第100話 会長登場
「……ようし。魔族を倒したぞ」
私たちはついに討伐したのだ。
ヘビの頭をした魔族『カースメイカー』を。
「ということは……」
私は側にいる仲間を見た。
「ブルー。もっと私に顔を見せて」
「……痛い! 痛いです! 頬をつねらないで」
「間違いない。この顔は……私だ!」
忘れそうになるが、私の仲間はみんな同じ顔なのだ。
表情や格好などでほとんど別人の域に達してはいるけど。
「ブルー。ブヒヒッ! ブヒヒヒッ!」
「……怒りますよ」
ちゃんと人語を話している。
大丈夫。いつもの彼女だ。
「部屋が明るいー」
言われてみれば、明るい。
この部屋には太陽でも置いてあるのか。
「……いや、違う」
人が輝いているのだ。
向こうから光る人が、歩いてくる。
「……あれは、まさか」
私は息を呑んだ。
光る人が、私に向けて話しかけてきたのだ。
「ステラさん。ありがとうございます。おかげで呪いが解けましたわ」
――キラリーン!
「……くっ。眩しい」
喋ってる!
光る人が、何か喋ってるぞ!
「照明を抑えてください。ステラさんが困っているではありませんか」
「はい。只今」
メイド達が駆けつけて、ライトの調整をする。
あんな大きな装置が、部屋の四隅に設置してあったのか。
だが、これで姿が確認できるようになった。
どんな姿なのか見てみよう。
「……」
ふんわりとした真っ白なドレスを着こんでおり、頭にはティアラ。
お姫様だろうか。
清楚な感じで、魔法使いのトップというイメージと嚙み合わない。
「そう言えば……」
冒険者の職業の中に『プリンセス』というものがあったな。
あれだろうか。
会長も一応、冒険者の枠組みに入ってるってことか。
「ごきげんよう、ステラさん」
おお。スカートの裾をつまんで。
貴族っぽい挨拶をしている。
よし。私も真似して……。
しまった! スカートを履いてない!
これズボンだよ。
メアリやピンクなら、出来そうなんだけどな。
「……ゴホッ」
副会長が、前に出てきた。
「会長。よろしいでしょうか」
「はい。なんでしょう」
「魔族の暴挙により、町に被害が。住民も混乱しています」
マギーくん人形だ。
奴らが自爆して回ったせいで、広場やお店は穴だらけ。
おまけに、包丁をブンブン振り回すせいで、人々が怖がる。
しかも、あいつら……。
「マギー!」「マギー!」「マギー!」
まだ暴れているのだ。
カースメイカーがやられたにも関らず、動き続けているらしい。
どうやら、あの人形には自動と手動の二パターンがあったらしく。
自動の方は、術者が消えても止まることはないようだ。
「このままでは協会の信用問題に……」
「分かりました。すぐに対処しましょう」
彼女は背中からステッキを取り出し、頭上高くに振り上げた。
そして、呪文を唱える。
「≪スター・フィックス≫!」
≪スター・フィックス≫
難度 ★×10
属性 光
使用回数 5/5
成功率 100%
説明 古代魔法の一つ。壊れた町やダンジョンを修復することができる。
キラキラーン!
空から、無数の星が出現し、町に降り注いだ。
キラキラ!
破損した箇所が、どんどん修復していく。
キラキラ!
マギーくんに、命中すると、
「……マ、マギー」
その機能が停止し、元の人形に戻って行く。
キラキラキラ!
気づくと、サモネアの町は、私たちが来たときと同じ様相に。
「不安を抱いた住民がいれば、わたくしの部屋に通してください。話を聞きますわ」
何かさらっと、凄い魔法が飛び出したな。
壊れた町を、あっさりと修復してしまった。
効果範囲が広すぎる。
強力な人形も、杖の一振りで無力化してるし。
これを扱える会長自体も凄いが。
膨大な魔力と、高度なコントロールを両立しないと使えない魔法だ。
こんなものを使われたら、カースメイカーも一溜りもなかっただろう
先手を打ってブタに変えた気持ちも、よく分かる。
☆
事件は終息したので、私たちは食事会を再開している。
「モグモグ。ステーキおいしい」
うむ。運動のあとのご飯は最高だね。
「……ん?」
グリーンがアサシンの人と会話している。
名前はキョウだっけ?
「ねーねー。見て見てー」
グリーンは皿に乗ったさくらんぼを口の中に放り込んだ。
そして、口の中でモゴモゴとさせると、
「べー」
と、吐き出した。
見ると、さくらんぼの茎が結ばれている。
有名な奴だ。さくらんぼの固結び。
あれが出来る人は、キスが上手いんだとか。
「キョウもやってみてー」
「シュコーッ!」
アサシンの人にもやらせるのか。
これは、見物だな。ガスマスクの下の素顔が拝めるかもしれない。
「はーい。さくらんぼー」
「シュコー!」
「一つじゃ足りないのー? じゃあ、三つー?」
トリプルで固結びするそうだ。
お調子者かな?
さあ、どんな顔をしてるんだ。
この私に見せてくれよ。
「シュコー!」
アサシンがガスマスクに手をかけると――
――カチッ!
突然、照明が落ちた。
「……はっ」
部屋の中が真っ暗になって、前が……。
――カチッ!
「わーすごーい。ちゃんと出来てるー」
「シュコーッ!」
「……くっ」
素顔が見えなかった。
カースメイカーもやってた照明テクニックか。
メイドさんが、新たな料理を運んできた。
「ケーキをご用意しました」
「うおおおっ! 特大ホールケーキだっ!」
冗談で言ったのに、まさか本当に用意してるなんて。
「ほうら。ブルー。あーん」
私が一切れのケーキを見せると、ブルーが口を開いてくれた。
モグモグと食べている。
「どう? おいしい?」
「はい。とても甘くて」
「ブヒヒッ! ブヒヒヒヒッ!」
「……まだ、そのネタ引っ張るんですか?」
というわけで、食事会は楽しく進行していき、
「ステラちゃん」
ピンクが私のところへやってきた。
「会長に書物を見せておこうよ」
「へ? 書物?」
「ええいいっ!」
ピンクのエルボーが炸裂した。
「ごぼおっ!」
「どう? 思い出した?」
「ああ。書物ね。はいはい」
会長に見せてみよう。
ヨルクさんから書状と調査結果も預かっているので、それも一緒に渡す。
「……ふむふむ」
会長は真剣な様子で、書物のページをめくっている。
「……なるほど」
「解読できそうですか?」
「はい。少し時間をいだたければ」
いったい、どんな内容が書かれているのだろうか。
「長くなりそうなので、詳しいことは食事会のあとにしましょうか」
「はい」
「明日の朝、私のところへ訪ねてきてください」
というわけで、今晩は宿に泊めてもらい。
明日、部屋に伺ってみることにする。




