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20話 話し合い

「よーし、そろそろ話し合うぜ。そことそこのテーブルをこっちに寄せてくれ」


 エースが立ち上がり手を叩きながらそう言うと、3つのテーブルを適当に寄せる。皆、そのテーブルの周りを囲う様に集まり椅子に座った。


「まずは各チームの報告からだ。俺から話そう。俺たちは北の平原で戦っていた。現在のレベルはエコーを除き、6レベル。エコーは3レベルだ。出現モンスターは、ホーンラビット、ブルースライム、ビッグマウス。ホーンラビットはアクティブモンスター。それぞれのドロップアイテムは兎の角、ブルーゼリー、ネズミの尻尾。ドロップ率は100%の模様。門の近場では敵は1匹ずつしか出現しなかったが、奥地では複数体のモンスターの出現を確認。そのようなゲーム設定なのか、ただ単にモンスターとのエンカウント率が高いだけなのかは不明。いずれ調べる。次、ピース!」


 エースは要件だけ話すとピースを指名し、席に着いた。


「東チームだ。皆6レベルになった。東は草原。敵はウィードドール、ブルースライム、ビッグマウス。ウィードドールのドロップアイテムは薬草。そして1つだけだが、草人形というアイテムをドロップした。レアドロップアイテムの可能性あり。また、こちらも奥地では複数体のモンスターが出現した。以上」


「その草人形がドロップした確率はどのくらいですか?」


 レアドロップアイテムという言葉に反応して、エコーが質問する。


「少なくとも100体は倒している。1%以下だろうな」


 エースたちのチームも、ホーンラビットだけでも100体以上倒しているし、ブルースライムに至っては200体に迫る勢いであったが、レアドロップアイテムは無かった。レアドロップ率にモンスター毎の個体差があるのか、それとも元々レアドロップアイテムが設定されていない個体がいるのか。それは分からないが、調査が必要なのは言うまでもない事である。


「成程。分かった。次はナッシュだ」


 オールイーターの中枢メンバーの1人で、西チームのリーダーであったナッシュが立ち上がる。


「現在の我々のレベルは5です。西は畑などが広がっており、遠くには草原が見えました。近場で狩りを続けていた為か、複数出現する敵とは戦っていません。敵はグリーンスライム、ブルースライム、ビッグマウス。グリーンスライムのドロップアイテムはグリーンゼリーです。グリーンスライムはブルースライムと同じくらい弱いですが、草むらの中から不意打ちしてきます。不意を突かれると通常よりも被ダメージが大きくなります。気をつけてください」


隠密スニークボーナスダメージか?これも要調査だな。次、ティーガー」


 ナッシュと入れ替わるようにティーガーが立ち上がる。


「最初、南門に向かったが封鎖されていた為、西門より迂回し、南エリアに入った。確認出来たモンスターはイクネウという鶏のモンスター。ドロップアイテムはイクネウの羽だ。1匹倒したところで3体の仲間を呼ばれた。勝てないと判断し、カーグを壁にして西エリアに戻った。その後、デスったカーグと合流し、西エリアでレベル上げをしていた。現在のレベルは4。あと少しで5レベルになる。以上だ」


 エースが分かった、と言うとティーガーは席に着いた。


「最後はエコーだ。エコーには一足先にリアルに戻ってもらい、このゲームの事について2chやウィキ、そして俺たちオールイーターが自ら運営する攻略サイトに書き込んでもらっていた」


 何人かが、何故?という風にざわめく。当初の予定を知らない新人のメンバーたちである。


「ではエコー、報告を頼む」


「私が戻った時には、2chでは未だにゲームから戻ったプレイヤーは誰もいなかったらしく、質問攻めにあってしまうほどの大反響でしたよ。2chの相手をすると同時に、オープンβに参加出来なかった残りのオールイーターのメンバーたちに情報を伝え、我々の攻略サイトにつぶさに書き込ませました。内容はキャラメイクの仕様から、3国のスタート地点、VRのリアリティ、モンスターの生態や戦闘、ヘルプの内容まで私の知り得た限りの事を出来るだけ。後は2chにその攻略サイトのアドレスを添付し、誘導しました。閲覧者のカウントが一気に跳ね上がったので、かなりの注目度だったと思います。ウィキには何も書き込んでいませんが、あの勢いならば我々のサイトを見た者が勝手に書くでしょう。報告は以上です」


 エコーは座りながら隣にいるエースに、こそりと話しかける。


「ジートの動画も好評でしたよ、フフフ」


 エースはエコーに、ご苦労、と一言言うと立ち上がり皆に話しかける。


「さて、皆は知らないだろうが、俺たちの運営する攻略サイトには当然ながらギルド名が書かれている。この意味が分かるだろうか?このスタートダッシュと2chへの書き込みによって、俺たちオールイーターは一躍有名ギルドとなった訳だ」


