第74話 ポイントを増やそう
冒険者ポイントを貯めると、とても良いことがあるようだ。
「毎月、冒険にかかる費用を代わりに負担してくれます」
「へえ。凄いね」
でも、大した額じゃないだろう。
最大百ゴールドまでとか、そんなところかな。
「千ポイント消費に付き、一割負担してくれます」
「……へえ」
けっこう多いな。
一万ポイントで、全額負担ってことか。
「……やっぱり、貯めるの大変?」
「そんなことありません。みなさんなら、すぐに一万行くと思います」
それなら、やってみようかな。
「というか、ギルマスはなんで教えてくれなかったんだろう。初めて聞いたんだけど」
「やってるのが、ギルドじゃないからです」
ギルドの横に、男が立っている。
黒いローブをまとっており、フードで顔まで隠している。
「……なるほど」
魔術師協会か。
簡単に言うと、魔法を研究している組織だ。
能力診断やら、ポイントやら、転送陣やら、テーマパークやら。
そういうものを作ってるのは、大抵この人達。
別に危ない人達ではないので、普通に話しかける。
「入会費を払ってね。料金は――」
「……たっか」
危なくないよね。
詐欺でも、ぼったくりでもないよね。
「……大丈夫」
問題ない。お財布は寂しくなってしまうが。
これも先行投資なので。ここからお金が舞い込んでくるので。
「はい。どうも。これでポイントが加算されるよ」
「ありがとうございます」
ポイントは……0か。当たり前だけど。
地道に貯めて行こう。
☆
ミリアの話では。
冒険者ポイントの貯め方には、二つの方法があるようだ。
一つは町への貢献。
通りを闊歩する盗賊を退治したり。
はたまた、お店で働いたり、買い物をしたり、町中を掃除したり。
誰もが考える良いことをしていれば、ポイントは貯まる。
二つ目は冒険。
というより、ギルドでのお仕事だ。
ダンジョンに潜り、クエストの依頼を達成していく。
そんな私たちが普段からしてる当たり前のことでいいそうだ。
「なあんだ。それなら、楽勝だね」
バサッと紙の束を取り出した。
中身はギルドからの依頼書である。
「これだけの数のクエストを達成すれば、ポイントなんてすぐ貯まるよね」
あとはいつも通り。仲間の力でバッサバサと。
「ブルー」
「はい。≪シードローン≫!」
手のひらから、4機のドローンが出現。
パタパタパタパタ! 空に飛び上がって行く。
「あなたは、このグレートアントを担当してね。アリのモンスターだよ」
「はい」
「5匹討伐のクエストが8枚分で、計40匹ね」
「了解です」
次は、グリーン。
「キラーホークが担当だよ。3匹×7枚。計21羽ね」
「はーい」
で、私とレッドは。
「ゴブリンが相手だよ。20匹×23枚。計460匹」
「……は?」
レッドが聞き返した。
「……460匹? 46匹じゃなくて?」
「聞き間違えじゃないから」
「……おう」
今は、繁殖期だから数が多いのだ。かき入れ時なのだ。
「だが、そんなにたくさんのゴブリンをどうやって」
「余裕だよ」
私は感知を使って、ゴブリンの居場所を探り当てる。
「できるだけ、一か所に固まってるところ……あった!」
ゴブリンの巣を発見。
定番の洞窟だ。
「ブルー。悪いけど、シードロを一体お借りできるかな?」
「どうぞ」
「サンキュー」
念のため、ドローンに『ステルス』をかけて。
それから、アイテムで匂いを消す。
これでモンスターには、まず気づかれない。
パタパタパタパタ! ドローンが飛んでいく。
そして、洞窟の中に侵入。
「ごめん。水晶玉も借りるね」
「何してんだ」
「中に人間がいないかチェックしてるの」
空中をぐるっと回転し、洞窟中をくまなく観察してみる。
しかし、どこを見ても緑色の小鬼にしかいない。
「なんか、まずそうなもの食ってんな」
「本当だね。泥団子かな」
チェック終わり。
では、ゴブリン退治を始めよう。
「必要なものは……これです」
そう言って、私が披露したのは、目と口の付いた植物である。
『かわいい』と言う人もよくいるが、私からすれば不気味な魔物。
「トリカブです。マンドレイクと同じ系列の植物」
「キモイな」
「そうか。レッドもそう思っちゃったか」
レッドには炎で炙ってもらう。
すると。
「キィエアアアア!」
奇声を出した。
夜中に聞いたら、心臓が止まりそうだな。
「……なんか、口から吐き出したぞ」
「危ないから、私の後ろに来てくれる」
「おう」
紫色の息だ。
風に乗って、洞窟の中へ流れていく。
「こいつは……」
「毒ガスだよ。しかも、猛毒。吸ったら、私たちでもかなりヤバい」
「……マジか」
奇声が止まり、紫の息が途切れた。
こんなものでいいだろうか。
最後に仕上げだ。
「レッド。入口を壊して」
「おう。爆裂断!」
ボンと音がすると、洞窟の入口がガラガラと崩れていく。
「生き埋めにすんのか」
「うん。これで、放っておけば、ガスで死ぬから」
古来より伝わる、ゴブリン駆除のやり方である。
賢いな古代人!
わざわざ洞窟に入るなんて、バカのすること。
昔の人は、そう考えていたんだろうか。
「今ので、何匹だ」
「退治できたのは、約40匹だね」
つまり、単純に計算して。
同じようなことを、あと11回ほど繰り返す必要がある。
というわけで、またゴブリンの巣を探すところから。
「なんつーか、地味だな」
「うん。すごくだるいね。この作業」
☆
「……終わった」
あれだけあったクエストを、全て終わらせた。
「さて、ポイントは……」
どうなってるだろう。
480ポイント
「……え?」
こんなに低いの?
「いや、まさか、今日あれだけ頑張ったのに。というか、1000は行くと思ってたのに」
「大丈夫ですよ。千里の道も一歩から。ここからですって」
「……」
今の話を聞いて、心が折れた。
冒険者カードを、ポイと投げ捨てる。
「もうやめようよ、こんなこと」
「はやっ! だから、まだ初日ですって」
なんか分かってしまったのだ。
これ続けられないって。
「ダンジョン探索が、つまらないんだよ! このやらせてる感じが、すごくイヤなの!」
そうだ。私は仲間と楽しく冒険したいんだ。
目的と手段が入れ替わってはいけない。
楽しくないなら、冒険する意味なし。
「あたしもだ。ゴブリン埋めるの超つまんねー。あたしは敵とかっこよく一騎打ちをいたいんだよ」
ブルーなんか熱を出しちゃったんだぞ。
グリーンも寝ながら、どっか行っちゃったし。
誰だ、こんなひどいことをした奴は。
「ステラちゃんでしょ」
「そうだけど。悪いのは、このポイント制度なんだよ」
というわけで、この話は終わり!
もう帰ろう。
「待ってください」
「ミリア。あなたには感謝してる。おかげで、私は大切なことを思い出せた。冒険をする喜び。そんな当たり前すぎて、見過ごしていたことを」
「勝手に良い感じに終わらせないでください!」
なんだ。ミリアはまだポイントだかを続けたいらしい。
まあ、話だけは聞いてあげようか。
一生懸命で、かわいいし。
「見せたいものがあるんです。きっと、それを見れば、ステラさんの考えも変わると思うんです」
「へえ。そんなに凄いんだ。どんなもの?」
彼女は頷いた。
「ずばり、ランキングです!」
「ランキング?」
「はい。お見せしましょう。ついてきてください」




