第二話 冒険者来訪
最初の下僕【スライム】を従えたマロンは、その後も次々とスライムをボコボコにして服従させていった⋯
リリス「たくさん捕まえたね。ざっと10匹くらいかな?」
マロン「そのくらいだな。一旦ダンジョンに戻るか。」
二人はダンジョンに戻って行った。
スライム(ぽよんっぽよんっ)
スライムたちはダンジョンに放たれて、徘徊している。
マロン「よし、リリス。もっとスライムを服従させに行くぞ!」
リリス「ちょっとまって!スライムたちに餌を用意してあげないと。」
マロン「餌?」
ダンジョンに放った魔物は、餌を用意してあげないと弱ってしまう。
リリス「スライム程度の魔物なら、マ草で十分だよ!」
マロン「マ草?」
【マ草】とは、マナを含んだ植物だ。
ダンジョンに植えたら雑草のように自然と増えていく。
マロンはリリスから貰ったマ草の種を、ダンジョンにばらまいた。
マロン「これでいいのか?」
リリス「うん!あとはマ草が育つのを待つだけだね。」
スライム「ピ⋯ピキッ」ぷるんっ
なんと、スライムの1匹が分裂して2匹になった。
マロン「おい!!スライムが増えたぞ⋯」
リリス「おー!繁殖したねぇ。スライムは体内のマナ量が多くなると分裂して増えていくんだ。マ草の種をつまみ食いしちゃったのかな?」
マロン「じゃあ、スライムもほっといたら無限に増えていくじゃねぇか⋯」
リリス「そうだね!捕食者がいない場合は餌がある限り無限に増えていくよ。ちなみに服従してる魔物が繁殖した場合、生まれた子もちゃんと服従してるから安心してね。」
その後マロンは、ほかのスライムも次々に服従させて、下僕を増やして行った。
1週間後⋯
マロン「どうだリリス?スライムがこんなに増えたぞ。」
リリス「す、凄いね⋯スライムだらけだ。」
ダンジョン内には100匹ほどのスライムが徘徊していた。
マロン「これで準備は整ったな。冒険者たちが悲鳴をあげる姿が目に浮かぶぜ。フッフッフ」
リリス「ちょっとまって!あと、宝箱も用意しないと。」
マロンはリリスに連れられてダンジョンの一番奥の部屋まで足を運んだ。
リリス「本当はたくさん用意したほうがダンジョンの評判が良くなって、冒険者を集めやすくなるけど、まだ最初だし宝箱一つでも問題ないよ。ダンジョン攻略報酬として何かアイテムをこの中に入れておいて!」
リリスはダンジョン最深部に空の宝箱を設置して、マロンにアイテムを入れるように促した。
マロン「俺、何も持ってないぞ。うーん、石ころでいいか。」
その辺に落ちていた石ころを拾って、マロンは宝箱に入れた。
リリス「あはは⋯ま、いっか。今は私の結界魔法でダンジョンを人間から見えないようにしてるけど、準備が整ったら解除するよ。」
マロン「おう!いつでもいいぞ。」
リリス「それじゃ、解除しま〜す!」
ダンジョンの結界が解除されて、人間が目視できるようになった。
マロン「これで、次は何をするんだ?」
リリス「すぐにお城へ帰るよ!人間が来ちゃうかもしれないからね。ダンジョン内は水晶を通して観察することができるから、冒険者が来るまで待とう!」
そうして、マロンたちはお城へと帰って行った。
マロンが水晶を通してダンジョンを観察していると、早くも冒険者が姿を現した!
アンコ「ねぇ、本当に大丈夫なの?」
カイト「心配いらないよ!さっき覗いた時、スライムばかりだったから低レベルのダンジョンだよ!」
ユウキ「良いアイテムがあるといいな。」
【アンコ】Lv5 魔法使い 冒険者ランクE
【カイト】Lv10 戦士 冒険者ランクE
【ユウキ】Lv8 アサシン 冒険者ランクE
リリス「お!早速、冒険者が来たねぇ。服装を見る限り、まだ駆けだしっぽいね。」
マロン「フッフッフ。我がダンジョンの養分となれ!!」
冒険者たちの前にスライムが現れた。
アンコ「ファイヤーボール!」
「ボンッ」
カイト「おらーー!」
「ザクッ」
ユウキ「⋯⋯」タッタッタ
シュッスパッ
姿を現したスライムたちは全滅した。
その後、冒険者たちは次々とダンジョン内のスライムを惨殺していき、最深部まであっという間に辿り着いていた。
リリス「あらら⋯やっぱりスライムだけじゃ無理があったみたいだね。」
マロン「⋯⋯こいつら悪魔だ。」
カイト「結局スライムしか出なかったな、このダンジョン。」
アンコ「経験値にもならないし、お金も落とさなかったから最悪だよー。」
ユウキ「宝箱があるぞ。」
カイト「おぉ!ユウキ、開けてみろ。」
ユウキは宝箱を開けた。
「パカッ」
ユウキ「⋯⋯」
カイト「何が入ってたんだ?」
そう言ってカイトも駆け寄り、宝箱を確認した。
カイト「⋯⋯」
アンコ「どうしたの二人とも?」
アンコもカイトたちの反応が気になって宝箱の中を確認した。
アンコ「⋯⋯」
中には石ころしか入っていなかった⋯
カイト「⋯帰るか。」
ユウキ「そうだな。」
アンコ「もう二度と来ないよ、こんなダンジョン。」
冒険者たちはお金を落とさない魔物や、経験値にならないスライム、そして宝箱の中身がゴミだったことにショックを受けながら帰って行った。
リリス「あちゃー。評判は最悪だね。これが冒険者たちの間で広まったら誰もダンジョンに寄り付かなくなっちゃうよ。」
マロン「俺の下僕たちが⋯」
リリス「また服従させたらいいよー。それより名誉毀損しないと!」
マロン「どうしたらいいんだ?」
リリス「評判の良いダンジョンには三つの要素があるよ。」
1. 弱くて経験値が高い魔物を配置する。
2. レアアイテムを宝箱に入れて配置する。
3. 強い魔物やボスを配置して、腕試しができるようにする。
リリス「他にも評判に繋がる要素はあるけど、大体こんな感じだね。あと、魔物にお金をたくさん持たせるのも効果的だよ。」
マロン「お金なら親父がたくさん持ってるな⋯」
リリス「魔族にはあんまり使い道ないから頼んだら貰えるんじゃないかな?」
マロンは父にお小遣いをねだりに行った。
マロン「100万G貰ってきたぞ。一度だけだからなって言われたから、もう貰えそうにないな。」
リリス「おー!それだけあれば十分だよ。あとはスライムより強い魔物を服従させないとね。それと、レアアイテムも用意しよ!」
マロン「やることがたくさんあるな⋯楽しくなってきたぜ。フッフッフ」
マロンの初めての冒険者来訪は良い結果にはならなかったが、失敗は経験になり成功の種となるだろう。
マロンのダンジョン経営はまだ始まったばかりである。
これからたくさん知識や経験を積んで、立派なダンジョン経営マスターになるのだ!