26話:ジュミの危機
お久しぶりです、甘党丸です。
最近はぜんぜん更新できておらず、申し訳ありませんでした。
俺とクリーリャロさん、ミィさん、ダザさん、ルウ、アーティ、あとジュミさんは集落を造っているというヒッチさんのもとに戻っていた。
「どれだけ進んでいるか、楽しみですね。」
「ふっふっふ、きっとアサヒも驚くだろう。」
「おぉ、かなり期待大です。」
「アサヒさん、すごいです!私、二足歩行できてるんですよね?!」
「えぇ、できてますよ。なんなら尻尾も耳もありませんから、人間にしか見えませんよ。」
「フフフ。きっとお父様も驚くわね…。」シメシメ
「ジュミ姉、こっちまで走ってきてよ!」
「ルウ!ジュミ姉なんて、ジュミさんに失礼だろう。」
「いえいえ、大丈夫です。ジュミ姉、いい響きですね。今行きますよ!」
そう言って、ジュミさんは走り出した。
さっきまで四足歩行してたんだし二足歩行なんて慣れないだろうに、難なく走っているように見える。
そんなもんなんだろうか?
なんて、呑気に考えていたら、誰もいないはずの方向から声がした。
「いたぞ!弓を放て!!」
「了解!」
そっちを向くと…人間がいた。
弓を持った男と、剣を持った男が1人ずつ。
男の持っている剣は、日本刀のような形ではなく、西洋のサーベルみたいな形だ。
…でも、弓はこちらには向かなかった。
弓を構えている男の視線の先には…木がちょうど生えておらず、光が指している場所…ジュミさんが立っている場所だった。
男たちのいる場所は俺達が進んでいる場所よりも低い場所で、ルウの体は草むらに隠れて見えないはず。
…ジュミさんが危ない。
俺がそう考えたときには、ミィさんが前に飛び出していた。
「ジュミ、伏せて!」
勢いよくジュミさんの方へと飛んでいく。
ミィさんの姿が一瞬ぶれて、次の瞬間にはモモンガの姿になっていた。
だが、男の手からは無慈悲にも矢が放たれて………。
「ジュミさんっ!!!」
俺の口からは知らずのうちに悲鳴が放たれていた。
「チッ、あと少し早く気づいていれば…このっ、人間ごときが…私の目の前で………許さない、許さない!」
ミィさんの体は方向転換し、男たちの方にものすごいスピードで進み出す…。
「ジュミ!大丈夫か…!」クリーリャロさん、
…男たちはミィさんにまかせて、俺達はジュミさんを助けなければ…!
「ヒハッ、カヒュ、フヒュッ。」
「ジュミ姉!!!アサヒ兄ちゃん、ジュミ姉が…!」
「まずは、矢を抜くのだ!」
「待て…!無理に矢を抜いたら、傷が広がる。まずはどこに刺さっているかだ!」
「マスター、ジュミさんの肺に…!」
とアーティが叫ぶ。
「はっ、肺…!?」
そして、彼女の胸元を見ると、着ていた純白の布に赤黒いシミが広がっていく。
「フヒュ、ヒッ、ヒッ、ヒッ。」
「アーティ!!どうしたらいい!?」
「…傷口を塞いで、上半身を起こしてください!」
「了!クリーリャロさん、ダザさん、人間化してジュミさんの体を起こして。」
「あぁ、分かった。」
俺は…傷口を塞ぐ!
魔力を展開して…ジュミさんの傷口を塞ぐ……。
詠唱……何にしたらいいかわからないな。
となれば、十分な量の魔力を送って、なにも通さないくらいに固めれば…。
「ア…サヒ……s……。」
「…喋らなくて大丈夫…!とりあえず息して…。」
「ヒー、ヒー、ヒー。」
「アーティ、こんな感じでいいか?」
「はい、それが今できる限界かと思われます。もし集落予定地にいる方で誰かが回復魔法を持っていれば…。」
「そうだ、回復魔法!あの魔道具には回復魔法も付与されているんじゃなかったっけ?!」
「はい、そのとおりです。ジュミさんに持たせておいたほうがいいかもしれません。」
「よし、分かった。」
そして俺は魔道具を取り出して、ジュミさんに握らせる。
「これ、握って!」
「……」
ジュミさんは俺が渡した魔道具を強く握ってくれた。
「ヒー、ヒー、ヒー。」
少しずつだが傷口も治ってきている感じがする。
このままいけば…。
ぎゃあああああああ!!!
うわあああああああ!!!
