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乙女に捧げる狂詩曲  作者: 遠夜
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乙女、晴々

八年ぶりの『父娘』の対話の終盤は、なんかもうどうでもいい内容の話ばっかりだった。

早めに切り上げたつもりだったけど、ニアさんに部屋を借りたお礼を言って店を出たら、もう既に陽は西に傾き始めていた。


別れ際に青磁がしつこく私の住んでいる所を知りたがったけど、そもそも気軽に訪ねて来られるような場所じゃないし、来られても困るから曖昧に濁しといた。

一応和解(?)らしきものは成立したけど、だからといって今後身内として付き合う予定は全く無いし。


私が青磁の現在いまの立場について、深く言及しなかったのはそのため。

お互い生まれ変わったと思って、それぞれ第二の人生を好きなように生きればいいのよ。


だいたい自分の父親が、実の娘とたいして年齢の違わない嫁とイチャイチャしてる姿を、間近で見たいとは思わないし。





「さー、帰ろ帰ろ。グラニテ通りで食材見繕って、晩ご飯にとびきり美味しいものでも作って食べよっか。シグは何か献立メニューにリクエストある?」


通りを歩きながら斜め後ろを振り替えってシグに声をかけると、ちょっと考えるような仕草をした後で『“カレー”が良い』と答えが返ってきた。


「おっけー、カレーね」


異界部屋うちの台所は料理研究家をしてたお母さんの影響で、調理器具や調味料がそこらの飯屋に負けないぐらい充実してる。

オマケに引っ越し直後に買い集めた食材でストッカーは満杯。謎の再生機能が追加された我が家の食料事情は万全に近い。


基本的に私はものぐさで、趣味にのめり込むとほとんど外出しなくなるから、献立メニューのバリエーションも考慮して、食料品は一週間ぐらい保つように品揃えしておいたのが功を奏したというか。


日本の国民食とまで言われるカレーに関しては、市販の固形タイプのルー以外にも缶入りのパウダーやすぐに食べられるレトルトまで、幅広いラインナップで取り揃えてあったりする。食いしん坊万歳。


「・・・ずいぶん機嫌が良いな?」


「ふっふ~ん、まあねぇ~」


だってもうこれで、青磁おとうさんの事で気を揉まなくていいんだ、と思ったら。

長年降り積もった心のおりまで、きれいサッパリ吹っ飛んだ感じ?


とにかく、生死不明の宙ぶらりんの状態てのが一番キツかったから。

それが八年だもの、そりゃ恨みも溜まるって。

なまじ生存の可能性が残されていただけに、死んだものとして割り切る事もできなくて。


━━━━でも、生きてた。

生きて、そこそこ元気にやってんのが判明して。

なんかもう、どうでもよくなった。


愛情でも、恨みでも、重たい感情をずっと抱え続けてるのは凄くしんどい。


だからもう重たい荷物は全部置いて━━━、身軽になっていいよね?



「気分が良いからデザートもつけちゃおっかなー。コーヒーゼリーとかどう?甘いクリームを添えて食べるの」


「んん?なんか知らんが美味そうだな」


「冷たく冷やして食べるデザートよ。色んなバリエーションがあるから、たくさん作って冷蔵庫に入れとけば毎日でも楽しめるわよ」


「お前んちの“れいぞうこ”は、何でも出てくる魔法の箱だな!」


「いや、何でもは出てこないよ」


「あの“こーら”だったか?“さいだー”?とかいう飲み物もシュワシュワしてて面白ぇし。“ぷりん”も美味かった!」


「・・・また盗み食いしたね、シグ」


あっちの食べ物は再生する上に、なんとカラになった容器が自然消滅する親切仕様だから、シグに摘まみ食いされても気付けない事が多々あるのだ。


ホントにいったいどんな仕組み(?)になってんの、私の自宅いえ



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