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元ホストの俺、乙女ゲームの王太子に転生。婚約者(悪役令嬢)だけは絶対に守ります  作者: ふうこ0701
第4章 女王と忠犬

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第30話 一人しか愛せない

「お逃げになられるのですか?」


立ち去ろうとした俺を、エレノアが引き止めた。


俺は足を止め、振り返る。


まっすぐにこちらを見つめるその瞳は、怒っていた。


「私たちが、今日どれほど恥をかいたか、おわかりですか?

殿下は私たちという存在がありながら、外でお子を作られるなど……

私たちにも、プライドがあります」


抑えていた感情が、言葉の端々に滲んでいる。


「すまない。私の失言だった。

ただ、あの場はどう切り抜けるかで頭がいっぱいで……そこまで気が回らなかった」


本心だった。


だがそれが、彼女を納得させるものではないことも、わかっている。


「殿下の行動を制限するつもりはございません。

ですが……あまりにも、殿下が私たちに無関心なのが悲しいのです」


その言葉に、俺はわずかに眉を寄せた。


「私たちに無関心……か?

違うだろう。私は少なくとも、君に無関心だったことは一度もない。

現に今だって、こうして向き合っている」


俺は、エレノアを見る。


「私が無関心なのは、君じゃない。君以外だ」


その場にいた他の者たちは、息を呑み、ただ黙って見つめていた。


「ですが殿下、この者たちも殿下の、、、」


「エレノア」


俺は、エレノアの言葉を遮る。


「君の言いたいことはわかっている。

だが、その先は聞きたくない」


俺は瞳を伏せた。


「だから単刀直入に聞く。抱けばいいのか?」


空気が凍りついた。


エレノアは、さきほどまでの勢いを失い、顔を赤く染める。


綺麗事や正論を並べられるより、よほど現実的な問いだ。


「殿下、そのような……」


戸惑いが滲む声。


「エレノア、心は偽れない。

どうやら私は、一人しか愛せないらしい」


静かに、しかしはっきりと告げる。


「だが、夫としての義務を果たせと言うのなら――結婚後、平等に果たそう。

それで、許してもらえないだろうか」


エレノアは何かを言いかけた。


だが、その言葉が紡がれる前に――


俺は背を向け、その場を後にした。


背後で、セレナが何か騒いでいる声が聞こえたが、


今の俺には、どうでもよかった。


翌日、俺は国王に呼び出された。


謁見の場には、婚約者たちの保護者が一堂に会している。


「レオニス、説明せよ」


国王の言葉に、俺は昨日の一件をそのまま説明した。


そして、自らの発言が配慮に欠けていたことを認め、


「今後は軽率な行動を慎むと、お約束いたします」


と頭を下げる。


エレノアの父、クラウゼル侯爵は、


「殿下は普段のご様子から見ても、今回の件は些細なものと考えてよろしいでしょう」


と、比較的穏やかに受け止めた。


だが、クラリッサの父、アステリア国王は違った。


「じゃが、娘クラリッサが大切にされておるとは、とても思えん」


明らかに納得していない様子だ。


「クラリッサを愛しく思っておるのか?」


その問いに、俺は一瞬だけ言葉を選び――


「大切にしなければならないとは思っています」


そう答えた。


“愛している”とは、言えなかった。


アステリア国王の表情が、険しくなる。


「ならば、せめて姫を正妃に据えよ」


「できません」


俺は即座に答えた。


「そもそも、私にすでに正妃がいると知った上で、国益のために姫を差し出したのは貴国のはず」


一歩も引かない。


「ほう……では、私の娘はどうなる?」


「クラリッサ姫は仰っていました。王族に寵愛は不要だと。

必要なのは、信頼と国益だと」


静かに言葉を重ねる。


「私は、それに応えたいと思っています」


一呼吸置く。


「……とはいえ、陛下のお気持ちも理解できます。

国益と婚姻は、本来別のもの」


視線を真っ直ぐ向ける。


「このような愛のない私のもとに置くのが哀れだと思われるのであれば――

どうぞ、お連れ帰りください」


場が静まり返る。


やがて、アステリア国王は、ふっと笑った。


「クラリッサが言った通りじゃな。なかなか度胸がある」


豪快に笑いながら言う。


「クラリッサは、お主に本気のようじゃ。

できる限り、可愛がってやってくれ」

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