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アルカ雪原Ⅴ

シチューをたらふく頬張り、サトーの腹は膨れていた。台所からはカチャカチャと食器を洗う音が聞こえる。水道が通っているとは...驚きだ。

ふと横に置かれた手鏡で自分の体を見る。

太っていたはずの自分の体が、何故か筋肉マッチョに...

ふふ...


ふふふ...


「人は闇を持ってして闇を産むっ...っ!」


自分の中でできるだけ低く、かつ片手の包帯を解く仕草をしてそう言い放った。

俺が中学生の頃に見ていた双剣伝説ヘルバーン。第1期アニメ放送中に何故か原作が打ち切りになった作品だ...。

まさか、その闇堕ち主人公と同等のイケメンフェイスになれるとは...!

ふふ...ふふふ


「人は闇を持ってして闇を産むっ...」

いつの間にか隣に居たルーが同じようにさっきのセリフを口にする。

「.......合格」

上手なので評価してあげた。

「は?」

「い、いや、なんでもないです...」

縮こまるサトー。





「...それで、何があったんじゃ」




空気が一瞬ひりつく。何があったか...それを思い出すだけでも吐き気を催しそうだ...。

「......魔王軍に...やられました」

色々端折り、そう呟くサトー。話したくない。話してしまったら俺の中の何かがブチブチに破れてしまう気がして。

「........................そうか」

ルーは少し間をおきそう小声で呟いた。

続けてルーはこう言った。

「アルカ雪原に訪れるバカは何十年ぶりか...」

「......」

「ここがどれだけ危険な場所か分かって入ったのか?」

「.......」

「わしも説教したい訳じゃないんじゃ...。パーティは何人だったんじゃ?」


サトーは少しずつ言葉を綴り、今までの詳細を話した。自分がどういう身分なのか、アルカ雪原で何があったのかを。


「.........なるほどな」


「はい...」


ルーはベッド横の椅子からのっそり立ち上がり、ルーの背丈2人分ある地図2つをどっさりと目の前に置いた。

「んしょっ」

その地図は隅にあったにも関わらず、埃は全く被っていなかった。

「サトー。この地図がなんだか分かるか?」

1つ目の地図にはびっしりとアリの巣のような量の迷路が記されていた。2つ目の地図には地形と思わしきものがびっしりと記されている。


「.....な、なんですか、これ」


「わしが記したこのアルカ雪原の地形じゃ」


確かに...それは分かるが、なぜ地図を自分で?

地図であれば俺の荷物にも入っている。ヴォルバーに貰った地図だ...

「地図なら僕も持ってますよ。ほら。」

その地図を取り出しルーに見せる。


「うむ...確かにここいらの地形は記されているようじゃが、それは役に立たんのじゃ。それになんじゃ...この地図、...古すぎるじゃろ。」

ルーがその地図を覗き込む。

「そ、そうですかね...」

頭をポリポリ掻き、地図をしまう。

「サトーよ。この地図の異常さが分かるか?」

ん...?異常?どこに異常があると言うんだ...?

至って普通の.....


.......ん?

なんだこれ。全く同じ形の地形が繰り返されてる.....




「そうじゃ、このアルカ雪原はどこまで進んでも同じ場所に戻ってくるんじゃ」



「えぇ!?じゃ、じゃあつまり......」

サトーは怯えた。

とんでもないことが予測できてしまったからだ。



「そう...」

ルーは1つ間を置いて言った。




『このアルカ雪原からは、出られない』




サトーはこの言葉の重みを即座に理解した。

ルーはエルフなのだ。

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