最終話 処理
刑事さんたちと村に突入してから2週間が経過した。
いまのところ俺は無事だ。
1週間経過した時に刑事さんたちと生存報告をし合ったが、そのときに村のほうも何も起きていないと報告を受けた。
相変わらず「鈴木東高校 同時多発不審死事件」は進展はしてなかったが、世間の注目は別なニュースに変わりつつあった。 芸能人のゴシップや、公的機関の不祥事、どんなに悲惨な事件でもいつかは風化してしまうということか。
ネットではいまだ陰謀論めいた話から様々な憶測も飛び交っているが、フリー音源が呪いの曲で、それが原因だという言葉は見つからなかった。
甥の良一は時間の経過とともに心の整理がついたらしく、高校が再開してから元気に登校している。
俺もいい加減、実家警備員から就職先を見つけないとな。
スマホが鳴る。鶴谷刑事からだ。
『俺たちの生存祝いで、一緒に飲みに行きませんか?』
SNSのメッセージを見て、俺は重い腰を上げた。
小さな店で俺と刑事たち3人は乾杯した。
路地裏の奥にある小さな店で、客は俺たちしかいない。
店員は店の奥で次の料理を準備している。
「結局、警察はあの事件をどう処理するつもりなんですか?」
俺は刑事さんたちに質問する。
「感染症の疑いがあるため、被害者宅を検査する・・・という名目で、演劇のDVDはすべて回収し処分しました。 ネットを監視していますが、あの呪いの曲は再びどこかにアップロードしている様子もありません」
桜上刑事の話はちょっと意外だった。
「へぇ・・・ オカルトな事件でも対処するんですね警察って」
鶴谷刑事が眉をひそめた。
「表向きには存在しないですが、そういう部署があるんです。そこが引き継いでいま事件の処理をしているんです。俺も先日知りました」
桜上刑事が人差し指を立てた。
「しかも、このたびの一件で私たちはその部署に転属が決まりました」
なんだそりゃ。それは栄転なのか左遷なのか?
「はぁ・・・ 俺も次の仕事決めないとなぁ・・・」
俺が酒を一口飲むと、桜上刑事が俺の目を見て言った。
「もし良ければ・・・ 僕たちと働きませんか?」
俺はコップを下ろした。
「えっと・・・ 警察官になれってことですか?」
「いえいえ、表向きは役所の公務員ということになりますが、あの邪神の封印の儀式・・・ 邪神、阿無堂巣鬼亜数を封印する曲を定期的にあの神社で流すなど、色々やってもらうオカルトや神秘主義的な雑用係ですね」
「そんなの仕事としてあるんですか?」
「古来より日本には八百万の神と言われるように、全国各地に人智を超越した存在、超自然的な存在、すなわち【神】がいます。 そして、【神】は必ずしも慈悲深く善良で人々を救済する、人類に都合のいい存在とは限らないんです。 あの呪いの曲を作ったアレのように・・・ それがいくつも」
「ちょっと待ってください。あんなのがまだあるって事ですか?」
「それを国があらためて管理下に置いて、徹底的に封印するのが、僕たちの新しい仕事なんです」
鶴谷刑事が親指を立てるジェスチャーをする。何が「グッド」なのだろう
「もし良かったら、俺たちに連絡をください。 履歴書をお忘れなく」
俺は追加で注文したハイボールの炭酸の泡を見ながら、今後の進路を考えた。
おれは今でも夢に見るくらい、あの恐ろしい邪神の顔が忘れられない。
呪いの歌が頭に流れることもある。どうやらトラウマになっている。
そしてそれと似たようなものが、いつ俺や甥の良一の平和な日常を脅かすか分からない。
でも、俺にそれと向き合う仕事がつとまるのだろうか?
俺は馬刺しを口に放り込んだ。
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