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ラブ・テロ

亜羊「名前…が、何かですって?」


「そうだよ、純潔の人間が入ってきたら噂にもなるさ。少なくとも暫くはお前の話題で持ちきりだ。早く自己紹介しろ。」


亜羊「先に名乗ったらどうですか?」

ルミ「ルミ・リオンだ。気軽にルミと呼ぶことを許そう。今からお前は私の下僕……フレンドになるんだから。」


 生徒会長に負けない我が儘ボディを惜しげなく、寧ろ見せびらかすように仁王立ちしたその生徒は生徒会長と対をなすように真っ黒な髪に、危険な、しかし、吸い込まれそうな美貌だ。


 亜羊「あなたのような傲慢な奴とはフレンドになりたくないんですが。」


 ルミ「安心しろ、あの詐欺ズラぶら下げた人間擬きの鶏より素晴らしい関係を築ける!約束しよう!なんせ血が薄まったと言っても悪魔は悪魔、約束には厳格だ。」

 亜羊は肩を組まれ、無理やり連れ去られ、着いたのは西棟、通称「悪魔棟」のAクラス。

 亜羊は後悔した。事前説明で明確に禁止されてはいないものの、近づくだけで生徒や教師に忌み嫌われる唯一の場所として西棟Aクラスが説明されていた。血が薄まった悪魔の中で特別血が濃い悪魔が集められたクラスだ。

 生徒会長ですら「ハダがピリピリしてイヤ!」と言っていたのを思い出した。

 部屋は綺麗で気品すら漂う中、どこか不気味な雰囲気を孕んでいる。


 ルミ「さあどうぞ!」


 部屋に押し込まれた亜羊を捕まえたのは、制服を着崩し、全身から色気を噴出するまさにAVから飛び出したような悪魔だった。


 「ちゅ〜〜〜〜♡」


 亜羊は抵抗するままなく唇を吸われた。

 ルミが目尻を釣り上げて、痴女を蹴り飛ばした。


 ルミ「アス!それ止めろって言っただろ!セクハラはどちらからでも成立するんだからな!」


 アス「アレ?なんでこの子そんな顔してるの?本当に人間?」


 口元をゴシゴシと擦る亜羊をマジマジと見つめる悪魔はあまり頭が良くないようだ。


 アス「まぁいいわ。アタシはアス・ラビット♡アスでいいわよ!」


 亜羊「……亜羊です。痴女みたいな事はやめた方がいいですよ……」


 恨めしくにアスを睨む亜羊は、突然顔を掴まれた。覗き込んだのは髪が顔を覆うほど長い背が低めの悪魔、レディ・フィッシュだった。


 レディ「僕はレディ・フィッシュ、女ではなく男だ。間違えたら殺す。それよりなんで人間のくせにアスと普通にイチャイチャしてんだ殺すぞ。テメェも他の人間みたいに操り人形になれよ殺すぞ。」


 鼻どころか歯もぶつかりそうな距離で捲し立てられ、亜羊は面食らった。悪魔とはこんなにも騒がしいものなのか。亜羊は飛び散る唾液を顔面で受け止めながら悩んだ。


 ゼブ「そんなに捲し立てられても困るよな亜羊、今のはアスが悪いんだから。あ、オレはゼブ・フライ。仲良くしてくれると嬉しい。」


 亜羊からレディを引き剥がし、助けたのは背がヒョロリとした草食系男子の様な悪魔だった。


 ルミ「ゼブ、残りの3人はどこだ?」


 ゼブ「サンは職員室で生徒会長とお話ししてる。マンは食堂裏の自販機のとこで見たよ、どうせまた小銭探してる。ベルは知らない、また空き教室で寝てんじゃない?アイツ骨だから理科室の方が目立たないのに。」


 ルミ「と、まぁ騒がしい仲間だ。亜羊、君を呼んだのは他でもない。お願いを聞いて欲しいからなんだ。」


 亜羊は並んだ四人の悪魔を見渡した。


 亜羊「イヤだね。こんな自己中な奴らに協力したくないね。それにお前らと関わると後々がめんどくさいって聞いてる。」


 ルミ「それなら心配ない。明日にもその話は全校生徒に回るだろう。君は終わりだ。」


 亜羊「この悪魔共!」


 ルミ「悪魔ですが何か?」


 アス「ウケる♡」


 亜羊は力なくへたり込んだ。目の前が暗く感じる。


 ルミ「勿論、ここでこのお願いを断ればの話だ。聞いてくれれば、私たちの力を貸そう。」


 亜羊「どう言う事?」


 ルミ「私達は今見た通り、元の悪魔の性質が色濃い故、こんなところに隔離されている。私達はこの状況を抜け出したい。それには君のような人間の協力があれば良いと思う。」


 亜羊「何故?」


 ゼブ「悪魔は約束に厳格だからだよ。でもあくまで人間との約束が前提なんだ。天使や悪魔同士だと効果がない。」


 アス「約束破ると酷い時は死んじゃうんだって♡」


 亜羊「で、どんな約束?」


 ルミ「話が早い、私は君に私たちの言動の矯正を手伝ってもらう、君は私たちに力を貸す。これに同意した上で握手を私として欲しい。それだけ。」


 レディ「チープだが絶対だ、後悔しろ、そして死ね。」


 ルミ「こいつはほっとけ。さぁ、握手を。」


 亜羊は手をハンカチで拭いた。


 亜羊「面倒見てやる。だから力を貸して。」


 ルミ「喜んで。」


 お互い手を握りつぶしそうな力で握手を交わす。


 ルミ「これでいい。さて、君の噂のやつだが……どうしよう?」


 亜羊「は?何も策もなくこんな事に巻き込んだの?」


 ルミ「力を貸すと言ったが、アイディアを出すとは言ってない。」


 このクソカス共、内心悪態を突きながら、亜羊はふと思い出す。


 亜羊「アスがキスしたら操り人形になるってレディが言ってたけどどう言う事?」


 アス「あ、覚えてた?正確にはアタシの唾液を飲んじゃうとアタシの言う事何でも聞いてくれるようになるの♡」


 アスは跳ねるように近づいてきて、亜羊の前で口を開いた。


 アス「舌入れたらもっとすごいんだから♡」


 ゼブ「じゃあ何だ?全校生徒にキスして回るのか?」


 アス「それいいかも!」


 ゼブ「止めろ」


 揉める悪魔を横目に亜羊は口を開いた。


 亜羊「いや、もっといい方法がある。」


 ルミ「お?なんだい?教えておくれよ。」


 亜羊「上水道にアスのヨダレ大量に流そう。」

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