乙女時々熟女?
最近のシグは家を空ける事が多い。
家に居たからって何か役に立ってるわけじゃないから、別にいいんだけども。
だけど相変わらず私の一人歩きは認められていないから、転移の魔法陣で他所の街に行く用事がある時にとても不便。
わざわざグウィネスさんの手を煩わせるのもなんだし。
で。必然的に私はあまり家を出なくなって、家の中でできる作業に力を注いでいる。
━━━主に縫い物とか、縫い物とか、縫い物とか。
青空市で売るための加工食品作りもしてるけど、こっちは高確率で家主のお腹に収まる事が多い。
で、そのシグが家を空けて何処で何をしてるのかというと、山を降りてすぐの町で害獣駆除の狩人の真似事を始めたらしい。
冬山の狩りでシグが町に持ち込んだ獲物は、どれも一般の猟師が束になって挑んでも仕留めるのが難しい魔獣ばかりだったとかで、狩人組合のお偉いさんにその腕っぷしを買われて、一時的に害獣駆除の手伝いをする事になったんだって。
冬に食料が不足するのは人間も獣も同じ。毎年雪が降る頃になると、山から降りて家畜や人を襲う獣がいるそうで、特に群れで動く獣は厄介だと聞いている。
一冬で家畜を全滅させられた農場の例もあるとか。
ともかく、自宅警備すらマトモにこなしていなかったシグが、どうにか働く気を起こしたのは良い事だと思うんだけど、『今まで家の中でゴロゴロしてて邪魔だなぁ』と思ってた人間が急にいなくなると、それはそれでなんか物足りない気分になるのはなんでだろう。
「おう、いま帰ったぞー」
「・・・お帰り。今回は長かったのね?ご飯食にする?お風呂にする?それとも拳にする?」
「待て待て待て。最後のやつオカシイぞ!?」
「・・・・・」
十二月半ばのとある夕方。一週間振りにシグが出稼ぎから戻ってきた。
━━━またしても盛大に服を破いて。
「今度また服を駄目にしたら、三日間の生肉コースじゃ済まないわよって、言っといたわよね」
「うっ、だ・・駄目にはしてねえ!繕えばまだ着られる!」
「その!破れた服を!誰が繕う思ってんの!!」
「あ~~・・この小言を聞くと、『帰って来た』って気がするぜ・・・」
「ちっっっとも反省してないわねぇぇぇ
っ!!」
「反省するする!だから生肉は勘弁!━━━そうだ、今回は土産があるんだ!」
「お土産ぇぇぇ?ふうううううん?そんなもんじゃ誤魔化されないわよ!!」
「・・・なんだろね。この、薹が立った熟年夫婦みたいな会話は」
シグと私のやり取りを端で見ていたグウィネスさんが、何かをポソリと呟いてたみたいたけど、何を言ってたのかはよく聞き取れなかった。
「とにかく、洗濯するから服を脱いで。ついでにシャワー浴びてきたら?」
「おう、お前んちの風呂借りるぜ」
「脱いだ服はネットにいれといて」
「へいへい」
ゆったりと入浴を楽しむなら、母屋の大きなお風呂の方が断然良いだろうけど、汗を洗い流すだけなら別宅のユニットバスで充分事足りる。
私はシグをお風呂に追い立てておいて、晩御飯の献立の変更のために厨房に戻った。