06.【根回し】
「ちょっとっ!お義兄ちゃん、髪の毛引っ張らないでよ!痛いでしょ!!」
「バカ言うな!振り落とされたら死ぬ!」
芽依からしたら普通にジョギングしてる感覚なんだろう。
だが、全高40mの肩の上で感じる体感は、一歩ごとに1m以上は確実に上下してる。
一瞬無重力になったと思うと次の瞬間に下から激しく突き上げられる。
これを延々繰り返してるこの状況、髪の毛でもなんでもしがみついてないと振り落とされる。
それでも歩幅が25倍、電車とバスで一時間の距離をジョギングで十分で帰ってきてしまった。
「ほらぁ、このが全然早いじゃん」
「俺の命の危機を考慮しなければな……いかん気持ち悪くなってきた。おい、芽依。降ろしてくれ、吐きそうだ」
「うわっ、義妹の肩の上で吐くなんて最低」
そういう問題じゃねぇ。
◇
自宅トイレに駆け込むと、スッキリしてからクチをゆすぐ。
「う~、まだ気持ち悪い」
「悪かったわよ、平気?」
「芽依だって憂さ晴らししたかったんだろ?」
「えへへ」
「ただ、もうちょっと、俺の安全に気を使って欲しかったな」
「うぐっ、ごめんなさい」
「なんだよ、ずいぶんと素直じゃないか。珍しいな」
「バカっ」
「まあいい。午後は学校行くぞ」
「でも先生、午後も授業あるよ?」
「病院出る時に校長にアポ取っといた。芽依が心配することじゃねぇよ」
突然、芽依が抱き着いてくる。昔からスキンシップの激しいヤツだったからなあ。
「ありがと、お義兄ちゃん」
◇
学校に着くと芽依に授業を受けるように促してから、俺は校長室に行った。
「一千万人に一人の難病ですか……」
「はい、巨大化して他人をケガさせる懸念があったので学校を休ませて病院に行っておりました。
あ、これ診断書です」
高橋先生に出してもらった診断書を校長に手渡す。
「ふむ。それで今後はどのようにお考えですか?」
「巨大化のトリガーが経口摂取だと分かりましたから学校内でクチにするものに気をつけていれば普通の学校生活が送れるとお医者さんからは言われてます」
「分かりました。ただ学食で原因物質の排除は難しいので、可能な限りお弁当等で自衛してください」
ウチの親は、俺が高校生の時分から出張で留守がちだったからな。
一通りの自炊は出来る。ただそうすると炊事分の時間確保のために、職場にも働きかけが必要だな。
その翌日、診断書のコピーを会社に提出した俺は、「必要な場合は在宅勤務」の許可を取り付けた。
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