草むらで良くは見えないが、下の方…男たちがいたような場所から叫び声がした。
ミィさんがやってくれたようだ。
一旦、応急措置も済んだかな。
あとは、チャル川の方に運んでいけば、もっと効率的に回復できるかも…。
その刹那、俺の背後からものすごい勢いで飛び上がった小さな陰は、空中で人間に変身して、俺の脇に立っていた。
ミィさんだ。
「毒は…抜いた?」
「毒…?」
「あいつらの矢筒に液体が入っていたわ。その液体からは毒らしい匂いがしたから、毒矢なんだと思う。
で、毒は抜いた?」
甘かった…。毒矢の可能性なんてすぐに考えるべきなのに、とりあえずの状態に安心しちゃってたんだ。
「……ッ。」
「?」
「まだ…だな。」
俺がすぐに答えられていないのを見て、ダザさんが代わりに答えてくれた。
「…そんな。今すぐ毒抜きを。」
「無理だ、もう全身に回っている…!」
クリーリャロさんがそう答えると、ミィさんがクリーリャロさんの頬を叩く。
「無理だ、じゃないでしょう!?じゃあ、何もせずに置いておくっていうの?」
「あの…」
アーティがなにか言おうとするが、ミィさんの怒声にかき消される。
「何もせずに死にゆく仲間を見届けるなんて…信じられないわ。」とミィさんが声を上げると、
「私は現実的にこの状況を見ているだけだ!時間が十分に経過している。今するべきは毒抜きじゃない。」とクリーリャロさんも返す。
「あっ、そう。で、放置すると?そんな薄情だったとは知らなかったわ。」
「放置ではない…!」
「いえ、放置ね。こうなったら…彼女の魂に触れ合って、こちらの世界に何としてでもとどめてくるわ。」
魂に触れ合う……?どういうことだ?
「それは…禁術だろう…?!」
「えぇ、そうね。『禁術』、なにかを代償として普通の魔法じゃできないようなことをする魔術。
クリーリャロさんは怖がりでそんな事できないわよね。」
「なっ、何だと?禁術は使っていい魔術じゃない!それはお主が一番知っているはずだろう。」
ミィさんが、一番知っている…?
「第一、なぜお主が初対面のジュミにそんな魔術を使う?」
「…もう私の目の前で、誰にも死んでほしくないから。」
「……そんな事が為せるものか!誰だって、寿命でも攻撃によるものでも必ず死んでいくわ!」
「そんなの分かってる…でも、これは私の信念なのよ。邪魔しないで。」
俺は口出しできなかった。
数年前のファル伯爵の侵攻の時も含めて死との関わりが深いからこそできる会話。
これを止める権利なんて俺にはない気がした。
ジュミさんの顔を見ると、徐々に目が細く閉じていく…。
「ジュミさん…!」
「……、くっ!」
クリーリャロさんが歯を食いしばる。
「私が禁術を使えば全て解決すること。あなた達はそこで静かにしていなさい。」
「ヒッ…。」
ルウが怯えたような声を出す。
ミィさんの威圧のこもったその一言は、俺達を完全に静止させた。
…いや、ただ一人を除いては。
「ミィさん、ちょっと待ってください!」
アーティが声を上げる。
「何、アーティ?」
また、ものすごい威圧感。
アーティは何を言うつもりなんだ?!
「ミィさん。」
ゴクリ。生唾を飲み込み、アーティの言葉を待つ。
「ジュミさんには…」
「毒が入っていません!」
………は?
「………え?どういうことか説明してくれるかしら?
現に、今、ジュミは意識を失いかけているような状態じゃない。」
「はい、意識を失いかけているという認識はあっていますが、それは毒によるものではありません。
まぁ、ジュミさんの中に矢に塗られていて入ってしまった薬も毒と言うならば毒とも言えますが。」
「じゃ、じゃあ、その薬っていうのは?」
「睡眠薬ですね。」
「そっ、そう…なら、今ジュミは。」
「寝そうになっているという感じでしょうか。」
「ふっ、なら禁術など使う必要もないな。」
「……別に、それならいいのよ。」
まぁ、一旦、さっきの口論の内容については置いておいて、
「しかし、なぜ睡眠薬なんかが?ジュミさんを狙っていたのだとしても、人間の姿になるのは今回が初めてでしょう?」
「…それは、俺を狙っていたからだな。」
背後から知らない声がしたので勢いよく振り向くと、俺よりも体格がガッチリして大柄の男が立っていた。
だが、尻尾や耳もあって、雰囲気もルウに似ている。
多分、人狼?
「父さん!!」
ルウが勢いよく駆け出していく。
待て、父さん?!
「ルウ、無事で良かった。」
どうやら、出てきた人狼の男はルウの父親だったみたいだ!
「まさか!自分で果樹園から逃げ出してきたのですか?」
ルウのお父さんは果樹園で奴隷のように働かされているとアーティが言っていたはずだ。
「あぁ、そうだ。それでさっきの奴らに追われていたんだ。」
「だから、再び捕まえて果樹園で働かせるために睡眠薬だった、というわけね。」
とミィさんが問うと、ルウの父さんが頷く。
「ふぅ、ひとまずジュミさんに毒が回っていないということで良かったです。ですが、このままの状態で寝かせるわけにもいきませんから、とりあえず集落のほうにいきましょう。」
「集落?集落があるというのか?」
と驚いたように尋ねるルウの父さんに対して
「いえ、集落があるというよりも、今造っているという感じです。」
と答える。
そして、ジュミさんを運ぶ準備を十分にしてから、俺達は歩き始めたのだった。
ありがとうございました。




