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空明の再誕 - 生きる理由を取り戻すために  作者: 日和秋彦
第1章 - 空

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プロローグ

 家とはなんだろう。


 家とは温もりであり、誰かの気配であり、共に囲む食事であり、そして何よりも幸福だ。それらはすべて、他者と繋がるささやかな行動から生まれる。二人以上の間で交わされる振る舞いの連鎖が、時間をかけて心地よい空間を築き上げる。だが、どんな鎖もそうであるように、摩耗し、断ち切られることがある。


 この日になると、いつも顔に雨粒が落ちてくる。雨に濡れていくアスファルトの上を歩き続けた。寒さが骨の髄まで染み込んでくるが、文句を言いながら通り過ぎていく人々を横目に、ただ足を進める。


「最悪……」

 遠くで若い女が呟いていた。

「雨が降るって分かってたのに、なんで出かけちゃったんだろう」


 何度も人生を呪ってきた。論理的ではない。概念に直接話しかけることなどできないからだ。それでも、その思考は常に内側に残り、強くしがみつき、引き剥がそうとしても消えることを拒む。それに向き合うということは、決して答えなど得られないのだと受け入れることになり……それを受け入れることなど、不可能だった。


 強い者は、弱い者を守るために存在する。


 ああ……それはずっと昔に母さんが口にした言葉だ。死ぬ数ヶ月前、時間が冷え切り、日々が空虚に変わってしまう前のこと。

 母さんは目の前に立ち、明るい返事を期待するかのようにそう言った。

 会話のすべてを覚えているわけではないが、その言葉だけが今日に至るまで残っている。


 母さんの命令を文字通りに守り続けてきたのだから、きっと誇りに思ってくれるはずだ。


(誇りに思ってくれるか、母さん)


 深く息を吐いた。


 一体何をしているんだろう。分からない。

 よく考えてみれば、気にも留めていなかった。……間違っていたかと言われれば、そうだ。何度も間違いすぎた。


 母さんが今日まで自分を縛りつけることになるあの言葉を言い残し、その後に火事で両親を失ってから、人を救うようになった。


 正義の味方になるために。だが、単に救いたいという欲求からそうしていたわけではない。ヒーローでもなかった。ただ母さんに頼まれたからであり、どんな代償を払ってでもその約束を果たしたかったからだ。


 だって、よく考えてみれば……それに何の意味があったというのか。

 少なくとも、善良な弱者と悪辣な弱者の区別はつくようになった。


「ひどい雨だな……」別の誰かが愚痴をこぼしていた。


 名前はヒカリ。光という意味だが、その名にもう何の意味も残っていない。入ろうとする光をすべて飲み込む、ただの闇だ。

 なぜ両親が息子にそんな名前をつけるのが良いと思ったのかは分からないが、それに対してできることは何もなかった。


(その名前は、もうあの人たちとは何の関係もない)


 だから、昔から分かっているただ一つのことをやり続けるのが一番だった。


 ---


 昔から無口で真面目だったわけではない。


 子どもの頃は、決して落ち込むことも疲れることもない陽気な子どもだった。からかわれそうになっても、それに乗っかって相手の一歩先を行くような奴だった。


 あの火事が起きるまでは


 そして、そのすべてがめちゃくちゃになった。


「ヒカリくんはとても強い子ね……」人々は、その言葉の裏にある感情を理解せずに、強いと思い込む。なだめようとしてそう言う者もいるが、それが常に正しいとは限らない。むしろ、思っている以上に傷つくものだ。九歳になろうとする子どもは強さなんて望んでいない。ただ、両親にそばにいてほしいだけなのだから。


「もっと良い場所に行ったのよ……」大人たちの、もう一つの大きな嘘だ。死がより良い場所なわけがない。ここ、一緒にいる場所こそがそうだった。あっちの世界だか、どこへ行ってしまったのかは知らないが、そんな場所じゃない。


 息を吐き出した。


 どうでもいい。今はただ、いつものベンチに座って、雨の中に答えが見つかるのを待つしかない。


「母さん……母さんは誰だったんだ? なんで自分じゃなくて、母さんだったんだ? それに……なんで今になってこんなに苦しいんだ。もっと前じゃなくて……」


 誰に向かって話しているのかすら分からない。

 人生にか? 地面にか? 地球にか? 風にか? それとも……母さんにか?


