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ムサビとベムスターが好きだった叔父の物語  作者: 巳ノ星 壱果


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26話 にいちゃんの死化粧

 第26話  にいちゃんの死化粧


 にいちゃんが息を引き取った。


 それでも私は、

「にいちゃんは、まだこの世にいる」

 そう信じて疑わなかった。


 だってまだ、葬儀屋のお兄さんがにいちゃんを預かってくれていたから。


 私は一度家に帰り、喪服の準備をした。


 そして数日後、また、にいちゃんの元へ戻った。


 私は事前に、葬儀屋さんへお願いをしていた。


「最後の死化粧を、やらせてくれませんか?」葬儀屋さんは快く了承してくれた。



 エンゼルメイク。


 ナルシストなにいちゃんを、少しでもかっこよくしてあげたかったから。


 数日ぶりの、にいちゃんとの対面。


 前に会った時より、もっと冷たく、硬くなっていた。


 私は、にいちゃんの頬や頭をそっと触った。




 すると横で見ていた兄が、こう言った。



「死人には、どんな菌がついているかわからないから触るな」



 私は、その言葉に深く傷ついた。



 兄は病院勤務だから、人の死に目をたくさん見てきたのだろう。


 でも私にとって、にいちゃんは菌なんかじゃなかった。


 だから私は、そんな言葉を口にする兄が、やっぱり嫌いだと思った。


 プロのメイクさんみたいに、綺麗にはできなかった。


 それでも私は、少しでも血色よく、綺麗に、かっこよくしてあげたかった。




「いっちゃん、にいちゃんは顔は悪くないんだ」




 何度もそう言っていた、

 にいちゃんの言葉が頭に残っていたから。



 用意していたスケッチブックには、

 姪や甥、みんなでイラストを描いた。


 漫画家を目指していたにいちゃんにとって、

 スケッチブックは、きっと大切なものだったから。


 簡単なアニメのキャラクターしか描けなかったけれど、私は一生懸命、たくさんのイラストを描いた。


 にいちゃんは、アニメに囲まれて幸せな人生を歩んでいた。


 だから最期まで、大好きなアニメのキャラクターたちと一緒にいてほしかったのだ。




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