
零華が平然としているのは、多分だが、兄の死を受けておかしくなったからだろうと憶測する。
自殺だろうか?
拙者も、テレビやニュース、そして…
一階の一部屋に閉じ込めている、動く死体のおかげか、ちょっと、いや、かなり、バイオハザード感がヒシヒシ伝わってきているから。
もしかしたら自分は特別な存在で、これから様々なヒロインを助けて、モテモテハーレム、救世主になれちゃったりなんかしちゃったりして。
「でゅふ、でゅふふ…。もちろん、正妻はレイカたんですぞおぉぉ…お?お、お、おう?」
今まで観察していて変化が無かった物が、変わるとき…
彼がとった行動はとってもシンプルでありながら、とても勇者だった。
確かに、他の世界、他の可能性があったのならば…
主人公とやらに成れていたのかもしれませんなぁ。
「い、いま…ふうふう、こそ、ふうふう…拙者、姫の下へっ!」
彼が持つのは、ハンマーに包丁だった。
ただ、二階から駆け下り、台所へ向かい、玄関を出てからガレージへ行き、もうくたくたである。
日ごろの不摂生の賜物だね♪
武器を装備した彼は、道路を挟んで向かいにある家へと、足を踏み入れた。
玄関はスルーし、最近いつも見ていたリビングのガラスを叩き割り、鍵を開け、自分なりに颯爽と室内へと入った。
そして、視界に納まる、徘徊しだした動く死体へと踊りかかったのだった!
その体重を持ってして、行われた刺突はみごと、腹へと突き立つ。
勢いのまま、お互いに倒れるが、ドーパミンドパドパなハイな拙者はすぐさま起き上がると、姫の安全を確認することとした。
もちろん、指診である。
指診である。
大事なことだから、二度想像した。
「でゅふふ、もう安心ですぞ!レイカたん!拙者が主人公で、このバイオハザードを生きぬくベストパートナーなのですからなっ!」
とても醜悪でありながらも、努めて、凛々しい顔をしたつもりである。
気がどうてんしているであろう彼女に、人のぬくもりを教えるために、一歩、また一歩と近づく鈍太郎であった。




