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帝立学園の戦闘姫 4

人体改造的な部分が今後かなり出てきます。

 その日を起点にして、デルタの日常は変わっていった。当然実験体として実験棟で検査などは受け続けていたが、リリムとオルテガが、会話だけではなく、先生のようにデルタに一般的な教養を教えてくれるようになった。

 午前中で実験の終わるときは、デルタは、アリアやライトにお願いして、一緒に積極的に商人街に出るようなった。そこで、人に慣れて、そして、いろいろなことを学んだ。



 その日々、すべてのことが宝石みたいに大事なことで、デルタは、その事、小さなことも日記に書いていた。



 だけど、それが終わる時が来ることは、最初からわかっていたこと。そして、それが不意に訪れることも。



 

 その日は、基礎検査を行う日だった。


『これで 訓練終了だ  デルタ 本来のお前の役割には 同型同士での連携が欠かせない  それをよく理解しておくように』


「でも、ゼクスマキナ。私以外に同じような人っているのかな?」


『それを探すのも 必要なことだろう  さて 最初の訓練から1か月  よくここまでたどり着いたな  欲を言えば 戦闘訓練をもう少し受けてほしかったが』


 デルタは、飛行訓練のプログラムはほとんど完了していたものの、戦闘訓練については、自衛行動以外の訓練を受けていなかった。


「だって、ここでは、それは必要ないと思うんだもの」


『全く言うようになったものだ』


 デルタの明るい声がシミュレーター内に響くと、ゼクスマキナが嬉しそうに返信をした。


『さて これで 完全に安全にできる訓練は終わりだ  これからは少し厳しくいくぞ』


「ゼクスマキナ。これから何か変わるの?」


 デルタの言葉に、ゼクスマキナは、今日の夜にでも伝えようと、返信を返した。


 検査機から出たデルタの目には、いつもは見ない光景が広がっていた。いつもならば、フィーリーやバンジーが車いすを用意してくれているのだが、今日はそれはなく、デルタは、落ち着かない様子でカプセルから自らの足で出た。


「あの?これって?」


 皆が、沈んだ表情を浮かべているのをみて、デルタは、不安な気持ちに襲われた。まず、口を開いたのは、ライトだった。


「落ち着いて聞いてほしい。昨日、君の検査結果が出た。実験体デルタ。君は、『戦闘姫』と呼ばれる種族だ」


「戦闘姫?」


 その言葉に、聞き覚えがあった。あの日あの場所で言われた言葉。白しかない空間、そして、何気なく言われたあの言葉が、よみがえってきた。


『かなり早い段階で 解析されていた可能性もあるか』


 その文字をあえて見ないふりをした。続けたのはアリアだった。


「戦闘姫はね。もう研究をしてはいけない対象になっているの。国と国との約束でね。だから……デルタちゃんが……実験体なのは、これで終わりになるわ」


 アリアの声が震えていた。デルタは、何とか気丈にふるまおうとした。


「そ、そうだったんですね。あの……戦闘姫って?」


 その言葉に、研究室の面々は沈痛な表情を浮かべた。


「戦闘姫は、太古の昔、魔族と人間が争っていた時代の空駆ける戦術兵器よ」


「戦闘姫が、戦術兵器?そんな危ないものならば、」


 その言葉にはっとして、デルタは、顔を上げた。その目に飛び込んできたのは、アリアが本当は泣きそうな表情を浮かべているところだった。


「デルタ、なぜ、戦闘姫の研究を行う必要がないのかって言うと、理由が2つあるの。

 1つ目は、さっき言った通り魔族と人間の間で、戦闘姫の研究を行わないことが、条約としてあること。

 そして2つ目は、もし、戦闘姫がいても、空を飛ぶためのドレスがもうないの。もう、戦闘姫に戦術的に警戒するべき価値なんてないの。


 正確には1つあるって話だけど・・・」


「あるのですか?」


「あれは、王族の所有物で、本物かどうかもわからないの、調査もできないし、わたしは、……多分偽物だと思っているけど」


「そう……なんですね」


 デルタは、少しがっかりしたようだった。でも、


「アリアさん、ありがとうございました」


 精一杯の笑顔を浮かべた。


「わたし、アリアさんのおかげで、ここまで来れました、魔法とか使えなくても十分にやっていけるんじゃないかって、ようやくそう思えました」


「……デルタ」


「たった、1か月ですが、護ってもらえて、育ててもらえて……お世話になりました」


 アリアは、ほっとした表情を浮かべる。デルタの表情が明るかったことにほんのわずかに安どを浮かべた。


「一時金や、退所手続きは進めておくわ。でも、少しでも長く、ここにいなさい、あと、今日もご飯一緒に食べましょう」」


「はい、お願いします」


 小さい背中が、初めて、自分の足で歩いて、出口に向かっていく、きっと泣いている、でも、そうアリアが考えたとき、顔を伏せたまま、デルタが振り返った。


「短い間でしゅたが、」


 アリアに、デルタは、頭を下げる。


「お世話になりましゅた」


 きっと、顔は涙目になっている、ぐしゃぐしゃになっている、気丈にふるまっていると、アリアは感じた。


「なにか、追加調査することがあったら連絡するから、しばらくは、王都にいてね」


「はい!!」


 そのまま、デルタは、駆け抜けていく、もう振り返ることはなかった。

 


