表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Precious Orb - 宝珠の庭 -  作者: 赤月はる
僕らの野望
72/103

洗礼を受けた彼ら sideルカ

  





学舎への留学で、一番変化があったのは双子二組だ。今まで白縹の双子と言えばカイとカミルしか存在せず、人工子宮生まれオンリーだった頃は七百年間で唯一生まれた双子というレア中のレアだ。


その二人の子供がこれまた双子。ちなみに両親持ちの子供が増えた現在でも、彼ら以外の双子は生まれていない。なのでみんなが珍しがっちゃってもう…


せっかく猫の庭で珍獣から怪獣へ昇格(?)したっていうのに、学舎では珍獣に逆戻り。しかも二組ともミラー・ツインと呼ばれる、左右対称の鏡像みたいな見た目なもんだからさあ。それにオッドアイなんて白縹じゃ初めてなんじゃないかな。


まあ一般に知られていないだけで、カイとカミルもアレキサンドライトっていう超珍しい瞳を持ってるんだけどね。共鳴の魔法を行使すると、カイとカミルはお互いの瞳の色が目まぐるしく入れ変わっちゃうんだ。


そんなわけで、二組の双子はちょっとひねくれた。

ひねくれたなんて言うと性格が悪くなっちゃったみたいだけど、猫の庭では普通だよ?でも学舎では四人全員が、まるでノーラみたいにしゃべらなくなっちゃったんだよ。




ニーナとノーラは性格がまったく違う。いくら見た目がそっくりでも、少し話せばその違いは明確だし、好みの服装だって全然タイプが違うんだからわかりそうなもんだ。だけど物珍しさだけでみんなが「そっくりー!」と言い、彼女たちにシンクロした言動を期待する視線の多さに辟易しちゃったらしい。


ニーナが「私たち、違う個人だもん。仲のいい姉妹っていうだけだよ、みんなと同じ」と言うと、「えー!でも双子って同じような行動するもんじゃないの?」と図書館でちょっとかじった知識から決め付けた子がいた。


それに科学的・医学的根拠で反論してやり込めようと憤慨したものの、彼女たちは自分らが「規格外」だということに思い至り、押し黙ってしまったわけ。


――まあ、仕方ない部分もあるとは思う。あまりにも珍しい双子だし、宝玉・宝珠組以外の僕らは白縹の基準に比べても精神年齢が異様に高い。だから「この子たちに合わせてあげるのが正解」と思って、ニーナとノーラは左右対称に同じ動きをしてはみんなの気が済むまで珍しがられてあげている。


それに彼女たちはユニーク能力にかなり特化しているので、攻撃魔法の威力がそんなに高くない。一応ユニークに関しては少々珍しい「麻痺毒」と「麻痺解除血清」が作れますっていうことだけを公開している。


体術もまあまあ(本当はアルマ先生譲りの隠密系の才能がすごい。でもそれ言っちゃヤバいので、言わない)という彼女たちが将来軍属になっても怪しまれないためには、特殊魔法が軍に有用なのだということを印象付けた方が得策だからね。





そしてライノとレイノだ。彼らも同じように珍しがられてはいたけど、元々が似た性格の二人。特にニーナたちのように違いを強調してはいなかったので、間違われても気にしていなかった。


ところが、女の子っていうのは何と言うか、おませさんが多いって言っちゃっていいのかな。カイとカミルにそっくりな見た目のこの二人は大モテ男になっちゃったんだよ。


数人の女の子から猛アタックを受け、二人は今まで見たこともないほどげっそりした。だってスザクみたいに友達たくさん作ってみんなで遊ぼうぜ!っていうのが楽しいと思ってるのに、男の子たちとゲラゲラ笑って遊んでても数人の女の子が瞳を潤ませて割って入ってくる。


別に女の子が入ってきても、それがユッテ先生くらいサッパリ話せる子なら楽しくやれる。でもそうじゃない子ばっかりが話に入って来るので、楽しい話が一気に失速してつまらなくなってしまう。


男の子たちはそんなライノとレイノを気の毒に思いながらも、空気を読もうともしない女の子に「あんたらジャマ」みたいな目で見られては撤退せざるを得ない。


でも運動の得意な男の子がこっそり二人へ「休み時間と放課後はさ、外とか訓練場で動き回るってのはどうだ?それならあいつらジャマしにこねえよ」と提案。二人は「ありがてぇ」とその案に乗り、軽い組手をしながらみんなとしゃべるようになった。





