2
で、でたー!
急に声をかけられたせいで、驚いてマカロンの粉が気管に入ってむせる。
「ごほっ、ごほっ!」
「……大丈夫?」
「は、はひ、」
皇太子はすかさず私の背中をさすってくれた。うわ、恐れ多い。
まさかここで皇太子が現れるとは思ってなかった。皇女に引き合わせてくれて、そこで皇太子の役目は終わったと思ったから。
「お兄さま、来てくださったのね」
「うん。少し公爵たちとの話が長引いてしまった。ごめんね」
「いいえ。お茶会は、始まったばかりですわ」
皇女と皇太子。並ぶと一際眩しい。ロイヤルワールド全開だ。
私はなにを言っているのか。いや、言葉には出してないけど。
咳がおさまったので、私はようやく立ち上がって礼をとった。
「リーリア・エルディ、皇太子殿下へごあいさつ申し上げます」
「……楽にしていいよ」
あら?
それが少しだけふてくされたような声色に聞こえて、皇太子の顔を見ると、隣の皇女がまた吹き出した。
皇太子はなんともいえなさそうな顔である。
「ええと、皇女さま?」
「エルディ嬢……ううん、リーリアお姉さまと呼んでいいかしら?」
「えっ、いいんですか?」
「ふふっ、私がお願いしてるのよ」
「も、もちろん!光栄です!」
「ありがとう、リーリアお姉さま。私のことはセルシアってよんでね」
「……ありがとうございます、セルシア様!」
なんてかわいいのかしら!
前世、今世合わせても妹はいなかったから、私は嬉しくて浮かれた。
「……」
「お兄さまも、よかったら席に座ってくださいな」
そして、皇太子のことを忘れてた。
セルシアさまの呼びかけで、皇太子のことを思い出した私は、慌てて皇太子へ視線を向ける。
皇太子はちょっとだけ屈んで、私に視線を合わせた。
「あ、ああ……エルディ嬢、座ってもいいかな?」
「も、もちろんです!」
私の許可なんか別に気にしなくていいのに、皇太子は律儀に許可をとって私の隣に座った。
えっ、ここなの?と思ったけど、皇女の隣にはミレー夫人がいて、咄嗟に立ち上がろうとしてたけど、皇太子に止められて座り直してたから、座る場所は私の隣しかなかった。それは分かるけど。
なんか見定め第二段みたいで緊張する。まぁもう、皇女さまとは名前で呼び合う仲になったから、いくら皇太子でも私たちの仲は引き裂けないでしょうけど。多分。
「んふっ。リーリアお姉さま、こっちのおかしはお兄さまのお気に入りなのよ、食べてみて」
皇女が渡してきた皿には、ガトーショコラが乗っていた。
兄妹でチョコレートが好きなのかな。微笑ましくてちょっと笑ってしまう。
「……ありがとうございます。私も、ガトーショコラ好きなんです」
「ごほっ!」
今度は皇太子がむせたみたいだ。
「だ、大丈夫ですか?」
「いや、大丈夫!」
顔を覗き込むと、真っ赤になってる。いや、本当に大丈夫なの?
「ぶふっ、あはははは!」
皇女がまた吹き出した。
えっ。今のどこにそんな面白い要素が……?
「皇女殿下」
いや、嗜めてる体のミレー夫人だってやっぱり肩が震えてますけど。
皇太子殿下がむせたのが、そんなに面白かったのかしら。そんなわけないよね。
「これから楽しくなりそう。リーリアお姉さま。いつでも皇宮に遊びに来てね」
「は、はい……」
まぁ、ともかく。待望の女の子のお友だち第1号が(私の中で勝手に)出来たので、細かい事は気にしないことにして(王族か、兄妹の仲でしか分からないことがこの間に起きたのかもしれないし)私は勧められるままガトーショコラを口に入れたのだった。




