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竜獣大戦 小さな白虎王編  作者: 芹沢ほのか


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14/14

日記

ロンは一人旧王宮から出て庭に面している森の入り口へと来ていた。

スッ……。するとロンの視界に剣が振り下ろされるのが見え、ロンは冷静に素早くサッとかわした。

「……怠けてはいないようだな。ロン」

ロンを呼ぶその声に顔を上げると、木の影から音もなく現れた金髪碧眼の美男子。豪華な紺色の軍服には金色の正肩章がついていて、ロンに似ている気もする。

「そのようなハデな装いでこのバイフウまでどうやって来られたのです?目立つのでは?」

そう言ってみたものの、バイフウで不審な情報が入っていなければ、こんなにもフレグレンスの者だと分かる装いの者の情報が、一切入ってきてないのも不審な点である。

男はロンの問に答えることはなく、碧眼がキラリと黄金色へと色を変え、ニヤリとロンにソックリな不敵な笑みを見せる。


「何故今お会いになられたのです?。これも全てはその“ギフト”で見えていたことですか……?」

ロンは黄金の瞳を見るなり、“ギフト”と言った。旧王宮側から、森の奥へと流れる風に、男の金髪がゆらゆらと優しく揺れる。

「“ギフト”とは、フレグレンスの皇族が神より賜った、特別な能力。その力は民の為に賜ったものであり、悪しき心根の者が皇族に生まれたときは“ギフト無し”として生涯において迫害される運命……つまり、虎・玲の黄金の瞳へと変わることこそ、“ギフト”持ちの証であり、我が妹の娘である証だ」

ロンは静かに男の言葉に耳を傾けながらも思考する。何故この男が突然やってきたのか、考えられる近日の出来事や、これから起きるであろう事までも予想し、考える。


「そう警戒することもなかろう、実の父親に対して………野望のある母親でもあるまいに」

ニヤリと笑みを深めた男がそう言うと、ロンの顔色が曇った。母親の話題を苦手としているのか、父親と言ったことに不快に思っているのか………

「安心しろ、これまで少しの間だが過ごしたお前よりも伯父である俺は玲を良く理解している。“未来が視える”ものでな」

クスリと挑発ともとれる笑い方に、ロンのポーカーフェイスも意味を成さなくなっていく。

「お早くお帰りになっては?アルフォンス殿がお困りになっておられるのでは?」

ポーカーフェイスを保とうとしているようだが、口元は若干引きつっていることに父であるこの男が見逃すはずもない。

「暫くは戻って来るな。お前の母親も片付けねばならんからな。玲のことは任せるが、復讐者にしてくれるなよ」

空は分厚い雲に覆われ、今にも雨が降りそうな天気になっていた。

「………心得ておりますとも……父上」

ロンは右手を左胸に添え、お辞儀をする。

彼こそ、リベラート・フレグレンス・アマリリス……ロンの父親であり、フレグレンス帝国の現皇帝である。


フレグレンスに伝わる能力が、あの黄金に輝く瞳の正体であり、玲と対面していたリベラート・ケリイと名乗る別の容姿と声音をしていた男も彼、リベラート皇帝である。変装をしていた訳でも、変声機を使った訳でもないが、彼は変幻自在に姿を変えることができる。ロンはその事実を知らないが、何かを感じ、怪しみ、警戒しているのであった。



即位の儀式は厳かに行われた。玲はいつもの質素な男性物の漢服ではなく、黒と赤を貴重とした重厚な衣を纏い、“下裳かしょう”という腰から下に着用する深い色合いのプリーツ状の巻きスカート状の衣装で、頭には“冕冠べんかん”と呼ばれる前後に垂らした玉の数は身分を表す冠、腰にある大帯の装飾は歩くたびに音を鳴らす佩玉ていぎょくを下げている。


変わったのは玲の服装だけではない、玲の即位に伴い、ロンは玲を支える宰相となり、勝峰と楓は武官に、ファントムは闇ギルドを密かに脱退し、玲から新たに“紅花(ホンファ)”という名を賜り、王の暗部へと正式に就任。リベーリュはギルドに所属する冒険者のまま、ロンに依頼された業務をこなしている。




即位式を無事終えられたからといって、まだ安心はできない。利によって民は貧困に苦しみ、住む場所無く、飢え、働く場所もなくさまよっている。苦しむ民を救うため、まずは国のお金を確保し、飢えた民に無償で食料を配り、獣王自らが炊き出しを行った。


それでも足りず、次は国宝で倉庫にあるだけで使いもしない宝の山を売り払い、身分問わず才ある者達に職を与え給料を渡した。けれどもバイフウには食料問題、人員不足、働く親世代の支援、荒れた建物の復旧など考えるべき課題が多く、困った玲は書斎で歴史書やら参考資料やら、専門書まで様々な書物を読みあさり、国のために思考した。



そんなある日、玲はホコリを被った暗くてジメジメした薄暗い書庫で、秘密の隠し部屋を見つけた。本棚の裏に隠された部屋には、見たことも無いきらびやかな異国のドレス、バイフウの文字ではない日記のような何か、そして“とある”記録。

玲はそれ等を、一つ一つ丁寧に手に取り観察する。玲を静かに見守る護衛である紅花。


玲は日記に目をつける。日記にあるのは母の字だ。それはバイフウの文字では無いけれど、不思議と読める。



[この国の……否、世界の裏を見てしまったわたくしは、きっと【あの人】に消されてしまうのでしょう。けれどこの事実を一刻も早くお兄様方にお伝えしたい。龍獣対戦は比丘尼様が、シュヴァルツとバイフウを対立させるために裏で暗躍し、竜帝様と獣王様の仲違いから起きてしまったただのすれ違いだということ、そしてそれは他の国でも近いうちに起き、世界を混乱に招くことになるのだと………兄上様の【ギフト】であればそんな未来など予想できているのかもしれませんが、このままではまずはバイフウが滅亡してしまう。どうか玲を覚醒させ、シュヴァルツ、オハナ、玄武、そしてフレグレンスに連れて行き、それぞれの力を覚醒させなければ………]

理解のできない内容に混乱する。あの人とは誰なのか、オレの覚醒とはどいうことなのか、玲は書物を見ながら固まってしまった。


そしてふと何故か白虎のことが頭に過る。何故そう思ったかは分からない、もしかしたら直感なのかもしれないが、何故か白虎が関連しているような気がしたのだった。

そして、玲は密かに母親について調べることを決めた。ロンは何か知っているようだが、母親については未だに聞いてもはぐらかす。ならば、独自に調べるしかないと、この日から玲は衣に頼んで入れ替わりをするようになる。玲は衣となり、衣は玲となる。双子だからこそできる苦肉の策だ。

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― 新着の感想 ―
玲にもギフトがあるのかっこよすぎる 前回出てきた少年もまさかここまで重要な人物だったとは ロンのお父さんは絶対にこの後の話を握るキーパーソンすぎるやろ、ギフトのこととかも詳しそうだし あと、お母さんの…
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