08.【提案】
「まあ、お前の機嫌が直って俺の命が無事ならそれでいい。
じゃあ帰ろうか?タクシー使っていいからさ」
「ねぇ、お義兄ちゃん?甘いもの、忘れてないよね?」
「そうだったな、帰りに買ってやるよ」
「えへへ、お義兄ちゃん、大好き」
と、突然抱き着いてくる義妹。
「お前、甘いものでそれかよ?チョロいな」
「バカ!」
帰りのタクシーの中てで大切なことを思い出した。
「ところでお前、元のサイズに戻った時間覚えてるか?」
「うん、午後三時くらいだった」
「ってことは半日以上巨大化したままだったのか?
ドコか身体に異常はあるか?」
「ううん、それは平気そう」
家に帰りついたころにはすっかり薄暗くなってた。
家に帰って会社に報告する為にパソコンを立ち上げる。
なんかネットで、街中に現れた巨大少女……のフェイク動画で騒ぎになってた。
曰く『指が六本ある』
曰く『背景の看板が日本語じゃない』
おかげで、芽依の動画も出ていたが、『模倣犯おつ』で済まされていた。
なんにせよ、助かった。
会社に報告した後、高橋先生にも連絡する。
そしたら明日、会いたいと返ってきた。何故か場所は市役所でだ。
都合が悪ければ折り返して欲しいということと、芽依も連れてくるように書かれていた。
◇
で、翌日。
受付で名乗ると小さな会議室に通された。
そこにいたのは高橋先生ともうひとり、知らない男性だ。
「市役所総務部の松本と言います。今日はお忙しい中、わざわざお越しいただいてすみません」
うーん、話が見えない。
「松本はボクの学生時代の同期でね。ボクから話を持ちかけたんだ」
そう説明してくれたのは高橋先生。
「結論から言おう。芽依ちゃんを中心にしたプロジェクトを立ち上げたい。もちろん君たちの意思が最優先だけどね」
はい?
芽依を中心にしたプロジェクト??
ナニをする気だ?
「役所としては、芽依さんの髪の毛は重要な産業資源になると考えてます。
有機素材で耐荷重200kg、こんな素材ドコにもありませんよ。
この街独自の産業を起こせるポテンシャルがあると考えてます」
「え?アタシ、素材なの?」
まあ、芽依からしたらそういう反応になるよな。
だが俺は、役所の思惑も分かってしまった。
確かに、今の芽依から採取出来るものは、工業的に唯一の価値がでるものがけっこうある。
役所としては今のウチに囲い込みたいんだろう。
「それに昨日みたいなことがあっても困るだろう?」
「そうですね。昨日はまたまたフェイク騒ぎに紛れて問題になりませんでしたけど」
そう言った途端、高橋先生が面白そうに笑った。
「そうか……いやあ、役に立って良かったよ。話を聞いてね、フェイク動画を用意しておいてよかった」
「はい?」
思わず変な声が出た。
「あのフェイク動画、先生が流したんですか??」
「ああ、そうだよ。上手く作り込み過ぎるとフェイクと思われないから、隠しきれない感を出すチューニングに手間どったけどね」
「高橋は、ホント多芸なヤツなんですよ。
医者だけやらせておくのはもったいないくらいでしてね」
そう補足してくれたのは、役所の……えーと、松本さんだ。
そこまで考えてくれて、いや待てよ。
「先生、役所のプロジェクトになんで先生が?」
「それはこれから説明するつもりだったんだけどね。このプロジェクトは官学共同プロジェクトになる」
なんか話が大きくなってきたぞ?
「えーと。若輩とはいえ私も会社勤めですから役所が囲い込みたいという理屈は理解出来ます。芽依は納得しないでしょうけど。
でも、先生にはどんなメリットがあるんですか?」
「MMGSは全く研究が進んでない分野でね。
ボクは貴重な検体を手放したくないんだよ」
またぶっちゃけましたね。これ芽依の機嫌が悪くなるヤツだ。
「もちろん芽依ちゃんにもメリットがある。
今後の医療費の心配がなくなるし、いざという時に行政と医者がバックについてるのは強力だよ」
「たしかにその点は利点ですね」
「お義兄ちゃんってば!」
「芽依、実際に昨日は高橋先生に身バレ防いでもらってるんだぞ」
まあ、それも計算のウチだろうけどね。義妹には言わないでおく。
十八歳で成人とは言え芽依はまだ高校生です。そして保護者代わりの私もまだまだ若輩です。
今日のところは持ち帰らせてもらって、両親含めて相談したいですがよろしいですか?」
忙しい親父と義母さんを自宅に呼び戻す算段を頭の中でかんかながら、俺はそう言った。
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