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神の力を使って森を生き抜く 7

 そこには怯えいる少女がいた。

 王城にいた限りでは黒髪など見たこともなく、王女様に聞いてみてもこの世界には黒髪は極端にいないらしい。


 だが、その黒髪の少女が目の前にいる。


 まずは助けたほうがいいな。このままじゃ死ぬのは確定だ。


 俺は怯えている少女から目を離し、魔物ウルフに視線を向ける。


 俺の視線だけで実力差を野生の勘で悟ったのか、怯えだす。


 怯えても結局は殺すことには変わらない。


 俺は【毒姫】を出すと同時に一匹殺す。


 殺した直後に速度を緩め、あえてウルフたちに見せつける。


 ウルフたちは、一瞬にして仲間がやられたことに対して動揺した。


 その一瞬の隙をつき残りの9匹を殺す。

 最初から全部を一瞬で殺すことはできたが、なんとなくこのやり方で殺した。



「ふぅ」


 まぁそこそこだな。


 このぐらいなら英雄と呼ばれる者たちもできるだろう。


 さて、帰るか……


「あっ」


 そういえば謎の少女を忘れていた。

 俺は急いで少女に駆け寄る。


「気絶してるな」


 少女は緊張が解けたのか知らないが、気絶していた。

 大きな怪我はしていないようだ。


「どう見ても人間だよな」


 どう見ても人間にしか見えない。


 魔族はツノやら尻尾やらがあると聞いたから魔族ではないだろう。


 さっきの様子から見て俺を殺すどころか、怪我させることすらできるとは思えないので、安全なところに運んだほうがいい。


 ここで気絶してたら間違いなく魔物に食い殺されるだろう。


 さすがに少女が死ぬとわかってて見捨てるほど落ちぶれてはない。


 取り敢えず俺の家に運んでおくか。


 少女を家まで運び、俺のベッドに寝かせる。


 こんなことならもう一個ぐらいベッド作っておけばよかったな。


 さすがにここに訪問者が来るとは思いもしなかったし仕方がないな。


 半年間この森にいてもまったく人なんて見なかったのに、装備もしてない少女がここに来れるわけがない。


 俺はここ半年間でこの森の全域を見てきたが、村なんてなかったし、近くに人里はなかった。


 森を抜けるにしても、ここから50キロほど離れた場所に行かなければならない。


 となればこの少女は俺のように転移させられたか、それとも………




「まさか転生者ってやつか?」



 よくある地球で死んで異世界に転生するやつだ。


 俺が悠馬に借りていた本もそうだった気がする。


 それなら髪が黒いことも納得できる。


「面倒ごとにならなきゃいいけどな」


 俺は深いため息を吐き、晩ごはんを作るためリビングに移動した。


 忘れていたが、今日はドラゴンの肉だ。


 それだけでテンションが上がる。



 ドラゴンの肉は美味しすぎて俺の料理の腕では逆に味を落としてしまうので、凝った料理をするつもりはない。


 ドラゴンの肉本来の味を出すのが大事だと俺は思うので、シンプルなものにするつもりだ。


「いっちょやったるか」


 まずは、インブレットという火に強い木材で作ったフライパンを取り出す。


 あとは……木で作ったボールと笊と皿と………いろいろだ。


 レタスを生み出し、発水草から出た水で洗う。


 それを笊で水気を切り、皿の上に乗せる。


 と、同時に発熱草で温めていたプライパンででかいドラゴンの肉を焼く。


 塩はないので胡椒だけで、味付けする。



 焼きあがると、木で作った包丁で食べやすい大きさに切る。


 そして、野菜の乗った皿に肉を乗せる。


 うん。完璧だ。


 はっきり言って料理と言っていいものかわからないほど簡単な調理をした。


 まぁドラゴンの肉はシンプルが一番だから問題はないだろう!


「やべ、もう待ちきれない」


 俺はレタスで肉を包んで食べる。


「う、美味い。今までのドラゴンの肉とは比べ物にならないぞ……」


 俺は驚愕した。


 ここまで美味しい肉は食ったとこはなかった。


 普通のドラゴンでも、地球では食べられないほど美味しいのにこれはそれを超える。


 だが、この肉はそれを優に超えるのだ。


 しかも、この肉はあの大きいドラゴンの肉なので有り余るほど残っているので、ここ何日間はずっとドラゴンの肉だ。


 大きく生まれてきたことと、美味しく育ってくれたことに感謝するしかないだろう。


 少女の分を残しておく予定だったが、余りにも美味しかったから全部食べてしまった。


 まぁ少女が起きるのは明日かもしれないし、別に問題ないだろう!


