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Precious Orb - 宝珠の庭 -  作者: 赤月はる
僕らの野望
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運動だぜヒャッホイ… sideスザク

  





昼飯時になって、俺はマルセルたちと生徒用食堂へ向かった。なるべくたくさん同期で友達作るぜって思ってたから、さっき接触しなかった女の子たちにも話しかけたぞ。ヘルゲのおかげで魔法は強いのが撃てるけど学舎のことなんにも知らないからよろしくなって言ったら、数人は落ち着いて話せる子がいることもわかった。


でもタイプ別区分の話をしてた子たちはなんだか落ち込んでて、あまり話そうとしてくれなかったけどな。それにマルセルが「今はそっとしといてやれ」とか言う意味もわかんなかったけどな。


「お、スザク!さっそく友達できてるじゃーん」


「当然だぜルカ、俺の同期はみんないいやつばっかだ」


「あはは!そりゃよかった~。じゃあね、僕イザークたちと食べてるから」


にこにこと笑って、イザークとルッツの方へ行くルカはほんとに楽しそうだ。ライノの経験会議でここ数年の留学事情を見た限り、ほんとにあの二人の友人はいいやつだ。ルカが夢中になるのもよくわかるぜ。俺もこの一か月の間にイザークたちへ紹介してもらうつもりなんだ、大事な兄貴の親友だからな。


しっかしまァ…レティとクレアに聞いてた通りだな。

ルカは持ち前の忍耐強さと優しさで、男女問わず人気がある。あの地下室隔離の半年間からこっち、なぜか髪をずっと伸ばしているルカはもう背中の真ん中くらいまである長髪を一括りにしている。前髪も一緒に伸びてるからもうデコ丸出しにはなってないけどよ、モノクルに長髪、母ちゃん譲りのでっかい青紫の目、陽だまりみたいにいつもニコニコ笑ってるルカを慕うやつはすげえ多い。はっきり言って超目立ってる。


まあ慕いたくなるのもわかるけどな。ちっちぇー頃から俺たちのお守りで苦労してっから、ちょっとやそっとじゃ動じないし。ただ、ルカはミッションモードになると別人みたくなるからなー。めっちゃ怖えからなー。あいつ未だに自分のことを「僕は甘いから、厳しくできないよ」なんて言うけど、不可視のマナを使ってる時は軍隊司令官ばりだから。





マルセルたちも「ルカって優しいよな、一緒に学舎へ来る年下の面倒よく見るし」と言ってて、当然のように好印象だ。さすが兄貴。


「な、なあスザク。お前、俺らがみんないいやつだと思ってるのか」


「んあ?当たり前じゃん。普通一か月しかいないやつにここまですんなり仲良くなってくれるか?緑青の街へ行った時なんて、最初はみんな自分の研究に没頭してて顔もろくに上げてくんなかったぞ。さすが白縹だよな、居心地いいぜ」


「そ、そうかぁ?……お前、ストレートすぎじゃね?なんか照れるんだけどよ」


「ホントのこと言って何が悪いよ?俺はお前らみんな好きだぞ」


一緒のテーブルにいたマルセルたち数人は、なぜか顔を赤らめて俺のトレイに自分のから揚げとかデザートとかを「まあ食え」と言いながら一つずつ乗せていく。

こんなに食えねえよ、どうしたんだお前ら…





*****





学科はまあ散々みんなの失敗談を聞いてるからな、おとなしくしといたぜ?クレアにもレクチャー受けて、高等学舎以上で習う公式も使わねえ。先生が「こういう混成魔法研究の話は、中央で聞いたことある?」なんて探りを入れてきても「いやぁ~、俺は親父の使うやつしか見たことねえっす。勉強不足ですんません」なんて言ったりしてな。どーよ、完璧じゃね?


だが、問題は運動の時間に起きた。


「よーし、じゃあ今日は棒術の型から始めるぞ。あ、スザクはどうする?型はどこまで習った?」


「あ、親父に一通りは…たぶんできるっす」


「そうか、なら一緒にやれるな!全員プロテクターつけろよー」


…うん、別に棒術の型に差はないよな?

