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31、巨大な非常食

 クラーケンと嵐の襲来を乗り越えた。

 が、乗員のダメージは大きい。


 空腹による衰弱もピークに達している。


「だから、これを食いまーす」


 俺の提案にさすがの船乗りたちもポカンとする。


「やっぱり、クラーケンを……食うんですかい?」

「他に食えるものはないだろう」

「そりゃ、そうですが……」

「てか、そのために足だけ残したんだよ」


 甲板にはクラーケンの巨大な足が横たわっている。

 足一本でも相当な量だ。


「まあ、イカといえばイカだけどなあ……」


 少しずつ解け始めたクラーケンの足を見ながらドルートが呟いた。


「この状況で食材を選んでる余裕はねえだろ」

「そうだな」

「ぼやぼやしてると腐っちまう」

「よし、こいつを料理してくれ」


 ドルートの一声で皆の心は決まった。

 俺は不安そうな乗員たちを見渡す。


「では、一応聞くが……焼くか、生がいいか?」

「焼いてくださいぃぃ!」


 乗員の満場一致で焼きイカに決定。

 生でもイケると思うんだが。

 

 クラーケンの足を適度な大きさに切る。

 量が多いので火球で一気に焼こう。


 重力渦を調整しながら、空中にイカ足を浮かべ、いくつもの火球であぶる。

 火が通ったところで乗員全員に切り分けた。


 調味料は海水から作った塩だけだが、贅沢は言ってられない。

 


「うめえぇぇぇ!」

「あの悪魔が、こんなに美味かったのかぁぁぁ!」


 食べた水夫たちが感動で泣いている。

 味はそれほどでもないが、空腹は何よりの調味料だ。


「ぶひ! おいしいですぅぅ!」


 船倉でも泣きながら食べている奴がいた。


「あまり一気に食うと、喉につまるぞ」

「ぶひ」


 クラーケンを倒してから、魚も戻ってきた。

 サメの心臓は乗客たちにも好評だった。


「なんとか一安心てところだな」


 ドルートが舵を握りながら安堵の表情を浮かべる。


「水と食料の問題がクリアできたのは大きい」

「料理長が優秀で良かっただろ」

「ふん、どうしてもと言うなら復路も雇ってやるぞ」

「御免だ。ヨンデで別を探せ」

「バカめ。これから定期船は儲かる。応募者も多いんだぞ」


 ヨンデ到着まで、あと5日。

 このまま無事に航海を終えられる。

 

 俺は少し油断していた。


「ところで……」


 ふとドルートの目つきが変わった。


「賢者、お前……船倉に何を隠している?」

「……!」


 トンのことか?

 ドルートに気づかれた?


「……隠してるだと? 何を?」

「誤魔化すな」

「はっきり言えよ」


 カマをかけているのかもしれない。

 とりあえず、シラを切る。


「クラーケンが最初に襲ってきたとき」

「……」

「船倉で見たんだよ」

「……」

「小っちぇえ、オークをな」


 あの時、やはり見つかっていたか……。


「ぶひぃぃ!」

「船長! 捕まえやした!」


 船倉からトンを抱えた水夫が出てきた。


「てめえ、オレの船にオークを乗せてやがったな……」


 ドルートの目には怒りがこもっていた。



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