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孤高の彼女  作者: 赤虎
17/45

感謝状貰いました!

1


「ハチ、着信してるよ」

「えっ?」


ホントだ。鞄の中でスマホが振動している。毎度のことながら、何故分かったんだ?


「はい、八屋です・・・はい?・・・そうなんですか!ありがとうございます!・・・それは無理です。授業がありますから・・・そんなこと言われても・・・だから、無理です・・・それはそちらの都合でしかありませんよね?・・・」

「どうしたの?」

「警察から。この前の連続猫殺傷事件の件で、感謝状渡したいから来いって・・・」

「貸して・・・名前を如月エリカと草壁ひとみにしてくれるなら、次の日曜日の夕方に行きますけど?・・・その日は休み?人様が働いているのに休むとはどういう了見なんでしょうね?・・・トップモデルが2人も訪問するって言っているんですよ。少しは有難く思ったらどうです?・・・はいはい、検討して下さいね。それと、この件に関しては今後事務所を通して下さい。じゃ」

「何で如月エリカと草壁ひとみで?」

「一般人に感謝状渡すだけでもマスコミが来るよね。感謝状渡す相手が如月エリカと草壁ひとみだったどうなると思う?うまくいけば、署長レベルじゃなくて警視庁長官から貰えるかもしれないし」

「物凄い宣伝効果がある・・・」

「そういうこと。私達の夢の実現にとって有益だよ」


えっ?何時から私達になった?まぁ、いいけど・・・


2


日曜日の撮影終了後、三島弁護士、マネージャーの曽根さんと一緒に私と紗希は警視庁に赴いた。警視庁からの事前リークがあったのだろう、大勢のマスコミが私達を出迎えてくれた。正に紗希の思う壺だ。私達4人は警視総監室に案内され、私と紗希は警視総監から感謝状を貰った。大勢のカメラマンが取り巻き写真を撮っている。ただし、事務所との事前調整でインタビューは厳禁。それでも不測の事態に備え、三島弁護士と曽根さんに同行してもらったわけ。更に私達の個人情報を一切漏らさないと警察に確約させるためにも。


「エリカ、この写真でどう?ひとみもばっちり映っているし」

「これいいね!後で送って!」

「はいよ。これでエリカとひとみには”正義の味方”ってイメージも付与されたわけだ。商売繁盛繁盛!」

「今回の件は全面に出さない方がいですよ。あの容疑者は全治4ヶ月の重症とのことですから。もっとも、警察はそれを承知で警視総監直々に感謝状渡したんですから、警察から情報漏洩することはないと思いますけど、慎重になった方がいい」

「えっ、そうなんですか?」


三島弁護士が曽根さんに釘を刺した。そりゃそうだろ。容疑者は憎悪に塗れた紗希に半殺しにされたんだから・・・


「何で全治4ヶ月・・・」

「曽根さん、そこは詮索なし、他言無用ってことで・・・」

「はい・・・分かりました・・・」

「それでは、私はこれで失礼します」


三島弁護士は去っていった。私達は事務所に戻って着替えないと・・・


3


次の日、学内は結構な騒ぎになっていた。如月エリカと草壁ひとみが連続猫殺傷事件の容疑者を取り押さえ逮捕に協力し、警視総監から感謝状を貰ったとマスコミが大々的に報道したからだ。だけど、犯人を取り押さえた当事者が此処にいるというのに、誰も気付かない。私と紗希はベンチで御弁当を食べながら周囲の喧騒を眺めていた。


「まぁ、こんなもんだろうけどさ」

「他に報道することないのかな?」

「逆に私達が報道すべきことを隠しちゃったのかもしれないけどね・・・今日は私の当番か・・・何にしようかな・・・」

「私、あれが食べたいな・・・ジャガイモと唐辛子の炒め物」

「ああ、炒土豆絲か・・・簡単だからそれにしようか?」

「そうしよう!私、好物だし!」


大学から家に帰る途中、商店街で例の女子高校生達と出くわした。


「あっ、この前のジャージ女と変な女が一緒にいる・・・」

「仲間だったんだ、あの2人・・・」

「あっち行こ」


彼女達は私と紗希を見た途端に逃げるように路地に入っていった。おいおい君達、私達はね・・・


「紗希ちゃん!」


青木のおじさんが手招いている。私達は店の中に入った。


「こいつ、クロスボウ持ってたんだろ?よく取り押さえることできたよな。草壁ひとみと2人で取り押さえたのかい?」


だ・か・ら、それは私だって!


「此処だけの話、ひとみは110当番通報しただけで、私1人で取り押さえたんです」


実際そんなもんだったけどさ、取り押さえたんじゃなくて半殺しにしたんでしょう。


「でもよ、紗希ちゃん、こんなことしていると何時か大怪我するから気を付けな・・・そう言えばさ、現場は天神様だろ?紗希ちゃんの家から2km程度だよな・・・紗希ちゃんがそこにいたのは理解できるけど、草壁ひとみは何故そこにいたんだろ?彼女の家もこの界隈なのかな?」


おじさん、結構鋭い!私達はそこまで考えていなかった・・・


「ひとみは私の家に泊まっていたんですよ。あの日は撮影が午後からだったんで、時間があるから散歩でもしないかって、私が誘ったんです」

「じゃ、嬢ちゃんも家で草壁ひとみと一緒だったってこと?」


紗希!口から出まかせ言うの止めて!嘘を重ねると自爆するから!


「そうですよ。部屋が足りないから、ひとみを私の部屋で寝かせて、私はハチの部屋でハチと一緒に寝たんです」

「なんだ、そう言うことか。で、嬢ちゃん、素顔の草壁ひとみってどうだった?すっぴんでも可愛かったかい?」

「すっぴんでも可愛かったですよ!ジャージ着せても可愛いと思う!」


ああ、私までムキになって!もう止めようよ!


「そうなんだ!今度機会があったら4人で飯食おうぜ!奢るからさ!」

「4人って?」

「紗希ちゃんと草壁ひとみと嬢ちゃんと俺だよ」

「いいですね。今度彼女に聞いてみますよ」


そんなの絶対無理!


「楽しみにしてるぜ!」

「じゃ、私達は失礼します」


家に帰ると、紗希は早速晩御飯の準備を始めた。台所にいる紗希に、私は居間から愚痴をこぼす。あんな嘘ついて収集がつくとは到底思えない。


「紗希、ど~すんのよ、あんな嘘ついて!」

「仕方ないでしょ。草壁ひとみがこの界隈に住んでいるって言ったら、それこそどうなるか分からないじゃない」

「おじさん、すっかりその気になっちゃったじゃないの!」

「暫くすれば忘れるよ!それより、お父さんと口裏わせとかないと」


最悪の連鎖だ・・・いっそのこと、私達が如月エリカと草壁ひとみだと公言してしまえばどれほど楽になるか・・・少なくとも嘘を重ねるよりましだ・・・でも、マスコミだけでなく有象無象が押しかけて商店街にも迷惑かけるしな・・・しんどい・・・

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