表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
乙女に捧げる狂詩曲  作者: 遠夜
71/156

乙女と三毛猫

シグにお面を被せてからというもの、人混みですれ違う女子の絡み付くような視線が激減し、お祭り広場を歩き回るのがとても気楽になった。

それでもまだたまにチラ見してくる人はいるけど、さっきまでの煩わしさを思えばなんて事もない。


気の向くまま辺りを練り歩いて、大道芸人の寸劇や軽業を見て楽しんだり、他愛のない土産物の露店をひやかしたりしながら思う存分お祭り気分を満喫していたら、いつの間にかすっかり陽が傾き始めていた。




「遊んでる時ってなんでこんなに時間が経つの早いのかな?」


「ハハハ、誰でもそんなもんだろ」


「ねえシグ、もうちょっとこの街にいてもいい?夜にある幻灯機のショーがどうしても見たいの」


「構わねえぜ。むしろ夜通し遊び倒してもイイぐらいの気分なんだが、グウィンの奴に釘を刺されてるからなー。━━━ただし!絶対にはぐれるんじゃねえぞ!またお前が拐かされるような事になりゃ、あのケダモノとババァが怒り狂って今度こそ街が更地になるぞ」


「う。わ、わかった・・・」


お母さんが怒ると恐いのは知ってるけど、グウィネスさんに関してはいまいち想像できないんだよね。

シグと拳で語り合えるぐらいだから喧嘩は強そうだけど、“殲滅”の異名を持つ魔女だと言われても、実感には到底至らない。


私が知ってるグウィネスさんは、面倒見が良くて食欲旺盛な美魔女で、根っからの研究オタク。

私の作った料理やお菓子を美味しそうに頬張る姿を見る限り、そんなに恐ろしい人には見えないんだけども。

とりあえず迷子になるのも拐われるのも御免だから、小判鮫のようにシグに引っ付いてる事にしよう。


陽が沈んでしばらくすると、広場のあちこちに台車に乗せられた奇妙な装置が運び込まれ、それぞれに技術者(?)とおぼしき人間が付きっきりで何やら作業を行い始めた。

広場で小耳に挟んだ情報によれば、それは複数の装置を同時に作動させて、空中に立体映像のようなものを展開させる魔道具なのだそうだ。


「いよいよかなー?」


ワクワクしながら完全に陽が暮れるのを待っていると、装置の調整をしていた人達が急に慌てふためいた様子で、何やら固まって相談をし始めた。




「・・・まずい、幻灯機のコアにヒビが入って使いもんにならねえ!」


「どうすんだこれ・・・。魔晶石いしをすげ替えても肝心の魔力がカラッポじゃ、ショーなんてとても・・・」


「毎年恒例のメインイベントなんだぞ!?これを目当てに他所から来る観光客もいるってのに、できませんでしたじゃ済まねえよ!」


「~~~これから急いで魔力持ちを呼び集めて、魔力充填をするしかねえ」


「無茶だ!何人もの魔力持ちが数ヶ月かけて魔力を溜めてやっと動く代物だぞ!」


「じゃあ!何もしないで指を咥えて見てりゃなんとかなるってのかよ!!」


「それはっ・・・」




何やら深刻な表情で話し合っているけど、祭りの喧騒の中で離れた場所の会話なんか聞こえるはずもない。

ただなんとなく、あまり喜ばしい事態じゃなさそうなのは雰囲気で伝わってくる。


そうこうしてるうちに方々から揃いの腕章をつけた人達がゾロゾロと集まり始め、彼等と言葉を交わしたかと思うと、皆一斉に真っ青になって頭を抱えだした。


━━━あれって、主催者うんえい側の人達かな?

・・・もしかしてかなり面倒な状況になってたりする?


「どうしちゃったのかな」


「さあなー?コアがどうとか言ってるが、俺にはサッパリわからん」


「耳、良いんだねシグ」


「獣人系の奴ならこのぐらいは普通だぜ」


何やら故障トラブルが発生したのは確実みたいだ。・・・楽しみにしてたのにどうなっちゃうんだろ。


━━━とか考えてたら。

頭を寄せ合って何事か相談しあう人垣の間から、見覚えのある人影がこっちに向かって駆け出して来るのが見えた。



「お嬢ーーー!!助けてえええええーーーーー!!」



見慣れたあの白黒茶の三色頭は━━━━━。


「ニアさん?」



なんとニアさんは建国祭おまつり運営委員会の若手メンバーの一員だったもよう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