『後輩の部屋』
後輩:年下。しかし年下だからと言って後輩とはならない。
「後輩よりも、断然妹キャラだよね! そして最終的には義妹よりも実妹だよね!
その方がユーザーも親近感あるし、なにより実妹だったら、例えメインヒロインと結ばれるルートに迷い込んでしまったとしても『えへへ、暇だから遊びに来たよ、お兄ちゃん』とか言っちゃってヒロインを苛める小姑として活躍でき、自分のルートに強制送還できる可能性あるもん!!
加えて人気投票ではきっと一位にお兄ちゃん、二位に実妹が名乗りを上げてくるはずだよ!
後輩だとルート突入後の追っかけは、もうれっきとしたストーカー行為だし、やっぱり実妹が最強だよ!
色んな作品でも存在感あるし!! 後輩よりタイトルを飾ることも多々あるし、なにより不特定多数じゃないからね!!」
「唾を飛ばすな、実妹。あといきなりの長文は萎える」
「そんな、唾だなんて。ヒロインはそんなもの出さないんだよ! っていうか、そもそも出ないの!」
「トイレ行かないアイドル理論か。だが、唾液はあったほうがマニアックな界隈から歓声があがるだろ」
「言われてみれば……! でも他の人にはあげたくない。だから私のDNA……お兄ちゃんになら、あげても、いいよ❤」
「あとで消毒しておくか。所詮は唾だし」
「そこまでっ?!」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「とにかく、今回は妹キャラの部屋じゃなくて後輩の部屋だ。誰しもが憧れを抱く後輩キャラについて語ろうと言う部屋だ。盛り上がってきたじゃないか。聖歌隊でも呼ぶか?」
「お兄ちゃん、随分とノリノリだね。でも、基本的に登場人物2人だから聖歌隊は実現不可能だよ」
「それくらいに盛り上がってきたってことだ。変な妹がいる兄にとっての唯一のオアシスが後輩キャラだからな」
「なんか今日、当たり強くない?」
「気のせいだ」
「でもでも、後輩と妹って似てるよね?」
「どこがだ。全然似てないだろ。後輩は天使、妹は悪魔なんだぞ。後輩は大勢から選べるが妹は選べないからな」
「すごく嫌な正論……まあ妹の方が勝ってるのは知ってるし、悔しくないもん。大体の作品で妹の人気は不動。それに対して後輩はキャラによって人気が分かれるし、ほとんどの恋愛ものでヒロインに主人公を取られて泣きをみる惨めな役割なんだよ、オッホッホ」
「血縁が無いから、後輩とは結婚できるぞ」
「妹も万事オーケーだよ! なんなら今すぐにでもしようか! 忙しくなるよ! 幸せの疲労だね!」
「いや、駄目だろ。それを許したら作品として最悪の展開である上に、他のヒロインが可哀相すぎて胸くそ悪い」
「ぷぷぷ。お兄ちゃんは勇気がないなぁ」
「(勇気とかそう言う問題ではない)」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「でも、私も後輩は憧れかも」
「さっきとは打って変わってどうした。熱でもあるのか?」
「だって、後輩がいたら直属のパシリにできるよ」
「……お前は、史上最悪な先輩として歴史に名を刻むことだろうな」
「じょ、冗談だよ! 私にはお兄ちゃんしかいないもん! むしろ、お兄ちゃん以外全員死んでも平気だよ! 全員死ねぇええええ! ひゃははははは!」
「そうか。でも俺は、そんな狂気的な妹はいらない」
「捨てないでぇ~~! 見捨てないでぇぇぇぇええ!」
「でも後輩なら楽に捨てられるってのはいいな。血縁が無い分、義務がない」
「……」
「嘘だ。だからそこまで引くな。お兄ちゃん好き好きキャラだろう?」
「引いてないよ。ようやく妹の素晴らしさを知ってくれたと思って感動して」
「俺はお前の感性に驚きっぱなしだよ」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「……しかし、お題が変わっても馬鹿みたいに脱線するのは悪い癖だな」
「いやいやいや、お兄ちゃんは悪くないよ」
「そうだな、悪いのはお前だ」
「ちょっと! 違うよ、お題の人だよ! この呼び方でなんとなく定着しつつある『お題の人』だよ!」
「ちょくちょく出てくるけど、結局お題の人って何者なんだ?」
「さあ?」
「……不思議なことに、それがあまり疑問に感じないんだよな」
「そうだね。ま、いつも通りこの部屋ではお題をこなせばいいんだもん。気軽にいこうよ」
「もしかして、お題の人は後輩かもしれないな」
「そ、その線は考えたことなかったかも。成程、後輩ってことは――」
「「パシリに使える」」
「……やっぱり兄妹だな、俺達」
「きゃはっ! お兄ちゃん好き好き!」
「近寄るな」
「お兄ちゃん、やっぱり機嫌悪い?」
「そんなことはない」