 ---


 火事の後、孤児院に行き着いた。世話をしてくれる親戚なんていなかった。

 行き着く先には、凍えるほど冷たい部屋しかなかった。


「ヒカリ、あなたのベッドは奥よ」


 そのベッドに横たわり、ずっと天井を見つめていた。


「何を見ているの、ヒカリくん?」

 止める間もなく、母さんの声が頭の中に浮かび上がる。

「壁のシミを……」


 だが、もう返事はなかった。

 さっきのはただの記憶の中の声だ。次に何と言うかを聞くことはできない。


 母さんはよく、あの雲のゲームをして遊んでくれた。

 春になるたびに近くの公園へ行き、芝生の上に毛布を敷いて座り、雲を見上げながらそれが何を伝えようとしているのかを読み解こうとした。


「何を見ているの、ヒカリくん?」

「ドラゴン! すっごくおっきなドラゴンが見える!」

「そう? 何をしてるのかな?」

「お姫様を助けるために、お城に向かって飛んでるの!」

「そうね……」


 母さんは強く抱きしめてくれた。


「どれだけ自分が大きくても、一番小さな者を守らなきゃいけないからね。お母さんがあなたにするみたいに」


 母さんが微笑むと、自分も同じように微笑んだ。顔中が幸せで満たされる。

 目を輝かせて見つめると、ただ抱きしめて、そのままじっとしてくれた。まるでそれがご褒美であるかのように。


 でも、もういない。

 壁のシミは雲じゃない。

 もう二度と、何を見ているのかなんて誰も聞いてくれないし、気にも留めなかった。

 ただその空虚な記憶だけが残り、十八年間、何度も何度も繰り返されてきた。


 数年後、剣術を身につけた。

 誰かに教わったわけじゃない。

 ネットで見つけた情報と、木の棒だけを使った。

 驚いたことに、そして不幸なことに、かなり筋が良かった。

 守るというただ一つのことだけに集中すると、他のすべてが簡単になりすぎるのだ。

 自分が傷つこうが疲労困憊になろうが、自分のことなど一切気にしなくなるほどに。

 最悪なのは、決して本当の意味で疲れを感じられなかったことだ。それは、また別の理由によるものだった。


 それは数年前、雨の中を歩いていた時のことだ。肌に直接、奇妙なメッセージを受け取ったのを感じた。


 対話の試みから、あり得ないと思っていた能力が生まれる。


 元素を操れるようになった。いや、正確には、元素たちと対話し、望むことを命じる能力を得たのだ。


 まともな会話というわけではない。

「こんにちは」と言って返事が来るわけではなく、感覚を通してコミュニケーションを取るのだ。

 風は親愛を、水は浄化を、火は技巧を、そして土は堅牢さを提示してきた。


 それは心地悪く、不正確で、何より実行するのが決して簡単ではない対話だったが、それでも何年もうまくやってきた。


 そして今、雨が骨の髄まで染み込み、衣服を重くする中、残された願いはただ一つだけだった。


「もしもう一度チャンスがあるなら……この力をすべて引き換えにしてでも、もう一度母さんに会える方法があるなら……」


 猛スピードで走るトラックのタイヤが滑る音を聞き、言葉は喉の奥で消えた。


 暗闇の中、一台のトラックが二人の人影に向かって突っ込んでいた。

 男と、幼い少女。

 道の真ん中にいて、男が少女の足首を掴んでいる……。

 状況を理解しようとした時には、すでに身体が勝手に飛び出していた。


 空気抵抗をなくすために風を使い、弾き出されるように飛び出す。

 次に、速度を落とさないよう、目と足元から退くように水に伝えた。

 同時に、空気の波で自身を推進させる。


 だが、トラックはあまりにも近すぎた。

 もし今この力を使えば、通りにある無数の監視カメラに映ってしまうかもしれない。


 力を使うために手を伸ばしたが、思い留まった。

 だめだ。

 もしそんなことをすれば、間違いなく完全に人間ではなくなってしまう。物語が終わるまで研究され続ける実験動物となり、ただの調査記録に成り下がる。

 最初は英雄として見られるだろうが、やがてその英雄的行為も、この力も、恐怖の対象へと変わっていく……。

 そして、未知への恐怖こそが最も強い。


(弱い者を守るのよ、ヒカリ!)


 母さんの命令が、いつものように響いた。迷った時は頭の中にこれが現れ、ただ最も近い目標へと走る。だが、まさにそうしようとした瞬間、別の声が入り込んできた。


(生きろ! ただ存在するだけじゃない、精一杯生きるんだ!)


 なんだ、その言葉は……?

 覚えがない……。

 いや、待て……知っている……。


 くそ、父さんの言葉だ。

 その言葉を忘れて、ずっと母さんの言葉だけに従って生きてきたんだ。


「もう時間がない……もしかして……」


 もしこの人たちを救えたら、自分自身も救われるのだろうか。

 最後のコマンドを実行し、人生のプログラミングを終わらせる。救済を口実に、このすべてを終わらせるのだ。

 だからこれは、英雄的でも高潔でもない。最も利己的で、そして同時に、最も……人間らしい行いだった。


 トラックと少女の間に割って入る。

 一瞬、彼女の瞳の中に、母さんと同じ目を見た。

 衝撃を、すべての終わりを待った。もう何もかもが、どうでもよかった。

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