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影が薄いけど魔法使いやっています  作者: りょう
第1章影が薄くても冒険始めます
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第15話彼女達の決意

 その後シレナと話をしたものの、具体的な案は彼女からは出ずに、馬車がやって来る時間になってしまった。


「じゃあまた改めてここに来るから」


 昨日の話を聞いたりする限り、ハルカはやはりまだアルカンディアに戻る意思がないと感じた僕は、彼女を無理矢理にでもアルカンディアへ連れて行くという気は起きなかった。

 まだ彼女には考える時間が必要だし、僕達も協力するとはいえどまだ具体的にどうするかは決めていない。なので、ここは一度僕とアリスだけで帰って、改めてここに来ようという結論になった。


「待って、ユウマ、アリス」


「どうしたの、ハルカ」


「私も行く……。この場所を離れるのは嫌だけど、本当にユウマが私の運命を変えてくれるなら、私もついて行く。ううん、私も一緒に行かせて欲しい」


 けど、それは僕の思い違いだったようで、ハルカは僕が考えている以上に強い決意を固めていた。それが彼女にとってどれだけ大きな決断なのかは、僕達には計り知れない。


「ハルカはそれでいいの?」


「うん。もう決めたから」


「そっか。アリスもいいよね?」


「彼女の意思尊重」


「まあ、そうだけどさ」


 反対する事はないと分かっていたものの、ちょっと素っ気ないような。


(そういえばさっきのも……)


 人形と話していた所を見られたよりも、アリスが朝の事を聞くだけ聞いて、それ以外何も言ってこなかったのが少し気になっていた。フードの女という言葉に少しだけ反応していたけど、あれは何か意味しているのだろうか。


(多分気のせいだと思うけど)


 僕が口挟むような事でもないけど。


「私村を守っていたから、戦う事に関しても戦力になると思うから、これからよろしくねユウマ」


「うん、よろしくハルカ」


 こうして僕とアリスは、ハルカという新しい仲間を加えてアルカンディアに二日ぶりに帰ったのであった。


 ■□■□■□

「もう! いくら私が起きなかったからって、アリスと二人で仕事に行くなんて酷いわよ」


「だからごめんってば」


 アルカンディアへ帰宅した翌日。。僕は一人置いてけぼりにされたセレナに説教をされていた。


「起きたら誰もいないからどこに行ったのかなってミナに聞いたら、仕事に行ったとか酷い話すぎるわよ。折角パーティを組んだのに」


「急な話だったから仕方がなかったんだってば。今度その埋め合わせはするよ」


「本当に? 絶対だからね」


「分かっているって。それより新しい仲間が増えたんだし、歓迎会を開こうと思うんだけど」


「新しい仲間? さっき言っていたハルカって子?」


「うん」


 とりあえずセレナの説教がひと段落した所で、ハルカの話を持ち出す。アルカンディアに帰ってきて、ミナさんにハルカを渡してしまったので、まだセレナは彼女に会っていない。それどころか、アリスは帰ってくるなりどこかへ行ってしまい、折角のパーティ勧誘チャンスも逃してしまった。


「それにもう一人、仲間が増える予定なんだ」


「予定って事は、もしかして」


「アリスも僕達のメンバーに入ってもらおうと思うんだ。ただ、彼女がその気じゃないから、ここからは僕次第になるんだけど」


「うーん、アリスは一人を好むし、入ってもらうのは難しいと思うんだけど」


「でも僕は放っておく事なんてできないんだ」


 死の人形使いなんて言われてしまっている彼女を、このまま無視なんてできない。それに今回無事帰ってこれたら、考えてくれると約束もした。だからあと必要なのは言葉だけだった。


「ユウマがそこまで言うなら任せるけど。私はちょっと怖いかな」


「もしかしてアリスが死の人形使いと呼ばれているから?」


「うん。そんな話真っ赤な嘘だとは分かっているけど、それでもちょっとだけ怖い」


「でも僕はこうして何事もなく帰ってこれたんだ。だから大丈夫だって」


「私もそう信じるよ」


 兎にも角にも、彼女と話さなければ始まらないので、僕は一度アリスを探しに出かけるのであった。


「私が怖い理由は実はそれだけじゃないの。アリスは……」


 ■□■□■□

 アリスの姿はギルドにあった。ミナさんと何か話しているらしく、僕はそれを遠くから見ていた。


「あ、噂をすれば……おーい、ユウマ君」


 そんな僕を見つけたミナさんは、僕を手招きして呼んできた。アリスはこちらを振り向こうともしない。


「ハルカの事、連れてきてくれた事のお礼してなかったわね。色々知らない事ばかりを聞いて大変だったと思うけど、感謝しているわ。ありがとう」


「お礼を言われるような事はしてませんよ。僕は仕事をしたまでですから」


「それでも立派な事よ」


 こうやってお礼を言われると、恥ずかしくなってしまう。僕自身たいした事もしてないのうな気もするけど、素直に感謝の気持ちは受け取りたい。


「今その事をアリスと話していたんだけど、アリスからも言いたい事があるんだって」


「み、ミナ。余計な事言わないで」


 ずっとそっぽを向いていたアリスが僕の方にようやく体を向ける。同時に彼女の周りにいた人形達もこちらを向いてきた。


「怖!」


「我慢して。これから何度もある事だから。できないなら、入らない」


「いや、そうだけど……え?」


 あまりにさりげなく言ったので、僕は思わず聞き返してしまう。


「約束、したから。ユウマのパーティに入る」


「ほ、本当に?」


 先を取られてしまって、動揺をしてしまう。勿論ここは喜びたいところなんだけど、すぐには言葉が出てこない。


「これからよろしく、ユウマ」

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