第49話私達の知らない彼
食事会は謁見とは打って変わり、とても賑やかな時間だった。出される食事全てが僕達にとって新鮮で、滅多に食べれないものだと思いとにかく僕達は食べ続けた。
「ユウマ、独り占めしすぎ」
「あー、それ私が取っておいた物なのに!」
「ちょっと、もう少し自重してよー」
正確には僕が豪華料理に食らいついていただけなんだけど。
「ごちそうさまでした。さてお腹も満たされました事ですし、旅の疲れを癒すためにも皆様お風呂はいかがでしょうか?」
食事会もひと段落した後、シェルティアはそう提案する。
「王室のお風呂、期待値が高いんだけど」
「覗いたら、死」
「剣を持っておいておこうかな」
「何で僕が覗く前提なの?!」
何はともあれ僕達は、王室のお風呂を堪能する事に(勿論覗く気などない)。僕は広いお風呂を一人で堪能しながら、ここまでにあった事を色々と思い出していた。
光の英雄の事
シャルティアの事
そして光希の事
たった数時間の間に、色々なことがあった。でも色々な事があったからこそ、僕は沢山のことを知れた。そして改めて、僕が今歩むべき道を見つける事も出来た。
(確かに僕には素質も力も足りないかもしれない。けどそれを明け渡してまで僕は、彼女達と別れる事なんて出来ない)
ここにいる仲間達は僕にとって、揺るぎない大切なもの。それを今手放す事なんてできない。
「世界を救う、か……」
湯船に浸かりながら独り言を漏らす。この力が世界を救うためのものとして、僕に託されたと言うのなら、僕にはその役目を全うする義務がある。
けどその素質が僕にはないから、シャルティアは託して欲しいと頼んできた。それは多分他の人から見れば最もな事ではあったんだと思う。
(だから僕が言っている事は客観的に見れば我儘になる。ならどうすれば……)
この先の事を考えるとため息が出る。でも大丈夫……大丈夫だよね?
(セレナ達はどんな事を考えているのかな……)
僕は少しだけセレナ達の事を考えながら、お風呂を堪能するのであった。
■□■□■□
「じゃあミツキはこの世界に五年も住んでいるの?」
「あまり実感が湧かないけど、そんな感じかな」
私、アリス、ハルカに加えてユウマの幼馴染のミツキの四人でお風呂に入らせてもらった私達は、湯船に浸かりながらミツキの話を聞かせてもらっていた。
「ミツキはこの世界で何をしていたの?」
「商人よ。しかも王室御用達の」
「え? じゃあここで働かせてもらっているの?」
「滅多にここにはいないけどね。世界を渡り歩いているから」
「世界を渡り歩く商人、格好いい」
アリスが感激している。こういう事を言うような性格じゃないだけ、私は少し驚いている。
(アリスって時折分からなくなるなぁ)
「セレナ達はは悠馬と出会ってからまだ長くないの?」
「どの位経っていたっけ?」
「忘れた」
「二ヶ月くらい?」
「覚えてないのね。でも悠馬が一度死んだ日は、まだそんなに経っていないって事、か……」
少し遠い目をするミツキ。その様子に少し気になりながらも、話を進める。
「ところでさっきも思ったけど、ユウマとミツキってどんな関係なの?」
「どんな関係って?」
「ほら、例えば恋人、とか」
「な、な、何をいきなり言いだすのよ! 私達はそんな関係だったわけじゃ……」
「分かりやすい」
「アリスにそれ言われたらお終いかな」
明らかな変わりようにアリスとハルカがそんな言葉を漏らす。ユウマがこの場所にいない以上、そんなに動揺する必要なんてないんだけどなぁ……。
「そ、そういうセレナ達だって意識とかしてたりしてないの?」
「うーん、分からないかな。アリスははっきりしているみたいだけど」
「なっ、どうしてそこで私が」
「だって隠しきれていないじゃん」
「それは私も同意するよ。アリスについては本当分かりやすすぎなんだから」
「は、ハルカまでどうして」
ミツキをそっちのけで私とハルカはアリスをからかう。その様子を見ていたミツキは、何故か涙を流していた。
「ど、どうしたのミツキ? 私達、何か酷い事言った?」
「ううん、違うの。嬉しくなっちゃって」
「嬉しい?」
「だって、悠馬がこんなにいい仲間に恵まれているから……」
よほど嬉しかったのか、嗚咽しだすミツキ。その様子を不思議がることしかできない私達。恐らくこれは、私達には分からない、ユウマとミツキの間にだけしか分からない話なんだと思う。
(あれ、これってもしかして嫉妬してるの? 私……)
アリスに人の事を言えないくらい、私ももしかしたら隠せなくなってきてのかもしれない。
「ユウマは昔何かあったの?」
その様子を見てアリスが何気なく尋ねる。それに対して、ようやく落ち着いたミツキは……。
「ユウマはね、昔から影が薄い存在って言われていて、酷い扱いを受けていたの。私が死んじゃった後もずっと」
「影が薄いって、どのくらい?」
「端的に言うなら、人として認識されていないくらい、かな」
「それって酷くない?」
「酷いよ。酷い話だからこそ、私達は離れなかったの」
「そう、なんだ」
転生してきた事以外の話を聞いた事がない私達にとって、ユウマの話を聞くのは少しだけ新鮮だった。
(私達ユウマの事、全然知らなかったんだ……)
「ミツキ、もっと教えて、ユウマの事」




