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1-2

初心者マークの貼られた軽自動車を運転しながら、助手席に座る義妹を見る。

いつものことながら、何の病なのだろうか?

十日にいっぺんくらいに働いている会社から家に帰ってくる父。

その父が、用意する義妹用の薬。

いや、製薬会社かなんか知らんが、ちょっと怖いわと思う。

怖い物見たさに聴いてみたら、『時がくればわかる。』と短く、とても真剣な顔をして言われたのは覚えている。



「リキ兄さん。いつもごめんね?」


「零華が謝ることじゃない。」


「うーん。そうかもしれないけど、こればっかりは謝っておかないと。」


「なぜそんな言い方するんだよ?」


「…時が近づいて来たの…。」


「っ!?」



真剣な義妹の横顔にドキリとしてしまう。

血のつながりがないから、最近は気を緩めると変なことを考えてしょうがない。

特に、夢でそこそこヤバめなのを見たときは、朝のテントが…

っと、そんなこと考えてる場合じゃねーよっ!

今の発言のほうが何かと大事だろう、おい。

時が近づいてきた。


ソレが何の時かはわからないし。

父が言っていた言葉と同じ意味なのかさえ分からない。

ただ、義妹の真剣な表情に。

欲情以外に、何か胸騒ぎを覚えたのだった。















家に帰りつく。

フラフラとしながらも、自室へと向かう零華。

俺はというと、冷蔵庫から麦茶の入った容器を取り出し、自分用のコップにその麦茶を注いで、ソファーに座った。

なんと無しに、テレビをつける。


ニュースかぁ。

まあ、まだ昼のバラエティにも時間があるしな、学校に今から戻っても、もしも妹に何かあったらと思うと、行く気は起こらなかった。

先ほどの発言も気になるしな。


少しからだがだるいな。



「リキ…に…い…さん。」



ん?零華の声だよな。

少し震え気味だが、何かあったのだろうか?

まさか部屋に虫でも?



「どうした?何かあったのか?」


「ある…ううん。起こる、起こすの方が正解かな?」


「なに?…が?」



声に思わず振り返る。

先ほどよりも熱っぽい表情の零華がいつの間にか、ソファーに腰掛けている俺の背後まで近づいていた。

リビングの入り口から声が聞こえたはずなのに、なんと言う身軽さ!


だが、ソレよりも気になったのは…

零華の犬歯はあんなに鋭かっただろうか?

そして、なにより…

零華の両の瞳はあんなにも妖しい赤色をしていただろうか?


わからない、わからないが、自らの背を流れる冷や汗が、何かの警報のように思えた。

零華の瞳に意識が吸い寄せられる。

はは、なんだか蛇に睨まれたカエルみたいな気分だ。


他人事のようにさえ思えるこの時間は唐突に終わりをむかえる。

ゆっくりと口を大きく開く零華。

そして…



「頂きますね…。」



俺の左耳に口を寄せると、そうつぶやく零華。


ぐじゅり


生々しい音が自らの首辺りからした。


そして、意識が暗転したのだった。



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