表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/45

難問

『 1.彼から差し出された指輪を受け取ってあげましょう。 2.彼の愛の言葉にただ頷けばいいのです。 3.どうすればいいのかなんて、自分で考えなさい。 4.行くのはやめにしたらどうですか? 』

 汐羅せらは少し悩んだ。


 まず『 4.行くのはやめにしたらどうですか? 』は、ないだろう。そんな事をすれば、クラリスにとってのバッドエンドに直行してしまう。


 かと言って、『 3.どうすればいいのかなんて、自分で考えなさい。 』は、どうも投げやり気味だし、となると『 1.彼から差し出された指輪を受け取ってあげましょう。 』か、『 2.彼の愛の言葉にただ頷けばいいのです。 』のどちらかを選ぶのが正解となるはずだ。


 だが、汐羅せらにはこの二つは同じ意味合いに見えた。指輪をもらう事と、掛けられた言葉を肯定する事。確かに傍目から見れば別物の行為だが、ヘンドリックの愛を受け入れるという意味では、本質的には変わらない。もしかしたら、1番と2番のどちらを選んでも大した違いはないというパターンなのだろうか。


 そうは思ってみたものの、汐羅せらはこの選択肢にはまだ考察の余地があるような気がして仕方がなかった。これまでノートを何十ページと埋めながら二人の事について散々考えてきた自分の勘が、事はそう単純ではないと言っているのだ。汐羅が気付いていない決定的な違いが、『 1.彼から差し出された指輪を受け取ってあげましょう。 』と『 2.彼の愛の言葉にただ頷けばいいのです。 』の間にはあるのかもしれない。


 しかし、画面に浮かんでいる選択肢をいくら眺めて頭を捻っても、何も考え付かなかった。そこで汐羅せらは、1番と2番のそれぞれを選んだ場合の光景を思い浮かべる事で二つの違いを明確にして、考えをまとめやすくする事にした。


 まずは『 1.彼から差し出された指輪を受け取ってあげましょう。 』からだ。


 天上に満天の星が瞬く夜、静かな丘の上でクラリスとヘンドリックは向かい合って立っている。そんな中、ヘンドリックがそっと跪くのだ。そして懐から綺麗な小箱を出し、その蓋を開ける。中には、幼い頃に彼が作った赤いビーズの指輪が入っていた。


――クラリス、どうかこれを受け取ってほしい。

 ヘンドリックが熱っぽく囁く。クラリスは『はい』と返事しながら、その指輪を自身の手のひらにゆっくりと乗せた……。


 中々ロマンチックで悪くないシチュエーションではないだろうか。では、もう一つの選択肢はどうだろう。


 汐羅せらは、『 2.彼の愛の言葉にただ頷けばいいのです。 』を選んだ場合の事を考えた。


 天上に満天の星が瞬く夜、静かな丘の上でクラリスとヘンドリックは向かい合って立っている。そんな中、ヘンドリックがやおら口を開いた。


――クラリス、愛しているよ。

 ヘンドリックは情熱的な口調で続けた。


――小さい頃からずっと、君と結婚するのが夢だったんだ。どうか僕の花嫁になってくれないか。


 クラリスはその申し出に目を潤ませながら、感激のあまり声が詰まってしまったように首を小さく縦に振った……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 愛の言葉にうなずく… 「僕を愛しているから僕たちの仲を引き裂こうとしたに違いないんだ! あいらぶセーラせんせい!」 クラリス(こくこく) あかん
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