*****





中等一年組の三人は、なかなかうまく溶け込めたと思う。


レビは白縹なのに初めて魔法部への進路を勝ち取った麒麟児・アルノルトと、諸外国にまでその名を轟かせる方陣研究家・フィーネの息子ってことですごい注目度だった。


マナ・グラスがすっかり普及していることもあり、マナの「キラキラ」を日常的に見ているレビに「コツを教えて!」などと無茶を言う弟子入り志願者が殺到したみたい。


でもレビは「そんないいことばっかりでもないよ~?俺は方陣の保持や展開が得意だってだけで、攻撃魔法は全然みんなに敵わないもん。やっぱ白縹なら大規模魔法じゃん?俺の方が君らに弟子入りしたいよー」と、さすがの言い回しでみんなを納得させて落ち着いた日常をゲット。もちろんすでにマギ言語を自在に操れるなどとは億尾にも出さない。




ウゲツはレティ信者に影から保護されて、最初からそんなに波風は立たなかった。でも精霊魔法使いとレアユニ保持者のコンボってとこで相当驚かれていたね。母親譲りの「幻影」使いです、でも一体しか出せません、なんて言って自分の「影」を出し、しゃべらせずにニコニコさせていた。


レアユニはそれでなんとか納得してもらったものの、精霊魔法使いと言えば未だにニコル先生しかいないという認識だった学舎。そこへ一気にアオイとウゲツっていう精霊魔法使いが来たから、実演してくれっていうお願いが多かったみたいだ。


彼、実はもう影も五体出せるし影武者も三体出せる。つまりすっかり「青の支配者」になっていて、精霊魔法の威力は四年前とは桁が違う。なのでニコル先生みたいに「オールマイティな精霊魔法使いのフリ」が可能なんだよ。まさか極悪出力の心理魔法が得意だなんて言えないからねえ…


だから「素直にさせた・・・精霊たち」に、ほどほどの魔法を出させてみんなと打ち解けていた。さすがアロイス先生の息子だ。うん。




――さて、ちょっとばかり問題があったのはアオイだ。

物言いが幼い印象のアオイは、自分のことをいつも「アオイ」と言っていた。だけどそれはあまりにも幼稚だと気付き、一生懸命一人称を「私」にしようとしていたんだ。


最初はすっごく気を付けてて「私もやるー」とか言っていたらしいけど、やっぱり何かの拍子に「アオイもっ!」と言っちゃったらしい。


慌てて口を押さえて「わ、私も…」と言い直したけど、周囲から笑われたそうだ。でも顔が真っ赤になったアオイを見て同室の子がフォローし、「自分で気付いて言い方直そうとしてるんでしょ?偉いよアオイ」と言ってもらえて事なきを得た。


まあそんな一人称の件は(アオイには重大事項だったけど)、精霊魔法の特殊さで些末事となってしまった。ニコル先生とウゲツの精霊魔法が「オールマイティ」と認識された後で、アオイは「特化型精霊魔法」ということがわかったからだ。


アオイの能力で開示されたのは「植物の成長を促進する」部分だ。アオイも四属性の攻撃魔法を撃てるようになったものの、その威力は一般の宝石級と変わりがない。だけど植物を異常繁殖させてしまうことに特化しており、その能力はもちろん「敵の進軍を阻害するのにうってつけ」と軍で認識されるってわけだ。


海側の緩斜面で雑草を一瞬で成長させ、そんな種類の草ではないのに人の背丈ほどまでにしてしまったのを見て、みんなは呆然とした。そしてハンナ先生が「この草、どうしよう…」と真っ青になり、高等学舎の軍部予定者が総出で風の大規模魔法「鎌鼬」による草刈りをしたというオチだった。




そんな感じでスザク以外の全員がそれなりに溶け込んだって話なんだけどさ。

…問題はこれからだよー、四年経っても根っこは変わらないスザクが学舎でどうなるかってね。だってライノとレイノでさえ大モテ男になっちゃったんだよ?そしてスザクはこの四年でぐわっと身長が伸び、現在百六十センチ近い。


更にこれが大問題。

スザクはヘルゲ先生そっくりなんだよ…


父が黒髪の紅玉。

息子は銀髪の紅玉。


四年前にヘルゲ先生が特別授業という名の生贄で学舎へ来た時の高等学舎のお姉さんたちは目がハートになっていたのを僕は知っている。


「友達千人できるかな」とウキウキしているスザクには悪いけど、彼の留学を考えただけでみんな死んだ魚みたいな濁り玉クラスの瞳になってしまう。


ライノとレイノが「たぶんそんなイイもんでもないぞ?」と経験会議で教えていた。それでもスザクのウキウキが止まらないので、僕らは静観を決め込むつもりです。だって怖いもん!





  

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