そんな風に思いながらプロテクターをつける。

全員が準備できたところで先生が「こじり上段、下の構え!」「上段横面打ち!」と号令をかけていく。よしよし、俺が知ってるのと同じだ。ちゃんとついていけるぜ。


「よーっし、じゃあ乱取りな!…あ、スザクは俺とやろう!」


「はい!?先生と乱取りっすか?」


「ふっふっふー、オスカーとユッテから聞いてるよ?スザクは合気杖と空手に適性アリってね~。見せてくれよ~」


うぐぁ…っ

そういやこの先生、ニコルたちの同期だって言ってた!

余計なこといいやがって!


「…お手柔らかにお願いしまっす…」


項垂れて、一礼。構えていると、けっこうな闘気をぶちまけてニヤッと笑う先生と目が合った。うはー、やめろよほんと。オスカーを相手にしてる感覚でやるしかねえなって思って、俺もちょっと気合入った。


調息しながら、速攻で仕留めないと散々打ちこまれてから杖を巻き取られるなって予感で毛が逆立った。くっそ、きっとこの先生もニコルっていう宝玉がいた影響で体術が開花したクチなんじゃねえの?ヴァイスの兵士みてえな闘気出しやがって~…!


「始め!」


「フゥ…ッ!」「―…シッ!」


先生も連打狙いだろ、いきなり俺の膝を狙ってきやがった。「カドを打て」ってやつだな、そうはいくかよ!


払った瞬間に側頭部への打ち込みが入るはずだと思い、すぱっと体を沈めた。案の定空振りをした先生は返す杖で肩を狙う。わかってんよ!


俺は立ち上がりざまに先生の左腰を力いっぱい横打ちし、怯んだ瞬間に右の裏胴うらどうを打ち込んだ。掃腿で転ばせて喉元へ寸止めで突き入れる。


「一本!」


サポートについて審判をしていたもう一人の先生が止めに入り、ぶっはー!と息を吐いた。ふいー、あっぶねぇぇ。先生、側頭部の打ち込みが鋭いっつの。カミルにやられたことあるけど、アレまじでしばらく立てなくなっからやめてくれ。


一礼して「イテテ」なんていう先生に「すんません、闘気ぱねぇから怖くなっちまって」と謝った。すると先生は「猫なんてかぶらせないぞースザクぅ。お前一か月、乱取り全部俺が相手な?いーい練習相手が来たわー」と言ってすげえ笑顔になった。…やべぇのに目をつけられた。


汗をダラダラ流しながらプロテクターを外すと、マルセルたちがタオルを持ってきてくれた。他のやつらはみんな乱取りもせずに俺と先生のを見ていたらしい。


「先生、ずりぃよ!俺らだってスザクとやりたい!」


「そーだよ!」


なんかみんながブーブーと文句を言い出し、先生は「お前ら放課後にやりゃいいだろ!俺は授業中しか乱取りできないじゃんか!」と叫んだ。その主張はどうかと思うぜ、先生。俺も身がもたねーよ。


しっかしこの先生、ヴァイスの兄ちゃんたちと張れるかもしんねえ。何モンだよ。


「そういや先生、ニコ…えーと、おふくろの同期なんだろ?」


「おう」


「名前なんてーの?」


「エゴンだよ!なんだ、ニコルのやつ言ってなかったのか」


「なんにも?」


「ンだよー、濁り玉の件まだ根に持ってんのかなー。俺は四年前まで境界警備隊にいたんだけどさ、その頃お前の親父とオスカーたちが特別授業カマしたろ?そしたら生徒からもっと運動のレベル上げろって要望が出て、教師が増員されたんだ。んで俺は適性あったからこっちに転職したってわけ。ニコルたちにも通信で話してあったんだぜ?」


「へー、じゃあコテンパンにしたったぞって報告してもいい?」


「くっそー、勝手にしろよ。一か月の間に負かしてやっからなー」


「うえぇぇ…」


俺はエゴン先生にすっかりロックオンされたらしい。

しょうがねえ、運動の授業はがんばるかと思いながら振り向いてみたら。


カラフルな、たくさんの結晶の瞳が爛々と光って俺を見ていた。


『スザク!放課後なッ!!』


「うえええぇぇぇぇぇ!?」


――俺は非常にハードな学舎生活へと突入することになった。





  

エゴン先生は高等学舎の頃に、ニコルへ「濁り玉」と悪口を言った彼です。

ニコル・ユッテ・アルマの三人に「エゴンにドゴン作戦」という制裁を受けてから仲直りし、境界警備隊でシゴかれ、人間的には丸くなりました。

もともと修練や運動に熱心すぎて、生真面目だった彼の黒歴史です(´∀`)

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