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33、ヨンデ到着

「ぶひ! 船長! あれは何です?」


 トンがドルートの頭の上で前方を指をさした。


「あれが目的地の……ヨンデ大陸だ!」

「ぶひ! 着いたです!?」


 出航から15日。

 予定より少し遅れてヨンデ大陸に到着。

 港町セイマに着岸した。


「いやあ、旦那の作ったマストは嵐でもびくともしなかったなあ」


 下船準備に入った水夫が船旅を振り返っていた。


「俺は教えただけで作ったのは船大工たちだ」

「サメの心臓も美味かった〜」

「お前らももう作れるだろう」

「はい! クラーケンの足焼きはもうゴメンだが……」


 水夫たちが笑い合う。


「魔王と私を倒した賢者よ」


 メコダの三人組ともお別れだ。


「もし、良ければ私たちと共に旅をしないか」

「剣士と賢者。最高のパーティになる」

「宝の情報を持ってるんだ」


 最後まで、うざい。


「行け。次に会ったら手加減なしで飛ばすぞ」

「はい!」

「はい!」

「もちろんです!」


 最後に屋台を船から降ろした。


「達者でな〜! 旦那〜!」

「いろいろ助かったぜ〜!」

「トンも元気でな〜!」

「風邪ひくなよ〜!」

「食われるなよ〜!」

「旦那、トンをよろしく〜!」

「トン、船に残れよ〜!」

「寂しくなるぜ!」


 船の上から水夫たちが見送る。

 心なしか俺よりトンへの声援が多い気がするが。


「てめえら! まだ仕事が残ってるぞ!」


 ドルートの一喝で水夫たちが散り散りになった。


 結局、ドルートとは別れの言葉を交わさなかった。

 今もこっちに背中を向けている。

 

「船長いないです」

「お前、あんな奴のどこが良かったんだ?」

「バカ賢者様に似てるです」

「おいおい、魔王に続いて、あの傲慢ジジイともか?」

「ぶひ」


 やっぱりオークだな。

 人間を分かっていない。


「船長はふざけるなって言ってたです」


 あいつの方から言われると腹が立つな……。


「トンがバカ賢者様の面倒を見るです」

「ん?」

「船長が言ったです」

「トンに俺の面倒を見ろと?」

「あいつはセキニンカンが無駄につよすぎる」

「……」

「って言ってたです」


 船を振り返った。

 ドルートはこちらに背中を向けたままだ。


「ふん、不愛想な野郎だ」

「トンがバカ賢者様の面倒を見るです」

「はいはい、そりゃ頼もしいや」


 俺はトンと屋台に乗りこんだ。

 セイマの街中を走らせる。



 やはりヨンデまで来るとトンを恐れる人間はいない。

 奇異な目では見られるが敵視はしないようだ。


「ソーヤさん?」


 唐突に女から声を掛けられた。

 馬を停めて振り返る。


「……ケリン?」


 その女はちょうど路地から出てきたところだった。

 勇者パーティの一人。

 薬師のケリン。


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