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Precious Orb - 宝珠の庭 -  作者: 赤月はる
自然の体現者
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ミッションデビュー sideルカ

  




猫の庭へ戻ると、もうアロイス先生たちは「黒幕」を探すために動き出しているようだった。生き物やその死体を使う呪術と言えばタンランだし、ヘルゲ先生はすんごい獰猛な顔をして「白縹の本拠地へ直接攻撃とはな…そのケンカ、誰に売ったのか思い知らせてやるぞ」と言って、大きな端末で七つくらいのフォグ・ディスプレイを展開させていた。


情報を集めている段階らしいけど、一番確実なのは例の海洋生物を捕獲してマナの残滓を読み取ること。マナの扱いがヘタなタンラン人は生き物を媒介にして呪術を使うけど、全くマナを使わずに術の行使をするわけじゃない。呪術の核になっているものが手に入れば、アルの追跡方陣や自動マッピングに反応させられるってわけだ。


で、大人たちはその海洋生物の捕獲ってのが難しいねと言ってる段階なわけだね。


「アロイス先生、ミッションの構築をしてみました。検証してもらえませんか」


「クレア?もうグンター伍長のケガは治るんだよ?何のミッションなの」


「もちろん、ゾンビ魚捕獲ミッションです」


「えー…」


「お忘れではないですか?私たちにはアオイがいるじゃありませんか」


「あ…魚と意志疎通なんて、できるっけ?」


「アオイは生理的嫌悪感を催す生き物以外ならば意思疎通が可能です。それは何年も前にルカと検証済みです」


「そう、なの?ルカも知ってた?」


アロイス先生はぽかーんと口を開けて僕を見た。そういえばアオイの能力はさんざん検証したもんね。


「うん、クレアと一緒に見てたよ。岬で海に向かってアオイが手を振ったら、めちゃくちゃたくさん魚が跳ねて驚いたもん」


「っは~…てことは?そのゾンビ魚を?あれ、アオイが嫌悪感を覚えたらダメなんだからそいつとは意思疎通できないだろ。たぶん死体なんだし…」


「逆ですよアロイス先生。ゾンビ以外の魚全部にお願いして、そいつを探してもらうんです」


「あ、なるほど…!」


そんな風にクレアはどんどんアロイス先生たちみんなへその計画をプレゼンしていった。僕らもみんな集まって聞いていたけど、それぞれに役割があることを聞いてうきうきするのが止まらなくなってきた。


やばいなー、さっきクレアとレティが言った通りになっちゃった。すーっごく今、マナの錬成したくてたまらない。その辺のものをごばっと消しちゃいたい気分だ~。


「…ルカ兄、すてきな瘴気」


「出たァ、支配者モード!でも消すのは作戦の時にしてねルカ兄ィ~!」


「あー…そうだね。ノーラとニーナに言われると冷静になれるよ、ありがとう」


不穏なマナを垂れ流してしまったようで、瞳が潤んだノーラにすり寄られましたよ。今回の作戦はほぼ全員の魔法能力が必要になってくる。それに港や学舎の海を長期間封鎖なんてしなくて済むように、なるべく早い解決が望まれる。ということで、決行は明日の早朝だ。


「んー…ヘルゲ、どう思う?ミッション完遂確率と、損傷率はどう予測されるかな」


「そうだな、俺かニコルが付いて『盾』が使えれば損傷率はほぼゼロに近い。それとレビにフィーネを付ければ完遂率は百パーに近い」


「ほぼ穴のない計画ってことじゃないか…おっけ、わかった。クレア、その案を許可するよ。――アテンション!子供組もだよ、よく聞いてね。明日の早朝ミッションメンバーは港へ行く。大人組からはニコルとフィーネ、ヘルゲは黒幕の情報分析の方へ注力。子供組は全員。目標は仮称『ゾンビ魚』の捕獲。一体とは限らないから気を抜かないようにね。全員ヘッドセット着用でオープンチャンネルへ接続。クレアから作戦の要点を聞いて、ミッション時の役割とポジションを頭に叩き込んで。クレア、この近辺の海洋データは?」


