第33話 婚約者!?
朝6時、祐樹は学校へやってきた。
既にソラが来ていて何やら地面に線を引いている。
「おはよう!! 良く来てくれた、まぁ少し遅いが許そう。 これが台本だ、頭に入れてくれ」
渡された台本は辞書くらいの厚さがあった。
「あの、こんなに必要ですか?」
「必要だ!! いいか、朝から始まり帰るまで、更には帰った後のユウナへのメールまで記載してある」
自信ありげに言っているが祐樹は絶対に失敗すると思った。
「まずメールアドレス知らないんですけど……」
「知らないのか!?」
「えぇ……」
「誰かに聞けないのか!?」
「いやぁ……まーさんですかね?」
「……奴に聞くのは嫌だ!! じゃあ台本は書き直す!! いいか、前の方だけは覚えろ!!」
祐樹は渡された台本を読みながら悲しくなってきた。
朝からユウナさんに執拗に好きな人を聞きそこにソラが現れると紅くなると書いてあるがありえないと思った。
「できるか!?」
「えぇ……てかセリフこれだけですか!?」
「あぁ、後は立ち位置とか太陽の角度とかユウナの美しさを書いた!!」
「はぁ……」
マジで祐樹はこの場から逃げ出したかった。
「今回の報酬はゲームの詰め合わせでいいか?」
「はい!!」
祐樹はヤル気満々になった。
リハーサルは30回以上やらされた。
みんなの登校時間になり祐樹はスタンバイした。
そこにまーさんとユウナさんが歩いてきた。
「おはようございます。 あの、ユウナさん少しいいですか!?」
「おはよう。 えぇ、いいわよ。 何かしら?」
「あのですね……好きな人を聞きたいのですが?」
「私の!? ……いないわよ」
ユウナさんはそれだけ答えると足早に逃げ去ろうとした。
「あの、待って下さい!! まだ質問があります!!」
「なにかしら?」
「ソラさんの事どう思いますか?」
「そうね……強いて言うなら消えてほしいわね」
ユウナさんは察した様で強めの答えを言う。
そのタイミングでソラは現れたのだがユウナの言葉を聞くとものすごい速さで消えた。
祐樹はその時ソラが涙を流しているのを見た気がした。
「やっぱりアイツの仕業ね……うーん、祐樹くん、彼に私と真連が実は婚約者だと言っておいて。 それならもう関わらないと思うから」
「それは流石に酷すぎる気がしますが……」
「それくらい言わないとわからないのよ……卒業までに彼には私から離れて貰いたいの」
「なんで俺だよ」
「いいじゃない、文句ないでしょ?」
「奴が絡んでこなくなるならな……」
まーさんは観念したかの様に答える。
「じゃあ祐樹くん伝えておいてね」
ユウナさんはご機嫌でまーさんを連れて校舎に入っていった。
「探すか……学校は休めばいいか」
祐樹はソラが走り去った方向に向かって走った。
しばらく走ると河川敷にソラは座り込んでいた。
「あの……」
「お前か……俺はユウナに消えて欲しいと思われるほどテレビに出ていたのか?」
「え!?」
「やっぱりテレビに出たのは間違いなのか!? ユウナはテレビに出ている人の恋人にはなりたくないのか!?」
「あ、いえ……」
「それともあれか? 目立ちすぎるのが嫌なのか!? 美男美女だからな」
「そういう訳では……」
「なにか理由聞いたか?」
「えぇ……まーさんと婚約の約束をしているのでほかの男性とは交際出来ないみたいです……」
祐樹はしっかりと伝えた。
「やっぱり婚約していたのだな!! 真連が無理矢理させたんだろ!?」
「そういう訳ではないと思いますが……」
祐樹は頭のイカれている人間を間近で見て恐怖を覚える。
「ちょっといいか!! 話は聞かせて貰った」
つーさんがその場に現れる。
「誰だ? 」
「俺はさすらいの貴公子、司様だ!! 俺がお前に真実を教えてやるよ!!」
「真実だと!?」
「あぁ、ユウナはな真連にベタ惚れで彼を手に入れるために彼の父親と自分の母親を結婚させた女だ!!」
完全に嘘である。
「なぜ!? なぜ、真連なんだ!!」
「それはだな、奴には金がある!! ルックスも俺の次にいい!! そして何より彼は何も感じない!!」
「何!? 愛が無いとつまらないでは無いか!!」
「違うのだ!! ユウナはみんなに愛されている、その中で真連だけが彼女に興味を持たない!! つまり! 彼女は愛されるより愛したいんだ!!」
「なんだと!? ……そうか、そうとは知らずに僕は彼女に愛を与え続けていたのか……僕はこの先どうしたらいいのだ!?」
「まずは愛を与えない事から始めるんだな!! そして距離を置くんだ!! それがいい。 しかしアピールを忘れない為にテレビに出続けろ!!」
「はい!! 師匠!!」
「まずはここにサインをくれないか?」
「はい!!」
なにやら紙にソラはサインを書く。
「なんの紙ですか!?」
祐樹が言うとつーさんは睨みつける。
「次にここに印鑑を……持ってないよな?」
「持ってます!! ここでいいですか!?」
「あぁ、豪快に押してくれ、ユウナが喜ぶからな!!」
「はい!!」
ソラが印鑑を押すとつーさんは紙をしまう。
「よし、これで今から君は生まれ変わった真の男だ!! 頑張れよ」
「ありがとうございます!!」
ソラは頭を深々と下げる。
「祐樹、行くぞ」
つーさんに言われて祐樹はつーさんの後を追った。
河川敷から離れるとファミレスに入る。
「さっきなんのサイン貰ったんですか?」
「見たいか?」
「えぇ、ぜひ」
するとつーさんが取り出した紙には『誓約書』 と書かれていた。
「マジですか!?」
「あぁ、これで奴はユウナに近付けない」
つーさんは勝利を確信していた。
「でもこんな紙切れで何が出来るんですか?」
「大丈夫だ、署名をしたところに俺以外に証人もいる」
「僕ですか!?」
「あぁ、そうだ。 これでもうなにも怖くない!!」
「はぁ……」
つーさんのあくどいやり方に祐樹は呆れたがこれでユウナさんが救われるならいいかとも思えた。
「ところでカレンちゃんはいいんですか?」
「流石にヤバそうだから先に帰した」
「その方がいいですね」
その頃ソラは道場に顔を出した。
「師匠、俺は作戦を変えます!!」
「何!?」
「ユウナは真連にベタ惚れで婚約したみたいだが俺に惚れれば変わる!! 俺の作戦は愛を与えないだ!!」
「そうか、頑張れよ」
「あの……それフラれたって事じゃない? てか真連と婚約!? 私出かける!!」
聞いていた雪菜は道場を飛び出した。
「えっ!? フラれたんですか?」
「大丈夫だ、何とかなる」
2人はお互いに理解出来ずにいてとりあえず組み合うことにした。
ソラもやばい奴だな!!
ねー、マトモなのは私達だけね!!




