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ムシ除け


 日本のようにじめついた夏ではない分、過ごしやすくはあるが、暑いものは暑い。

 朝一番に、店の前や家の周りに打ち水をして多少の抵抗を試みる。

 庭に面した窓の外には、日を遮るために葉を茂らせる蔦を這わせている。

 朝顔や瓜ではないことは分かるが、実を付けないそれが何なのかはいまだに不明だ。

 涼しくなれば何でもいいやと、悠馬は水をまいてひんやりした蔦のカーテンの内側に木造の長いすを置き、水を張ったたらいを足元に置いた。

 悠馬は長いすに座り上着を脱ぐ。そしてズボンを膝上までたくし上げて、たらいの水に両足をつけた。

 冷たさにほっとして、あくびを一つ。

 襲ってきた眠気を堪えながら、虫よけの樹液を腕や首に塗る。少しつんと匂うが、蚊のようなものはこれで寄ってこない。

 木枠に布を張った団扇もどきで風を送り、ぼうっと蔦を見上げる。

 レンは朝から学校だ。店も今日は定休日で、予定も入っていない。こんな日は朝からだらりとしてしまう。

 こういう日もたまには必要だと思うが。

「・・・・・・宇治金時食いたい」

 ぼそっと呟いて悠馬はそのまま朝寝した。



 ばしゃばしゃと水音がして、足が気持ちの良い冷たさになる。

 ぼんやりと目が覚めた悠馬は、急に冷たくなった水に「ん?」と片目を開いた。

 桶を手に水を足している黒っぽい髪の少女が目に入る。

「あ、起きた?」

 井戸から汲みたての冷たい水を入れなおしていたレンは、私もまぜてと悠馬の隣に座り、ちゃぷんとたらいに足を入れた。

 ふぁっとあくびをし、悠馬はああそうかと口にする。

「学校、今日早いんだったね。おかえりレン」

「うん。ただいま。気持ち良いね」

 ふにゃんと笑うレンに悠馬も笑って返し「さされるから塗ったら?」と虫よけの液を渡した。

「ありがとう」と受け取ったレンが、よいしょと急に上服を脱いだから、レンを見下ろしていた悠馬は出そうになっていたあくびが飛んだ。

 下に一枚着ていたレンは気にもせずに、腕や首筋に薬を塗り。

「暑いのは嫌だけど、こういうのは良いね」

 と、たらいの水をぱしゃりと足ではねさせた。



「・・・・・・こっちってノーブ、キャミで出歩く事ってあったっけ?」

「のーぶぎゃ?」

 斜め上、蔦を凝視しながらの悠馬の言葉に、レンはきょとんと首を傾ぐ。

 悠馬は腕を組み真剣に。

「ムシ除けいるのか?」

 と呟いた。


 

初出 2011.07.17

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