11.【プロジェクトM】
親父と義母さんは、『委任状』を一枚書き残して帰った。
芽依は18歳だから成人扱いだ。だからもう親権は関係無しに契約を結べるんだが、事態は明らかに『普通』の範囲を越えてるので何かしら家族の同意が必要になるかも知れない。
そこで俺が両親の代わりとしての全権を託されたワケだ。
戸籍謄本や住民票を取ったりといった事務手続きが忙しい。
関係ないが続柄に養子と書かれているのを見ると、血のつながりがないことをどうしても実感してしまう。
そう言った諸々を会社にも報告すべく久しぶりに出社した。
上司に一通りの事情説明を終えると、なんか産官学プロジェクトに食いついてきた。
どうやら一枚かみたいらしい。
提示された条件は、俺を専門の担当に提供すること。
会社側の見返りは、情報の提供だそうだ。
俺が、このまま給料を貰いながら芽依に集中出来るのは正直ありがたい。
でも、役所と大学と、それに池田さんの会社という既得権者がいるうえ、芽依の情報をなるべく拡散しないことも重要だ。
◇
『プロジェクトM』と名付けられたこのプロジェクトは、ほとんど高橋先生主導だ。
そこに役所の松本さんが巻き込まれ、ご近所のよしみで池田さんの会社が飛び込んできた。
ウチの会社については、高橋先生が交渉してくれている。
まあ、なるようにしかならないだろう。
今日は、建ててくれるという住居の場所を下見にきていた。
高橋先生が芽依にタブレットを差し出す。
「先生、それってこの前、元に戻れなくなったヤツじゃ?」
芽依の心配に意も返さずに先生は言った。
「成分を解析して、すぐに戻るように改良してある。
もちろん巨大化維持したい時は今まで通り。何かのために持っておくといい」
「はあ」
芽依はなんか納得行ってないようだ。
「それじゃ、折角の下見なんだから巨大化視線でも確認して欲しい」
芽依は気が進まなそうながらもタブレットを一粒クチにした。
直後、巨大化女子高生が表れる。
「芽依、どうだ?」
俺の問いに芽依は答えず、イキナリ俺のことを摘み上げた。
「お義兄ちゃんも一緒に確認してよっ
お母さんたちからも頼まれてるんでしょっ!!」
そう言って俺を肩の上に乗せる。
相変わらず高い。
っと、仕事仕事。
周囲を見回すと人影も少なく、ここなら目撃されることは少なそうだ。
「場所は悪くないな。問題は通学か?」
まあ、芽依が巨大化したら数分ではあるが、通学のために毎日デカくなるってのも問題がある。
「うーん。自転車なら通学出来るかな?」
「最後、山道になるぞ?平気か?」
呑気にそんな話をしていて注意がおろそかになった。
クシュ
芽依が小さな、普通の人間サイズならホントに小さなクシャミをした。
でも今の芽依は40mサイズ。小さなクシャミでもその肩の揺れは想像を絶する。
放り投げられた俺は、必死に出っ張りにしがみついた。
「きゃあーっ、お義兄ちゃんのバカっ、変態っ
義妹の胸にしがみつかないでってば!」
柔らかいなんて堪能してる余裕はない。さすがの俺も命のほうが大切だ。
「芽依、助けてくれ。後でいくらでも謝るからっ」
「謝るくらいなら先に手を離しなさいよ!」
「無茶言うな。手離したら落ちて死ぬだろうが」
「死ねばいいのよ、この変態!」
「分かったよ、手離して死ねばいいんだな?どうなっても知らないぞ?」
「ケーキ」
は?コイツこの状況で何言ってやがる?
「ケーキ買ってくれたら助けてあげる」
「分かった、好きなだけ買え。だから助けて」
約束だからね!と念押しされてようやく俺は地上に足をついた。
後で聞いたら、もし俺が落ちてもいいように、下に手を回して受け止める準備をしてたとか。
高橋先生も松本さんも微笑ましいものを見る目で俺たちを見てる。
クッソ、こんなことなら俺も堪能しておけばよかった。
反応があると励みになります。よろしければブックマークや高評価、リアクション/感想等いただけると嬉しいです。
これからもお付き合いいただければ幸いです。




