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Precious Orb - 宝珠の庭 -  作者: 赤月はる
僕らの野望
73/103

留学だぜヒャッホイ sideスザク

  




キタ。

俺が白縹の学舎へデビュウしちゃう日がやってきた。


なんだかルカもレティも石像みたいに白い顔色だったしよー、ライノとレイノは学舎で無駄にモテまくったってのを見せて「そんなイイもんでもねえよ」とか脅すしよー、ニーナとノーラも「先入観ってなかなか払拭できないね」とか達観してるしよー。


その点ウゲツとアオイは「魔法能力に関してみんなの興味を満たしてあげちゃえば、納得して静かになったよ?」とか余裕だ。


クレアとレビは「私たちでも構築できないミッションというものは存在します。スザクを一般的な白縹と認識させるだなんて、ウゲツの心理魔法で洗脳する以外に道はないですから」とか言いやがった。お前ら見てろよ、友達ガッツリ作って度胆抜いたらぁ。




今回俺と一緒の留学期間になったのはルカとクレアだ。ルカめ、「貧乏クジ引いた」とか言いやがって。うぉいシノノメ、まじで頼むぜ。学舎にいる間はダイヤ封印だからよ。


『アホか、儂に頼るんじゃねえ』


ンだよ、制御にばっかし気を使ってたら友達千人が遠のくだろ。協力してくれよ!


『しょーもねえ餓鬼だな、それくらい自然にできなくてどーすんだ』


んじゃリンクにもうちょい詳しい制御方法教えろって言ってくれ。


『あいつらは儂と違う次元にいる。宝珠の集合体には干渉できんと何度言えばわかる』


くっそー。

まあいいや、魔法撃つ時だけはがっつり集中すっか。


シノノメはガードの爺さんらしいが、「同窓会」まではガードのことは話さないと言って何も教えてくれない。ちなみにウゲツの影が五体も出せるのになぜ同窓会が開催されていないかと言うと、ガードがシノノメたちの気配を察すると実体化を拒否るからだ。


なのでいまウゲツは「拒否権ナシの影縛り」ができるように練習中なんだな。そこまでして同窓会しなくてもいいじゃんかと思うけど、スイゲツとライシャとシノノメは是が非でもガードをとっちめたいらしい。トクサはそこまでガードを吊し上げたいわけじゃないけど、『完熟トマト大量虐殺事件だけはちょっと文句言ってもいいかもね』とアオイを震え上がらせる気配を撒き散らしたようだ。


まあそんな感じなんだけどな、いまは学舎!

待ってろよ、仲間たち!





*****





「はーい、みんな静かにね!じゃあ自己紹介してくれる?」


「うっす、スザク・白縹っす。よろしくお願いしまっす」


「……えっと、それだけでいいの?」


「んあ?他になんか言った方がいいっすか」


「えーと、ご両親のこととか?」


「 ? 父も母も軍属なんで中央に住んでるっす」


グレーテ先生っつー現代社会の先生が俺をみんなに紹介してくれてるんだけどよ。なんか俺の自己紹介に物足りなさそうな顔してんだよな。俺、何か言い忘れてるか?


「ま、まあいいわ。みんな知ってると思うけど、以前何度かこちらに来たライノとレイノ、ニーナとノーラを覚えてるでしょう?スザクは彼らと一緒に育ってるんですって。同じ白縹の兄弟ですから、仲良くしましょう」


みんなはハーイなんて返事をして、口々に「んじゃ基礎修練行こうぜ」と言って修練場へ一緒に行ってくれた。なんだよレイノのやつ、散々脅しやがって。みんないい奴らじゃねえか。


――ところが基礎修練が終わった時に、俺はわけのわからない質問攻めにあった。


「ねえねえ、スザクって背が高いのね!かっこいい!」


「お父さんてあの紅玉のヘルゲさんなんでしょ?お父さんもハンサムだもんね」


「どんな女の子のタイプが好きなの?」


なんだこりゃ。女の子のタイプって何なんだ。特化型魔法使いとか精霊魔法使いとかユニーク魔法保持者かとか、そういうことか?ンなの好みってあんのかよ。背が高いとかっこいい??なんだよヴァイスにゃカイくらいデケェ筋肉男は山ほどいるぞ?ヘルゲがハンサム?ンなのシラネ、親父がハンサムだろうが俺に何の関係があるんだ?


いや、友達千人計画のためにはこの試練を越えなきゃいけねえんじゃねえのか?ここで「わけわかんね」とか言い放つとレティのハイカーボン鋼ソードで服をトイレらくらく仕様にされちまうんだろ?くそう、何が正解かわからんが…何か言わないとマズそうだ。


