第44話王都へ
王都へ出発の朝。何故かミナさんが見送りに来てくれていた。
「何故かとは失礼ね。貴方達が王室の招待を受けるなんて、一ギルドとして誇り高き事なんだから、見送りがいてもおかしくないでしょ?」
「え? そうなんですか?」
そこまで大きな事だったの? 王室に招待される事って。
「まさかユウマ、知らなかった?」
「え、あ、いや、確かにすごい事なのは何となくだけど分かっていたよ。でもどれくらいすごい事かまでは……」
「一言で言うなら一生に一度経験できるか、のレベルね。でも呼ばれる事自体に意味があるから、誇りを持つべきね」
ミナさんはそう言う。この辺の感覚は、元いた世界とさほど変わらないと考えていいと言う事なのかもしれない。
(やばい、そう考えると余計に緊張してきた)
まだ出発前なのにこの緊張感。いざ王女に会ったら僕はちゃんと会話できるのだろうか。
(王女には聞きたいことが山ほどある。だから今の内に落ち着けておかないと)
「ユウマ、そろそろ出発の時間」
「あ、うん。分かった」
アリスに促され僕は王都行きの馬車へと乗り込もうとする。
「あ、ちょぅと待ってユウマ君」
しかしその直前にミナさんに引き止められる。
「何でしょうか」
「その、気をつけてね。王都で色々あると思うから」
「……え?」
僕は一瞬彼女が何を言っているのか分からなかったけど、その言葉を理解した時ふと足が止まった。
「ミナさん、もしかして」
「じゃあ旅の無事を祈っているわ。気をつけて行ってきてね、四人とも」
しかしミナさんは僕の言葉には何も答えずにぼくの背中を押した。そして僕が乗り込むと同時に馬車は動き出す。
「どうしたのユウマ、最後足を止めてたけど」
「え、あ、いや、何でもない。ちょっとだけ気になることがあったけど、帰ってきたら聞くことにする」
こうして僕達の王都へ向けての旅は始まった。外に顔を向けると馬車が見えなくなるまでミナさんが僕達を見送ってくれている。
(ミナさん、どうして最後の最後にあんな事を……)
まるで今回僕が王都に行くことの本当の意味を知っているようなそんな言い方だった。だから何かを知っていたなら教えてほしかった。
「……」
僕の王都への旅立ちは少しだけ不安が残る出発になったのであった。
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王都への道のりはかなり長く、到着は夜になるとの事。その間僕達は何度かの休憩を挟み、長い馬車の旅を楽しむ。
「長い……」
何て気分に離れないほど王都までの距離は非常に長かった。
「それ何回目よ。私だって言いたいけど我慢しているのに」
「フュリーナの時はそんなに長く感じなかったのに……」
「それはもはや距離の問題」
ごもっともです、はい。
「こういう時暇つぶしができるものがあればよかったのに」
「そういうの私持ってない」
「私も」
「それは何となくだけど分かっていたよ」
そもそも僕が言う暇つぶしというのは例えばトランプとかそういう類のもので、勿論この世界には存在しないものだ。とはいえ、長旅は慣れていないので(ましてや馬車なので)、どうしても我慢の時間が多い。
「じゃあ王都までの間話でもする?」
そう言いだしたのは、朝からずっと眠たそうにしていて出発の際に姿がないと思ったら、既に馬車に乗って熟睡していたハルカ。
「話ってさっきまで十分したと思うんだけど」
「違うよ、ユウマの話。私達異世界って知らないから、意外と興味があるの」
「あ、それ私も聞きたい。ユウマがどんな世界に住んでいたのか」
「そんな大した話はできないんだけどなぁ」
「私も興味ある」
「私もー」
「そこまで言うなら話すけど」
暇つぶしとしては微妙なところだけど、四人が興味あるなら仕方がない。
「何から聞きたい」
「じゃあまず魔法があるか」
「ないよ」
「即答?!」
この間わずか数秒。まあ何を聞いてくると考えたら大方予想はできていた。
「じゃ、じゃあどうやって生活してきたの?」
「いや、別に魔法がなくても生活できるけど」
「「「嘘でしょ?!」」」
「いくら何でも驚きすぎだよ……」
そんなに魔法がないことがショックなのかな。
「そ、想像できない……魔法が存在しない世界なんて」
「僕からしてみれば魔法が存在する世界のほうが予想できなかったよ」
この世界に来るまでは。
「じゃあギルドは?」
「だからないってば。そもそもそういう概念は僕達の世界にはないから」
「信じられない……」
「どんな想像をしていたんだよ……全く」
まあ異世界なんて簡単に想像はできないのは分かるけど。そもそも存在していること自体非現実的なのだから。
(でもその非現実の中に僕はいるんだよなぁ)
そしてそれは恐らく彼女も。
「そもそも僕の住んでいる世界にはモンスターとか剣士とかそんな存在はいないし、戦うことなんてほとんどないよ」
「じゃあユウマは今までどうやって生きてきたの?」
「どうやってって、それは……」
普通に学校に通って、普通に食事を食べて。ごく普通の生活を送ってきた。それ以外に表す言葉が見つからない。一つ取り上げるとしたらそれは……。
「影のような生活かな」