「地形までは保有済みです。でもできればこの季節の海流データが欲しいです」


クレアはきっと思考深度を最大にして話を聞いている感じがするな。足りないものを言うと、ヘルゲ先生が即座に答えた。


「それは俺が渡そう。アロイス、ニコルは守護での子供たちの護衛と、精霊魔法で無理していないか見守らせることに特化した方がいい。ヘタに精霊が何かやると、クレアの判断速度に影響する」


「了解。それで頼むねニコル」


「は~い!」


「よし、では残りの大人組は引き続きタンラン犯罪グループの洗い出し。ニコルとフィーネは子供組と一緒に作戦の詳細を詰めてね。このミッションのリーダーはクレアだけど、オブザーバーとしてフィーネについてもらう。フィーネがストップをかけたら全員厳密に従うように。以上」


「ヤー!」


うっほー、やるぞ~!全員すっごい笑顔になっちゃってて、それ見たアロイス先生がいまいち不安そうな顔してるけど!でもね、大丈夫。ニコル先生とフィーネ先生の方がよっぽどウキウキした顔してるから~。





*****





翌朝、僕らは村の漁港へやってきた。時刻は朝の六時ジャスト、境界警備隊から危険な海洋生物の調査が終わるまでは漁へ出ないように通達が出ているので港には誰もいない。


ミッションルートは港から岬へ向かい、最期は猫の庭の目の前の海へ。村はこの国の南端、小さな岬を中心に扇形に広がっている。なので領海は岬を囲うように漁をしていい範囲まで結界が張ってあるんだよね。今回の捜索はその三日月形の領海内だ。


この結界は外敵の侵入防止でもあるし、白縹を逃がさないためでもある。白縹はこの国で飼われてる生体兵器扱いだからさ。だもんで、外敵もここにゴッソリと高火力の魔法を出す一族が住んでるのがわかってるし、海側からどんなに攻めてこようとしても船をドカンと壊されておしまいだから割りに合わない侵攻方法だと認識されている。


だから外敵が取るのは陸戦がほとんど。この国の西方にはタンランやフォン・ウェ・ドゥというアルカンシエルにとってやっかいな国がある。だけど一番西に存在する「蘇芳要塞都市」を突破するのは至難の業なので、大挙して攻めてくることができない。だから少数でテロだのをやってくるんだってさ。


ちなみに北の武の国レインディアからの侵攻は、山脈の切れ目である北方砦のある荒野が主戦場だ。そこにはリーさん率いる部隊が常駐していて、すっごく強いからいつも返り討ち。東には一応友好国しかないけど、レジエ山脈手前の湖沼地帯にはゲリラ戦を得意とする反政府組織が発生しやすい。


そして南半分を海に囲まれているけれど海側からの侵攻がほとんどないのは、白縹がいるから、と。南東の緑青の街や南西の金糸雀の里はほとんど戦闘力がないので蘇芳の警備隊がいるにはいるけど、平和なのは最南端に白縹があるからっていう認識があるみたいだよ。




そんなわけでね、今回の敵にはぺっしゃんこになってもらわないと困るわけ。アルカンシエルの南を「威力顕示」でもって守護している白縹の本拠地を攻撃してくるというのが、どういうことなのか。


それをね、派手に見せてやらなきゃいけないってことなんです。


「は~い、集合!みんないるね~、じゃあ守護が守ってくれるけど無理はしちゃだめだよ?クレアの作戦はすごいけど、やっぱ誰かに何かあったら嫌だから。気を引き締めて、みんなでゾンビ魚をどっかんとやっつけよーう!」


「おお、ニコルはとても元気がいいね。だが一応捕獲なのでねえ、どっかんとやっつけられると困ってしまうよ?」


「あ、そっか!ごめんフィーネ姉さん!じゃあ改めまして!みんなでゾンビ魚をすぱーんと一本釣りしちゃおうね!」


「おお、それは豪気だねニコル。しかし一本釣りというのは言葉の綾かな?作戦内容とは少々乖離した表現だね?」


…作戦、開始できません。

そうかー、この二人だとツッコミ役がいなくてボケの永久機関になっちゃうってことかな?


「おいニコル!俺は早くゾンビ魚捕まえたいんだ!ゴーサイン出してくれよ」


「あ、そっか!ごめんねスザク~。じゃあみんな、はじめよっか!」


「ヤー…」


ミッション開始、です…

はぁ、緊張感なくなるな~…




  

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