『演歌の部屋』
演歌:日本の歌。
「はぁぁぁ~~~~」
「どうしたんだ。いつも以上に溜息ついて」
「今回、演歌の部屋でしょ?」
「そうだな」
「ついに、お兄ちゃんに私の歌唱力を見てもらうことになるんだなって思うと、嬉しくて」
「どうしてそこで溜息に発展するんだ。ちなみに、歌う必要はないらしい。カラオケセットが予算の都合上用意できなかったとかで」
「無能! 役立たず! 駄目ディレクター!」
「誰に向かって言ってんだ?」
「この部屋の創造主でしょ! 用意してくれなきゃ、キャラソンデビューが遠のいちゃう! 印税が遠のく! 両手放しの生活がああああああ!」
「印税はかなり魅力的だが……何を狙ってるんだ、お前は」
「宇宙アイドル?」
「雨中アイドル?」
「違う! 字が違う! ひどい変換ミスだよ! 雨の中のアイドルって売れそうにないよ! とてつもなく梅雨の季節に似合いそうだよ!」
「ありえるかもな。今はどんな形が顧客のヒットに繋がるのかわからないカオスな世間だ」
「お兄ちゃん、さすがに雨とアイドルは無理だよ。客席も雨だもん。アイドルの制服がレインコートなら、目の前に合羽軍団、もしくは傘がぶつかり合って諍いが起きるよ」
「なんか、果ては全面戦争に発展しそうで怖いな。合羽勢力と雨傘勢力か」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「……そ、そういえば、お兄ちゃんが歌ってる姿ってみたことないかも」
「俺は実に便利な歌えない設定だから」
「設定って……」
「お前のお兄ちゃん大好き設定と同じだ」
「設定じゃないもん! お兄ちゃん大好き結婚まで目前もしくは明日には結納しちゃうかもしれない本命でメインの絶対的ヒロイン、総選挙をやれば一位獲得間違いなしのチート系ヒロインなんだもん!」
「おい、余計なものを付け足すんじゃない」
「とりあえず、演歌トークでもする? お茶の間が盛り上がりそうだよ?」
「……凄いブチ込み方だが、まあいいか」
「演歌って言うと、こぶしだよね」
「あと、花吹雪だ」
「前口上!」
「……他は浮かばないな」
「わたし達、演歌、聞かないもんね」
「俺もテレビでたまに見るくらいか」
「演歌かぁ……」
「そういや演歌って、海外でも演歌って言うのか?」
「……テンプラ、スシ、みたいに?」
「そうそう。妹は管轄外、妹は変態、妹は頭のネジが飛んでる、みたいに」
「全然例えになってない上に妹をディスり過ぎだよ!」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「演歌……広がらないな」
「専門家を用意してもらわないと、私たちには無理だったね。私は演歌よりもお兄ちゃん専門だから、お兄ちゃんの部屋になった時は二十四時間語れるよ。朝から昼になってもお兄ちゃん、夕方を過ぎて夜になって深夜には……ぐふふふ」
「よし、その時は部屋の外にいてもらおう」
「ひどっ! でも、そんなお兄ちゃんもイイ!」
「重症だな。末期だな」
「演歌だけに?」
「いや、今回はうまくまとまらなかった」
「お後はよろしくないようで」




