戦闘姫 戦闘状態に突入する 2
そう言いながら、デルタ視点は全くありません。すべて、別動隊視点です。
「梟1より、蒼雷。攻撃部隊が、待機ポイントに到達した。支持を候」
ふぅっと、斎藤は、ほっとしたような表情を浮かべた。エンジンをフル稼働し、効果的な攻撃を行える時間が、間もなく限界に近づくところだった。ミスブラウンの方も、善戦しているが、その戦闘スタイルに合わせた獣たちの攻撃を受けていて、最初の時ほどは、自由にはさせてもらえてはいなかった。それでも、戦闘力が下がらないことは、驚異的だった。相変わらず、超人……いや、今はヒーローと呼ぶことになっていたかは、頼りになると、ふっと息を吐いたついでに呟く。
「こちら蒼雷。時間以内に来てもらえてほっとしている。こちらは離脱する。長時間の戦闘機動のせいか、思いのほかエンジン出力が上がらない。ミスブラウンの回収を頼みたい。誰かお願いできないか?」
「そう言われると思っていた。回収任務ならば彼らのお手の物だ。」
その梟からの通信が、終わるか終わらないかの内に、斎藤機の横をかすめるように、イギリスの国旗を掲げた6機編成の部隊が駆けていく。彼らの機体の横の意匠から、斎藤は、最適解ともいえる、部隊が到着したことを察する。
「ベイカー遊撃隊か。助かる。」
共通する意匠――1ギリー硬貨とパイプを施した、5機の万能戦闘機欧州連盟主力攻撃機ティポーンと、1機の特徴的なフォルムを持った機体によって構成された部隊は、ミスブラウンと呼ばれた忍者の元へまるで騎士のように駆け参じる。
ミスブラウンは、ちょうど、近場にいた最後の一体を切り伏せたところだった。そこに、特徴的なフォルム……円盤のように、そして、よく見ると、まるでパンケーキのような機体がミスブラウンの横に降りると、そのまま、ホバリングを始め、迫りくる獣に機銃の雨を叩き込み始めた。
ほんのわずかに怪訝な表情を浮かべたように見えたミスブラウンだったが、大きく飛翔しながら、手に持った忍び刀の血を祓うように、斬撃を飛ばす。それは、威力を全く殺すことなく、獣たちを薙ぎ払った。態勢を整えようとする獣。そこに、欧州の主力戦闘機ティポーンが襲い掛かった。地上掃射に、地の花が天に舞い上がった。一時的に勢いが削がれた獣たちの間隙を縫って、ミスブラウンを回収した機体と、ティポーンの編隊は上空への回避行動に移る。
「全くこのデザイン何とかならなかったの?空腹の兵士にこのデザインは酷よ。あ、そうね、こんなものを作ったのはイタリア人に違いないわ」
その珍妙な形状の機体――開発コードフライングパンケーキⅡに乗り込んだ、ミスブラウンは、シートベルトを締めながら、悪態と共に頭巾を取りさる。そこから、トパーズのような輝ける髪がこぼれた。
「いえいえ、ミスブラウン、これは、あなたの国の作った機体です」
その声に、ミスブラウンは、わかっているというように、ふんっとそっぽを向くと、小さな窓から、外をただ見ていた。先程切り伏せていた、地の黒い渦は、こちらを捕らえようとまだまだ、必死のようだ。そこに、はるか上空より、一本の線が走った。それに追従するように、無数の火線が地に向かって注がれ、地に赤い花が咲く。どうやら、攻撃が始まったらしい。
その範囲から逃げるように各機は一路に同じ方向を目指した。
「こちら、蒼雷の斎藤だ。ベイカー遊撃隊、応答願う」
「こちらギリー1。聞こえている。何かあったか、斎藤機?」
気が抜けていたらしく、うとうととしていた、ミスブラウンの間近で、無線のやり取りが始まった。全くと思いながら、ミスブラウンは目を覚ました。時計では3分もたっていない。ただ、何気なく、ギリ―1の会話を聞いていると、決していい話ではないらしく、会話が進むごとに、ギリー1の声がわずかに固くなった。最終的に、ギリ―1が了解と告げ、無線を置いた。ミスブラウンの視線を感じ、聞こえていたことを察した、ギリー1はうんと少し考える様なしぐさをほんのわずかに見せた。だが、出た言葉は、軽快なものだった。
「どうやら、もう一仕事あるようだ。魔属領の陣地に敵の大群が迫っているらしい。ただ、偵察衛星からの情報ではあるが、どうやら、既に戦闘が始まっているようだ」
戦闘?誰が?と驚いた表情を浮かべたミスブラウンに、ギリー1は答えた。
「戦闘姫だ。戦闘姫が現在一人で陽動を買っているらしい。これに対して、ヘイゼン閣下は、チェエマンを通じて、介入の遺志を示している。ただ、間に合わないらしく、こちらで作戦に間に合うユニット……つまり我々を指名して、共闘体制を築くように、指示している。よって、我々は、先行して、対象を叩く。疲れているところ、すまないが……ヒーロー、ミスブラウン」
その言葉に、ミスブラウンは、頷く。先程の戦闘では、さほどのダメージを負っていない。今なら行けると思った。
「行けるわ。ギリ―1。ただ、レディにエスコートが必要なのは、ジェントルにはわかるわよね?」
その言葉を聞いたときに、雰囲気が変わったような気がした。
「そう言うと思っていた。エンジンフル稼働。エンジン出力の6割を、ミスブラウンの回復にあてろ!……あの時の同じ働きを……頼むぞ、ヒーロー!」




