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 ロキが魔王討伐の旅に行ってしまった。俺が皆の前で公開告白をしてすぐに旅立った。だが、彼が出立する前に俺の家へと立ち寄ったのだ。


「じゃあ、俺は魔王討伐の旅に行ってくる」


「おっ、おう」


「ねえ……ヴァン。俺が魔王を倒している間に浮気したら……許さないから」


 その瞳にその声は酷く冷たかった。それは俺の背筋を冷やすには十分だった。


「しっ、しない。するわけないだろ……」


 その言葉にロキは笑みを浮かべた。誰もが見惚れるような笑みだ。そのため、俺の心臓も跳ねた。


「当たり前だよ。ヴァン。俺が帰って来たら、結婚式を挙げようね」


「えっ⁈」


 ロキの言葉に驚いた俺に彼は一瞬真顔になって、俺の両手をがっしりと掴んだ。


「俺の事が好きなんだよね?」


 『はい』以外認めないという圧が俺を襲った。そのため、勢いよく首を縦に振るうと、ロキは笑った。


「良かった。もし、心変わりして、俺以外を選ぶつもりなら、この村を滅ぼすところだった」


「こわっ!」


 笑顔でとんでもないことを言ったロキは掴む手に力を入れた。


「そうならないために、ヴァンはずっと、俺を好きでいてね」


「あっ、当たり前だろう」


 俺に逃げ場はない。もし、この村から逃げてもロキは追いかけてくるだろう。それも、村を滅ぼしてから……そう思わせるほど、ロキの笑みには凄みがあった。


「じゃあ……俺は行ってくるね」


「うん……」


「最後にキスでもしとく?」


「はっ⁈」


「してよ。キス……」


 ロキは目を瞑った。俺は少し躊躇したが、これから先、もしかしたらもう……彼には会えないかもしれない。そう思うと、自然と彼に口付けていた。


「ヴァン。かわいー」


「俺は可愛くない」


「ヴァンは可愛ーよ。それに、ずっと、俺の太陽」


「えっ?」


「じゃあ、ヴァン! 行って来ます!」


 そして、俺の手を離した彼は手を一度だけ振ると、さっさと村を出て行った。


 それが一週間前の事だ。


「何でもう、いるんだ?」


 そう、彼はもう村へと帰って来ていた。


「魔王を倒したからだよ。おかしな事を言うね」


 いや、おかしな事を言うねって……お前がおかしいからだろ。何で、一週間で魔王討伐を終えたんだよ? 魔王討伐だよ? ゲームですら、めっちゃ時間かかったよ?


「……早くないか?」


「俺は歴代最強勇者だよ」


「それでも……」


「俺がヴァンに早く会いたかったから」


 ロキは俺の目の前にくると、その場で膝をついた。


「ヴァン」


 そして、ポケットから小さな箱を取り出して、その蓋を開けた。


「俺と結婚してください」


 小さな箱には指輪が入っていた。それも、指輪の真ん中に宝石がついた物だ。


「ヴァン。俺と、結婚してくれる?」


 ロキは珍しく緊張していた。俺と同じくらい頬を赤く染めていたからだ。そんな彼に俺は笑った。


「いいよ。約束したからな」


 その言葉を聞いたロキは立ち上がり、俺に抱きついた。


「嬉しい。本当に……嬉しい」


「指輪は嵌めてくれないのか?」


「そうだね」


 そして、俺の左手の薬指に指輪が嵌った。宝石がキラキラと輝いている。……宝石がキラキラと輝いている?


「なあ……ロキ?」


「ん?」


「この宝石って……?」


「それ? 魔法石だよ? 綺麗だよね? 俺の魔力をたくさん込めてあるんだ。いっぱい加護もつけたからね」


「へっ、へえ……あっ、ありがとう」


 どんな加護を込めているのか怖くて聞けなかった。


「あっ! ロキ!」


「ん?」


「おかえり!」


 俺は満面の笑みをロキに向けた。すると、彼も一瞬だけ目を見開いて驚いていたが、すぐに笑顔を浮かべた。


「ただいま」


 そして、この一ヶ月後、俺達は結婚式を挙げた。


「ヴァン。好きだよ」


「俺も……好き」


 この日から俺はロキから絶え間ない重い愛情を受ける事になるとは思ってもいなかった。

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