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影が薄いけど魔法使いやっています  作者: りょう
外伝 人と狐の物語
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第97話謎だらけの彼女

 話は再び三年前に戻る


 温泉を堀当てた翌日、私達は仕事納めとしてそれぞれ自由にユドラシアを行動することになった。私は一人で色々と回ろうと思っていたけど、スズカ、リンシア共に一緒に行動することになって、結局いつもと変わらなかった。


「そういえばミルセンは?」


「何か一人でしたことがあるからって、ついさっきどこかへ行っちゃったよ」


「ふーん」


 少しだけミルセンの事が気がかりになるものの、あくまでそれぞれ自由に行動するということなので、特にそこは問い質さないことにした。


「ミルセンの事が気になるんですか?」


「色々とね」


「そういえば昨夜二人でどこかへ行っていましたけど、それとも関係が?」


「あると言えばある」


 何せ昨日はミルセンの話を少しだけ聞けたのだから。ただ私が気になっているのはそこではない。


「疑うつもりはないけど、ミルセンについて不可解なことが多い」


「不可解なことですか?」


「そういば昨日も何か言いかけたよね」


「うん。これは私の推測なんだけど、ミルセンは私達に大きな嘘をついていると思う」


「大きな嘘?」


「根拠は二つ。まずはこの前の襲撃の敵の数」


 いくら姫を救うためとはいえ、あの数は普通じゃなかったのは間違いなかった。いくら姫が誘拐(仮)されたとしても、あれだけの数を動かすのは何か別の理由があるのかとも考えてしまう。


「もう一つはそれに関係している事なんだけど、あの場所に逃げたのは私なのに、敵が既に待機していたのか。そして何故逃げた私を追って来たのか」


 これに関してはどう考えても、結論が出てこない。ミルセンの動きとともに、敵の動きも不自然すぎるのだ。


「私の考えすぎならそれでいい。けどどうにもこの件について、謎なことが多すぎる」


「確かに言われてみればそんな気がしますが」


「じゃあミルセンは敵だと言うのですか?」


「勿論そうは言ってない。けど明らかにしないといけないことが多い」


「それはそうかも……しれませんけど」


「何度も言うけど、私はミルセンを信じたいから疑っている。何もなければそれでいい」


「私もそれを信じるよ」


 私の言葉にスズカがそう答えてくれた。リンシアはやはり浮かない顔をしていたけれど、それが彼女の性格なのを私もスズカも知っているのでこれ以上は何も言わない。


(一度信じたら裏切られるまでリンシアは疑わないから仕方ないけど……)


 それならリンシアは今の、私に対してどんな感情を抱いているのだろうか。


「私の顔をじっと見てどうかしましたか?」


「あ、ううん。何でもない」


 今は深く考えない方がいいか……。


 ■□■□■□

 その後ミルセン抜きで休日を三人で過ごした私達は、夕方になる頃に宿へ戻った。


「戻って来てたんだミルセン」


「ごめんなさい、本当は一緒に行動したかったんだけど……」


「別に構わないけど、どこへ行ってたの?」


「会いたい人がいたというか、少し用事があって」


「そうなんだ」


 部屋に入ると既にミルセンがくつろいでいて、私は適当な会話をする。


「それでいつ妖狐の郷に出発する? 仕事も終わったし、私達はいつでも動けるけど」


「明日のお昼には出発したいんだけど、大丈夫かな」


「構いませんよ。それが約束ですから」


「それなら今夜中に準備しないと」


 妖狐の郷へ行くなら出発と同時にチェックアウトをしないといけないため、急いで準備をしなければならない。私達にとって初めて行く場所、そこで何が起きるかわからない以上準備は入念にしなければならない。


「武器とかも大丈夫かな」


「今回はあくまで温泉を掘るための準備だけでしたからね。私もちょっとした怪我をした時のための準備しかしていません」


「私は常に剣を持ち歩いているから大丈夫だけど、そもそも戦う前提なの?」


「私は勿論戦いは避けたいけど、向こうがどうなるか分からないから」


「でもミルセンはあくまで故郷に戻るだけなんだよね? どうしてそこまで警戒するの?」


「警戒はしてないよ。ただアリスの一件もあるから」


「それは確かにそうかもしれないけど」


 戦うつもりで行くなら、それは元の目的から遠ざかるのではと思ってしまう。そもそも私達は具体的な目的をミルセンの口から聞いてないし、話すべきことがあるなら予め教えておいてほしい気持ちもある。


「ねえミルセン、私達は今回何の目的があって妖狐の郷に行くの?」


 そんな私達の気持ちを汲み取ってからか、初めてスズカが踏み込んだ話を切り出した。


「私は決着をつけるためって言ったけど」


「何の決着? もし身の危険があるならちゃんと準備をしなければいけないんだけど」


「今も言ったけど、身の危険はないよ」


「それは絶対?」


「絶対、とは言い切れないかも」


「ならやっぱりちゃんと教えてほしい。ミルセンは私達に何をしてほしいの?」


 真剣な眼差しで尋ねるスズカ。私もリンシアもその間ずっと黙って見届けている。


「スズカ達には……してほしい事があるの。今話せるのはそれだけ」


「してほしい事?」


「全部……全部郷についてから話すから。だから今だけは私を信じてほしい」

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