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鶯 3

「もうあの国は滅んでしまった。

お前が望んでいたユキカという姫は行方知らず。

諦めなさい。お前とは縁のなかった、と思いなさい。

お前にはもっと相応しい他国との王女の縁談がある。」

ハルキは自分の父である王に告げられたのは婚約破棄と新たな婚約者との縁談だった。

「そ、んな。

せめて探しに行くことをお許しください!

ユキカはきっと生きています!」

「だめだ。

お前は何を自分で言っているか分かっているのか?

あの国は今は戦乱でどうなっているか分からないんだぞ。

分かっているのはただ一つ、イルサによりガレは滅びイルという新たな土地になったということ。

イルサはわが国とは敵対はしていないが同盟国とも言えぬ。

おまえが行けば何かしらの疑惑をかけられるかしれない。

今は静観するのが得策だ。」

「ユキカはどうなるのです!私の婚約者です!」

「だから先程も言っただろう。

それにユキカという姫はたとえ生きていてもお前の妻には出来ない。」

「何故ですか!」

「頭を冷やせハルキ。

ガレの姫であったからお前との婚姻を許したが、今となっては亡国の姫。

お前にとって足枷にはなっても力にはならないだろう。」

この話は終わりだ、とハルキを残し王は部屋を出て行った。

目の前の冷たい大理石のテーブルには何冊もの見合い写真が並んでいる。

「どうしてこんなことに。

ユキカ、やっともう少しで君とずっと一緒にいられると思っていたのに。」


ガレがイルサに攻め込まれているとハルキが知ったのは既に事が終わりかけている頃だった。

ハルキは急ぎ王の元へ走った。

だが王は中々言い訳をつけハルキに会おうとはしなかった。

それでもハルキは諦めず夜になっても王の部屋の前でずっと待っていた。

真夜中になっても居座るハルキに根負けした王はハルキにようやく面会を許した。

「今ならまだ間に合います!どうか兵をガレへ!」

嘆願するハルキに王は首を横に振った。

まだ今なら助けることが出来ると言っても無駄だった。

何故なら王は全てを知っていて兵を動かさなかったのだ。

「あれが敵ではこちらに分が悪い。

最悪共倒れにでもなってみろ、このモナノ国でさえ乗っ取りにあうかもしれん。」

「・・・もしや父さまは全てを知っていて兵を出さなかったのですか?

ガレを見殺しにしたのですか?」

「お前は自分のことしか頭にないようだな。

王である私は自国の民を守る責任がある。

もしガレを守り切れずモナノ国も敵と見なされた場合、わが国は一体どうなる?

モナノ国が最初に攻撃してきた、とこれ幸いにイルサは大義名分をつけ戦争をしかけてくるだろう。

・・・他国の民は二の次でよい。」

「それでも、なんとか」

「ハルキ、お前の気持ちも分かる。

だが政治は綺麗事だけで出来るものじゃない。

何かを切り捨てながらでも国を、民を守るのが王なのだ。」


そうして翌日、ガレはイルサの手に落ちたという知らせが届いた。


「ごめん、ごめんよ。

僕に力がないばかりに、約束を守れなかった。」

愛する人を守れなかったと今は嘆くことしかできない。


だが人とは永遠に同じ気持ちでいることは出来ない生き物である。

悲しみの中で時間を止めることは出来ない。

ユキカを失った悲しみにいつしか折り合いをつけハルキも新たな道へと進んでいくことになる。


「さようなら、ユキカ。」

指輪も手紙も全て涙と共に。

数少ない思い出の品と共にユキカへの愛を葬り去った。








その頃、ユキカはハルキが自分との婚約を正式に破棄したとイズルから聞かされていた。

「嘘、嘘でしょう?」

「君との婚約破棄を早々に他国へ伝えているそうだ。

イルサにも新たな婚約候補を探していると使者が来た。」

「そ、んな。」

崩れ落ちるユキカにイズルは優しく手を差し伸べた。

「あちら側からぜひ、と申し出てきたよ。

こちら側の親類なら良し、無理なら君の姉妹でもいいらしい。

どちらにしても政略結婚を望んでいるのだろう。

繋がりが出来るからね。

ユキカが死んだとでも思っているのかな。

こうして元気に生きているのにね?

もし死んだと言われても僕なら君の遺体を見つけるまで諦めない。

敵国に単身で乗り込んででも探しに行くのに、彼は早々に諦めたらしい。」

「私はここにいる、のに。」

「そうだね、僕の腕の中にいる。

もうユキカも諦めなよ、そして現実を見るんだ。」

ユキカはまるで絶望の淵にいるような気分だった。

心のどこかで期待していたのだ。

きっとハルキだけは私を見捨てない、と。

探しに来てくれることを祈っていた。

だがもうその祈りは誰にも届きはしない。

「君は僕が好きだと言うけれど、僕だってそこまで鈍感じゃない。

・・・この鎖は君を守るために仕方なくつけているんだ。

そうしなきゃ君はこの部屋を出ようとするだろう?

部屋の中は安全だが部屋の外は敵ばかりだ。

僕が守り切れるか分からない。

部屋の外はユキカを歓迎していない者も多いんだ。

それにまだイルサ国はちょっと混乱していてね。

だからもう少しだけ我慢してほしい。

ユキカの立場を確保するまで、もう少しだから。」

「私の立場?」

「ああ、イルサ国の王妃にしてあげるよ。

君はイルサ国の王妃になるんだ。」

王妃、何故、どうして。

「無理よ、私が王妃なんて」

何かの冗談でしょう?


















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