 腹が減ってるとも限らないしな。


 俺が食後のコーヒーを飲みながら少女について再び考え始める。


 そういえばあまり気にしてなかったけど、あの少女をどっかで見たことあるような気がするんだよなぁ。


 あの少女の外見はとても可愛いかったはずだ。


 ショートカットの黒髪に、恐ろしく整った容姿と大きな瞳、若干幼さは残っているけど後数年もすれば莉子のように美人要素も入ってくるはずだ。


 まぁ怯えている表情だったからなんとも言えない。


 まずは少女の事情を聞いてからいろいろ考えるか………


 俺は面倒だったので思考を放棄した。


 するとーーー



 ーーーーギィ


 俺の部屋のドアが開く音がした。



 ★


「うぅ………」


 ここはどこなんだろ、まったく知らないところ……

 布団はふかふかしてるし、いい匂いもする。

 どうしてここにいるんだっけ………


 私は確か…………そうだ!


 魔物に襲われたんだった!!


 そしたら白髪のお兄さんが助けてくれたんだった!


 ってことはここはお兄さんの家なのかな?


 私はこの部屋から出るために、ドアを開ける。


 ーーーーギィ


 そこにはやはり助けてくれたお兄さんがいた。


「調子はどうだ?」


 私に気付いたお兄さんが言った。


「だ、大丈夫です!」


 椅子に座っているお兄さんを私はジッと見てみる。


 白髪の髪に、整った容姿、服の上からでもわかる引き締まった肉体。


 私はふと、あの魔物を倒したお兄さんの強さが気になってしまった。


 そういえば、神様から貰ったスキルの中に相手のスキルがわかるスキルがあったような気がする……

 確か……鑑定!



「鑑定か? やはり転生者ってのが一番有力だな」


 え!! なんでスキルを使ったことがわかるの!


 しかも私が転生者だって事もバレてるし………。


「勝手にスキルを見ようとしてすみません! わ、私は鈴木 伽耶と言います! ごめんなさい!」


「す、鈴木伽耶………」


 お兄さんはかなり驚いているっぽい。


 もしかしたらこの世界の人達は最初に自己紹介する習慣がないのかな?


 それでいきなり自己紹介したからびっくりしちゃったとか?


「あの…… この世界の人ですよね? よければ名前を教えてください」



「あ、俺の名前は………ミ◯ドラース。ミルドって呼んでくれ」


 ミルドさんかぁ。


 白髪で、顔も結構イケメン!


 しかも、あの魔物を瞬殺できるほど強いなんて………私は運がいいかも!


「ま、取り敢えず座ってくれ。いろいろ聞きたい事がある」


「わかりました!」



 ★


「調子はどうだ?」


 見た限りは顔色もいいから大丈夫そうだけどな。


「だ、大丈夫です!」


 なかなか元気がいいやつだな。

 ん?なんか目に魔力が集まってーーー


「鑑定か? やはり転生者ってのが一番有力だな」


 やっぱり間違いないな。


 黒髪で、鑑定が使える。


 間違いなく転生者だろう。


 鑑定は目に魔力が集まるから俺にはすぐわかってしまうのだ。


 魔物にも鑑定を使うやつがいて、俺のスキルを見た瞬

 間俺を哀れみの目で見てくる奴がいたな。


 というかやっぱりこの少女の顔をどっかで見た事あるような……


「勝手にスキルを見ようとしてすみません! わ、私は鈴木 伽耶と言います! ごめんなさい!」


「す、鈴木伽耶………」


 鈴木伽耶。


 俺はその名前に聞き覚えがあった。


 この容姿でこの名前は世界に一人しかいないだろう。


 そう、俺の3人の友人の1人ーーーー鈴木莉子の妹だ。


 実際に会った事はないが鈴木伽耶という名前は莉子から度々聞いていた。


 莉子が毎回妹の話をするときに必ず言う事がある。


『伽耶ったら可愛いんだよ〜』


 莉子が可愛いと言うなら嘸かし可愛いのだろうと思っていたが、実際に見ていると莉子にも負けないほど可愛い。


 まさか莉子の妹がこっちの世界に来るとは思いもしなかったがな。


「あの…… この世界の人ですよね? よければ名前を教えてください」



 俺はどっからどう見ても日本人だと思うけど……………あっ。



 もしかして白髪のまま助けちゃったのか?


 それなら俺を異世界人だと勘違いしても仕方がないな。


 待てよ……これうまく使えるよな?


 俺が莉子の友達です〜なんて言ったらいろいろ面倒ごとになるはずだ。


 それなら俺は元からこの森に住んでいる変な人で通そう。


 だったら秋っていう名前はもしかしたら莉子から聞いているかもしれないので変えたほうがいいな。



「あ、俺の名前は………ミ◯ドラース。ミルドって呼んでくれ」


 ド◯クエの魔王から名前取ったけど大丈夫だよな?


 パッと思いついたのがこれだけだったから仕方がないだろう。


「ま、取り敢えず座ってくれ。いろいろ聞きたい事がある」


 さて、事情を聞こう。


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