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序章 白の正装とアルゴリズムの苗床

 カタカタと鳴り響く無機質なプラスチックの音が、鼓膜の裏にべったりとへばりついている。私は今日も、安価なキーボードと液晶モニターを前に、それ以上に安価な「文字」を量産していた。毎日欠かさず紡がれる千文字の記号たち。それは終わりのない、無限とも思える虚構の物語を構成していく。なぜ、毎日なのか。なぜ、千文字なのか。理由は単純だ。それが、このアルゴリズムに支配された巨大な電子のプラットフォームにおける「最適解」だからだ。毎日更新。千文字のノルマ。それだけが、流行という名の濁流に押し流されず、読者の網膜に一瞬だけ留まるための唯一の生存戦略だった。いつしか書き手たちは、この電子の泥濘ぬめりを自虐を込めて内なる檻と呼ぶようになった。底が見えず、一度足を踏み入れれば二度と抜け出せない、承認欲求の底なしの暗渠あんきょ。プラットフォームごとに、蟻たちの狂騒の形は少しずつ異なる。ある場所では、誰もが似たような異世界の名前を叫びながら、テンプレという名の同じ餌を求めて群がっている。またある場所では、書籍化という甘い汁を吸うために、独自のポイント制度に縛られた蟻たちが必死に数字を回し合っている。別の場所では、新興の綺麗に整えられた巣の中で、まだ見ぬ女王の寵愛を求めて小奇麗な文字を飾り立て、さらに別の場所では、生々しい感情の泥濘にまみれながら、承認欲求という名の甘い蜜を貪り合っている。幾千、幾万もの人々が、存在しない虚無の本棚の頂点「ランキング」を目指して競い合っている。だが、そこには真の幸福も、健全な苛立ちさえも存在しない。私が画面の向こうにいる個々の蟻の顔を認識できないように、モニターの向こう側の蟻たちもまた、作品の真の価値など認識してはいないのだ。彼らが消費しているのは文学ではなく、ただの時間潰しの記号、底なしの暗闇の泥に過ぎない。数百、数千から始まった言語の塊は、無限に向かって膨れ上がる。五万文字、十万文字、あるいは二十万文字へ。それはまるで、巨大な木造建築を内側から食い荒らす白蟻の増殖に似ていた。私が最初に「読者」や「作者」と認識していた個々の蟻たちは、黒い働き蟻などではなかったのかもしれない。彼らは、暗闇の中で柱を腐らせていく、白の正装をしたゴキブリ科の系譜。すなわち「白蟻」だったのだ。それでも、私はタイピングをやめるわけにはいかない。一度築き上げ、多くの白蟻を惹きつけてしまった虚無の文字の巨塔を、今さら崩し捨てることなど私にはできなかった。ただ、書くだけだ。私は文学という名の、すでに中身の腐りかけた大黒柱を齧り続ける白蟻の一匹。文字を起こすため、私は冷え切った席に再び腰を下ろした。結局のところ、私もまた、この電子の廃墟で白蟻であり続けるしかないのだ。



 カタカタと、爪がキーボードを叩く乾いた音が、再び静寂を侵食し始める。私は、文字を起こすため、再び席に腰を下ろした。結局私も白蟻であり続けるしかなかった。


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