「……魔法、できるやつ?」


「きゃああ、じゃあ瞳の透明度が高くて魔法威力のある子が好みなのね!」


「……えーと、そりゃ、その方がカッケェかもな…?」


魔法ができない白縹っているのか?生活魔法くらいなら誰でもできるだろうがよ。少なくとも俺は生活魔法を扱えないやつってのは緑青でも金糸雀でも聞いたことねえんだけど。


まあとにかく女の子たちはそれで満足してくれたみたいで、包囲網を解いてくれた。一体何が起こったんだか。あー驚いた。


「スザク、偉いなお前。ああいうの見てドン引きせずに対応とか、さすがに修練できてんだなー」


「俺が?修練デキてる??そう見えんのか」


「そりゃそうだ、ライノとレイノなんて吐きそうな顔してたぞ?」


「え、そうだったか?つーか今の質問、ほとんど何言われてるか理解できなかったけどよ…」


「……え?」


「だって女の子にタイプ別区分があるなんて、初めて聞いたぜ?そんな分類聞いたことねえもん」


「ぶっふぁ!ぎゃーっはっは!スザクおもしれぇぇぇ!それであの回答なのかよ!てことは、魔法ができるやつって言ったそのココロは?」


「たぶん生活魔法くらいなら誰でもできるだろうから、男も女もその区分には入るんじゃねえかな、と」


「ひー、ハラ痛ぇぇぇ!それほぼ全国民が入るってことじゃんか、区分になってねえよ!」


「だよなー?それで納得するんだなって、ちょっと不思議な気持ちになったぜ、俺」


ポカンとしながら俺が話す内容に大爆笑しているこいつは、名前をマルセルと言った。一応自己紹介されるまで知らないフリしといたけど、ライノとレイノが女の子に辟易していた時に「運動しながら話そうぜ」と誘って助けてくれたやつだというのを俺は知っている。


だから自己紹介された瞬間から、俺は絶対マルセルと仲良くなろうと思ったくらいだ。気持ちよく話せるやつってのはありがてえよ。


そんなわけでマルセルとべちゃくちゃしゃべりながら応用修練場へ着いた。するとそこには、なぜか気合が入りまくってボンボンと魔法を撃つ数人の女の子の姿があった。俺が応用修練場へ入った時には教導師が「あなたたち、順番通りに撃ちなさい!何やってるの!」とか叱ってたけどな。


それを見てマルセルは肩を震わせて笑ってるし、何が何だかわかんねえ。その女の子たちは「ちょ、もっとやらせてくださいー!」とか言ってはポヒュッと火球を撃ったり石礫を撃ったりする。そして撃った後でなぜか俺の方を見てはドヤ顔するんだが。また何かタイプ別区分の話でもされたら、今度こそボロが出そうでヤバい。


だから笑いをこらえて死にそうな顔色になってるマルセルに「おい、あいつら何で撃つ度に俺を見るんだよ?教導師は逆方向にいるじゃねえか、俺はどうすりゃいいんだ?ナイス魔法とでも言えばいいのか」と聞いた。


その瞬間にブッハァァァァ!と盛大に吹き出したマルセルは「まじめにやんなさい」と教導師に叱られた。うん、マルセルもけっこうアホだ。俺と気が合いそう。


「えーっと、次はスザクね。一応聞くけど、もしかして大規模魔法が撃てる?」


「あー、はい」


全員がギョッとした顔で俺を見た。

これはクレアにも言われてたから心の準備はできてる。いくら俺がダイヤの制御を覚えたとしても、その抑えた威力でさえ高等学舎の生徒を上回る。ここはもう開き直って、全部ヘルゲのせいにしちまえ、と。


「やっぱりね、ハンナ先生から言われてたから。大規模魔法用の結界準備しててよかったわ」


「すんません、気ィつかってもらっちゃって」


「いいのよー、両親があの二人じゃね。規格外だろうからって言われてたのよ。みんなもスザクの魔法見ても落ち込んだりしないのよ?彼はお父さんから直接指導されてるそうだから」


教導師が大規模魔法用の結界を張り、その強度を見てちょっとビビった。やべえ、結界が思ったより薄い。くあー、こりゃ火属性は絶対使えねえな。だが無情にも教導師は「じゃあ見やすいから火属性か水属性出してくれる?」とのたまった。


うーわー、津波出したらダイヤなしでもニブルヘイムになるだろうし。業火を出したら地面がガラス化するだろうし。んでたぶんどっちも結界ブチ壊して応用修練場壊すよなあ…


「あー、先生。範囲魔法じゃなくてホーミングバレットで出していいっすか」


「……もしかして両方できるの?」


「できるんスけど、俺は範囲設定苦手なんす。焔矢ほむらのやでいいっすか」


「そ、そう。いいわよ、それでやってくれる?」


範囲設定苦手って言っとけば回避できるかもってレビが言ってた通りだ。さすがウチのブレーン二人は頼りになるなー!


「んじゃいきまーす」


ダイヤを慎重に意識から外す。マナを反射増幅させる道筋から丁寧にダイヤだけを避けて…抑えろ、抑えろ。めっちゃ抑えて、丁寧に、少しだけ錬成。


収束も抑えろ。そっと、丁寧に。


よし、これ以下は無理。

――放出。



ぶわっ

ィィィィン…

キュドッ!




ドガガガガガガガガ!





ふううう、よっしゃ!ここ最近でも最弱のやつが撃てたんじゃね?

結界も無事だし、地面に「スザク」って炎の矢で書けたし。

ちっと火柱あがっちゃってるけど、天井まで届いてないし。

俺、超がんばった…ッ!


くるっと振り向くと、同期のやつらは目玉が飛び出そうな顔してた。

さっきドヤ顔で俺を見てた数人の女の子は項垂れて地面を見ている。

マルセルはその子たちを見て、また肩を震わせてた。

それに教導師の先生、アゴ落ちてんだけど。


「……あー、すんません。火柱上げちゃいけなかったっすか…」


それを聞いた瞬間、マルセルが「問題点はソコじゃねぇし…ッ!!」と我慢できずに爆笑しやがった。でも教導師はもうマルセルを叱らなかった。

なんでだぁ…?








  

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