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元ホストの俺、乙女ゲームの王太子に転生。婚約者(悪役令嬢)だけは絶対に守ります  作者: ふうこ0701
第一章:転生と違和感

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第6話 守りたい人

毎週土曜日に更新します。


「殿下、下ろしてください。」


エレノアが真っ赤な顔で言った。


「ああ、すまない。」


俺はエレノアをそっと地面に下ろした。


「殿下……申し訳ございません。」


「どうして謝るんだ?」


「殿下を、つまらないことで煩わせてしまいました。」


エレノアはしょんぼりと俯いた。


「そんなことはない。それより、君はいつもあんな理不尽な目にあっているのか?」


俺が尋ねると、エレノアは黙った。


しばらくして、悲しげに言う。


「それは……私がルシアン様の言ったように、気が強く可愛げがないからですわ。」


「そんなことはないじゃないか。」


俺はすぐに言った。


「確かにエレノア、君ははっきり物を言うかもしれない。でもそれは欠点じゃない。むしろ利点だと俺は思う。」


エレノアは明らかに戸惑っていた。


「それに今日だって、君は間違っていなかった。リリア嬢の方が礼節を欠いていた。


なのに、どうして周囲は……。」


「おやめください、殿下。」


エレノアが静かに首を振る。


「リリアさんは聖女様で、可憐で可愛らしくて、皆様から慕われております。私にも理解できますわ。


それに……殿下は今、正気ではございません。」


「正気じゃないって、どういう意味だ?」


エレノアの目に、うっすら涙が浮かんでいた。


「だって……今の殿下は、本当の殿下ではございません。」


「本当の私じゃない?」


「今の殿下は、まるで別人ですもの。」


エレノアは悲しそうに微笑んだ。


「私達は、親の決めた形ばかりの婚約者。本来、殿下は私などに興味はないはず。


きっと記憶を取り戻せば、また……。」


「エレノア?」


「また、可憐なリリア様を選ぶはずですわ。」


エレノアの瞳から涙が溢れた。


それは先ほど見た、リリアの嘘泣きとはまったく違う涙だった。


胸がきゅっと苦しくなる。


俺は思わず、エレノアを抱きしめた。


「ごめん……ごめん、エレノア。」


エレノアは声を上げて泣き出した。


きっと今まで、ずっと堪えてきたのだろう。


「でも、信じてほしい。」


俺は言った。


「確かに私には記憶がない。でも私は君を守りたいと思っている。誰よりも君を守りたい。それだけは信じてほしい。」


「信じたいですわ、殿下。でも……私は怖いのです。」


エレノアは涙声で言う。


「殿下が記憶を取り戻して、私の元を去ってしまうのが……。」


「それに、記憶を失う前の殿下は、リリア様のことをとても好いておりましたもの。」


「私が、リリア嬢を?」


俺自身、リリア嬢は好みではなかった。


むしろ梨香子と同じタイプで、嫌悪していると言ってもいい。


それに、ここ数日エレノアを見てきたが、彼女は決して冷たい人ではない。


一見そう見えるかもしれないが、純粋で、嘘のない優しい人だ。


俺はそう確信している。


だが――


本当のレオニスはどうだったのだろうか。


エレノアの言うように、リリアに惹かれていたのか。


それとも、色仕掛けにやられていたのか。


わからない。


俺にはレオニスの記憶がないからだ。


もっとゲームをちゃんと見ていればよかった。


だが、俺の気持ちははっきりしていた。


俺はエレノアに惹かれつつある。


そして何より――


彼女を不幸にしたくない。


守りたいんだ。


「ごめん、エレノア。」


俺は言った。


「君にそんな顔をさせていたのは、きっと私のせいだったのだな。」


「もう二度とそんな顔はさせない。君を絶望させない。


今度は私が君を追いかける。


だから……もう一度、私にチャンスをくれないか?」


「殿下……。」


エレノアは涙目で俺を見つめた。


俺もエレノアを見つめる。


二人の間に、甘い空気が流れる。


俺は吸い込まれるように、エレノアへ顔を近づけた。


その瞬間――


「レオニス殿下。」


護衛騎士カイルの声が響いた。


エレノアは真っ赤になり、


「で、殿下……申し訳ありません! 今日はし、し、失礼いたしますわ!」


そう言って慌てて立ち去った。


「カイル……。」


俺は恨めしそうにカイルを睨む。


「殿下、帰りの馬車が参りました。どうぞこちらへ。」


カイルはよくわからない表情で俺を見ていた。


ただ一つ、わかったことがある。


俺はエレノアを守りたい。


エレノアが破滅する運命にあるのなら――


俺が必ず阻止する。


俺はまだ、この世界のことを何も知らない。


だが一つだけ決めたことがある。


――エレノアは、俺が守る。

第1章完結です。

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