「まったく、抱きしめて、行かないで、私たちの子になって伝えればいいのに……何のために手続き進めているんですか?」


 バンジーが、アリアの方を向いて、複雑そうな顔をしている。今日は、アリアとライト、バンジー、フィーリーの四人しかここにはいない。バンジーの声に、フィーリーはうんうんと頷いた。


「あのままじゃ、デルタちゃんかわいそうすぎますよ。着の身着のままで、ここから放り出すつもりですか?」


「そんなことはしないわ!……でもね、彼女が受け入れてくれるのか、怖かった、落ち着いてから、伝えるべきだと思ってた……戦闘姫が、こんなこと飲めるわけないって」


 それが、どういうことかわかっていないつもりじゃなかった。


「否定されるのが怖いとは、上官らしくない」


「そう持ち上げないで。臨時委託統治下における上官よ。私は、ただそれだけで、何もかもできるわけじゃないわ。わたしは、機械になり切れない。だからこそ、気持ちの整理は必要なことはあるの。」


 そうだなと、ライトの声を受けて、アリアは、さっそく明日にでも、伝えようと思った。




 そんな中、ようやく、止まった涙を拭きながらデルタは自分の部屋へと歩を進めていた。


『これから どうするか 何かプランはあるか?』


「あるわけないじゃない。とりあえず、部屋のものをまとめて、商人街に売りに行くわ」


 デルタは、勝手を知っている廊下を歩く。部屋の前につき、ノブに手をかけようとした時だった。


『デルタ、部屋の中に、動体反応がある、ドアに触れるな。今、視界をサーモグラフィに切り替える』


「っ?」


 びくっと、デルタは、身を引く。デルタの目に、今まで見たことのない、映像が浮かび上がる。目の前の壁が急に色を失い、青い一枚の絵のように見える。


 その奥に、自分の部屋も同じ色に不思議なことに、部屋に置かれている家具などの位置も確認できる。


 そんな中に、その青い壁の奥、ドアのところに1人、机の近くに1人経っているのがわかる、そして、部屋の中が荒らされているようなのも、把握できた。


『ちょっとした機能拡張だ 昨日で納期が間に合ったからついでに作っておいた  あとで言うつもりだったが この時に間に合ってよかった』


「き、機能拡張って。ゼクスマキナ、どういうこと?」


『戦闘姫に必要な機能を これからはデルタに増設 あるいは修復していく  言っただろう  お前を空に戻すそれが――』


「でも、わたしは……」


「どうしましたか?」


 偶然、通りかかった人だろうか、デルタは後ろから、声をかけられた。


「あの、部屋の中に人がいるみたいなのです」


「?」


 その人は、少し首を傾げた。


「何を言っているのですか?それは、あなたの部屋に、人がいるのは当然でしょう?」


「えっ?」


 バチっ


 首に、痛み?あれ?


「確保できてよかった。戦闘姫……研究のし甲斐が実にありそうですね」


 デルタの意識は暗転していった。




「デルタ?デルタ?寝てるのかしら?」


 デルタと別れてから30分後、アリアは、デルタを訪ねて部屋まで来ていたが、デルタが出てくる気配はなかった。


「仕方ないわね、あまり使いたくないけど」


 アリアは、懐から合いかぎを取り出す。実験体の様子を見に行くために当然持っているが、不思議とデルタは、時間を必ず守ってくれた。


 カチッ


「はッ!!」


 アリアは、微細な魔力の反応を見逃さずに、ドアノブを手放すと、そのドアを蹴り開けた。その直後にノブが小規模な爆発を起こす。小規模だが。指くらいは吹き飛ばせる悪意のある魔法だった。


「ああ、そんな!!」


 無残に変わり果てた部屋にアリアは絶句した。


 壁に掛けてあったであろう、気に入って、いつも着ていた白いワンピースはズタボロに切り裂かれ、ただの布切れになっていた。


 机は、天板が割られて、引き出しは床に落ち、そこにしまってあったはずの、写真は一枚残らず破られていた。おそらく、カギをかけていただろう小箱は無残にたたき割られ、中に入っていたであろう、日記は、ボロボロに破られ踏みにじられていた。


 大事なものをしまっていたであろう、宝石箱は、こじ開けられ、中のアクセサリーとメイクアップキットはすべて、床にぶちまけられている。中には踏みつけたような跡もあった。


「ひどい……」


 アリアは、そこで、デルタが攫われたことに気が付いた。そして犯人についても、目星がついた。


「ライト、情報を共有するわ」


 アリアは、一瞬目を閉じ、独り言を言う、


「ええ、私は、奪還班に依頼する、そちらは、研究科、後、警備員の洗い出しをして」


 会話が、成立しているだろうか、アリアは、そっと日記を拾い上げながら、独り言を続ける。


 そこに残っていた残ったページは、昨日の日付だった。


『アリアさんが言うには、明日、私の一次結果が出るらしい。』


『もしかしたら、もっと、アリアさんやライトさんと一緒にいられる。かもしれない。』


『アリアさんといると落ち着くし、ライトさんは優しい。そんな中で実験してもらえて、そのあと、愛情を注いでもらえる私は幸せなんだろう』


『神様、今日のような日が、来月も続いてくれることを祈ります』


『アリアみたいなお母さんと、ライトさんみたいなお父さんがいたら、私、これからもきっと幸せなんです』


「戦闘姫としてみるんじゃなくて、ただのデルタとしてみていたら……守れたのに」


 アリアは、汚れてしまった日記を拾い上げ、強く、歩き出した。


 目の前から、警備を引き連れたライトが来ていた。

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