プロローグ
シドネは自立した人間だ。
少なくとも、本人はそう信じて今日まで生きてきた。
ただ――その着地点が少々「血なまぐさかった」というだけで。
シドネ、数え十六歳。
職業≪執行人≫
それが、現在のシドネの肩書である。
世の中、大金を支払ってでも消えてもらったほうが世のため人のためとなるクズで溢れかえっているらしい。
執行人──国からの≪オーダー≫を遂行することで、多額の報酬を受け取る者。
シドネは自身の社会的役割に誇りのようなものを感じていた。
だが――最近、その信条が揺らぎつつある。
いくら理屈を並べようともシドネは立派な「ヒトゴロシ」だ。
とても昼の世界に顔向けできるような人間ではない。
そもそも、シドネがこの世界に身を置いた理由はなんだった?
金のためだ。生きるため。
そして、どうしようもなく、シドネはこの世界に向いていた。
つまり居心地が良かったのだ。
いつの間にかシドネの中では目的と動機がすり替わっていたらしい。
それに気が付いた今、もはやこの世界に居座り続けるしがらみはなくなったのだ。
だが、足元を見ろ。
足元どころか膝下まで血にどっぷり浸かっているではないか。
ちょっとやそっとじゃ、皮膚から染みついたこの鉄臭さは落ちはしない。
ああ、まどろっこしい。
ごちゃごちゃ考えるな。
柄でもない。
白状しよう。
執行人≪黒英≫は――血をすすぎたくなった。
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