 新人たちに向けた言葉であるが、場を盛り上げる為、古参のメンバーたちが、おお~、などと言いながら拍手を送る。エースはそれを笑いながら、まぁまぁという風に手で制す。


「有名になるというのはゲーム攻略において有利になる。例えば、ギルドから勧誘される際、無名ギルドと有名ギルドならば、どちらを選ぶ?例えば、他のギルドとの相互協力が必要となった際、無名ギルドと有名ギルドならば、どちらと協力する?少なくとも俺ならば有名な方を選ぶだろう。ましてや攻略情報を提供する程の『善良な』ギルドともなると、それはそれは顕著になるだろう。利用出来るものは利用しなければ、な」


 エースはニタリと笑う。黒い笑顔である。新人たちも理解出来たのか、成程と頷いている。

 しかし、エースたちが攻略情報を公開する理由はそれだけでは無い。それは攻略情報を公開する事で得られる感嘆の声や称賛の声。それらが攻略プレイヤーにもたらしてくれる達成感、優越感、制圧感、自尊心、矜持、エリーティズムは、恐ろしい程の快感であった。まるで麻薬が人間を廃人にする様に、ゲーマーがこの快感を知ると全員が廃人になる。思わずそう思ってしまうほどのモノであり、現にオールイーターはその中毒者の集まりでもあった。



「以上で報告は終わりだ。これからは皆と相談して重要な事を決める時間だ。お題は、ステ振り。つまり、各人どの様な戦闘職を希望するか、だ」


 エースがそう言うや否や、待ってましたと言わんばかりの歓声が起きる。一番うるさいのはカーグである。『タンク!タンク!』と騒いでいる。


「お前らうるさいぞ。店の人の迷惑になるだろうが。まったく…とにかく、まずは説明するぞ。一応MMO初心者もいることだしな」


 騒ぐ馬鹿どもを静めてからエースは簡単な説明を始める。


「初めに言っておくが、このMMOにどんな戦闘職、生産職があるかなどは俺にも分からない。だが、ステータスを見れば大体の事は見当が付く。『STR』、Strengthは力。最前線で敵に物理攻撃を与えるアタッカーならば必須と言えるステータス。力こそ正義!『VIT』、Vitalityは体力。敵の攻撃から味方を守るタンクと呼ばれる防御力重視の戦士に必要なステータス。VITに極振りしたタンクは正に動く要塞!『INT』、Intelligenceは知力。魔法攻撃力と最大MPが上がる為、魔法職にとって重要なステータス。火力の要だ!『MND』Mindは精神。魔法回復力に影響する為、ヒーラーならば必須。回復力の無いヒーラーなぞ、ただの産業廃棄物だ!『AGI』、Agilityは素早さ。スピード重視の戦士になりたいのならばこれ。VRMMOならばプレイヤースキル次第で大いに化ける可能性あり…かも!『DEX』Dexterityは器用さ。弓の精度に影響があるらしい。他のゲームでは生産職に影響する事もある。正直言って、今の時点で最も不明瞭なステータスはこれだ!以上6つのステータスがある!」


 エースは口調を強めステータスの説明をすると、手元に置いている水で喉を潤し、話を続ける。


「もちろん、今すぐに、全員決めろと言っている訳では無い。自分のプレイスタイルのビジョンをはっきりと持てない者や生産職希望者などはしばらく様子見する事も大切だ。このゲームが転職可能、ステータス振り直し可能ならば問題無いのだが…これらのやり直しが出来ないMMOは意外とある。もしも、このゲームも転職やステータス振り直しが不可能の場合、キャラクターの育成を失敗したら悲惨だぞ。何故なら、このゲームのアカウントは1人1つ。どう足掻いても取り返しが効かないからな」


 それを聞き、ギルドメンバーは深く考え込む者と全く動じない者との2つに分かれる。前者は自分のプレイスタイルを決めていない者、または慎重な者。後者はプレイスタイルをはっきりと決めた者と様子見に徹する事を決めた者、そして楽観視している者である。

 この楽観視している者というのは、このVRMMOにおいて転職やステータス振り直しが可能だろう、と予想している者たちである。先ほどエースが言った通り、このゲームのアカウントは1人1つ。つまり育成するキャラクターはたった1つ。己自身である。その様な条件下で、運営は転職を不可能にしたり、ステータスの振り直しを不可能にしたりするだろうか?と考えた場合、不可能にする必要性が無いという結論が出るのである。それはこのゲームに課金制度が無い為、プレイヤーに課金の転職アイテム、ステータス振り直しアイテムを買わせる必要が無いこと。プレイヤーに様々なプレイスタイルを提供することでゲームを飽きさせない、過疎防止の効果がある、などの事が容易に考えられるからである。この様な事に知恵が回らない程、ここの世界初のVRMMO運営陣は阿呆ではないだろう。

 それを物語るように、実はエース個人的な意見は楽観視側なのである。様子見という意見を強く推している理由は、ギルドマスターというプレイヤーを率いる立場として万が一に備えなければならない為というモノであった。

 もちろん、だからと言ってでたらめなステ振りなどは決して許さない。あくまでも、ステータスの振り直しは保険なのであるのだから。トップ攻略ギルドになるという気概は常に持っておかなければならないのだ。



「覚悟は決めたか?それでは戦闘職とステ振りを決めていこうか!」


 また、わぁ!と歓声が沸いた。

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