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破鏡の世に……  作者: 刹那玻璃
江東だけではなく、様々な場所で、思惑、策謀と日常が移りゆきます。
271/428

策略は思った以上に混乱を与えているようです。※

子翼しよくは、建業けんぎょう宮城きゅうじょうにほど近い屋敷に連れていかれる。

そこは瀟洒しょうしゃで美しい屋敷なのだが、何故か少々色褪せた、くすんだ印象を受ける。

友人はすでに話を通していたらしく、すぐに奥の部屋に案内される。

そこには端正ではあるが、少々疲れきった武将が立っていた。


「突然お呼びだてしてしまい、申し訳ない」


声もくたびれている……と、


「母上~!!帰ってきたの……?」


泣きじゃくりながら子供が、扉を開けて入ってくる。


いん!!急に入ってくるんじゃない!!客人に失礼だろう」


主である周公瑾しゅうこうきんが、息子を叱りつける。


「だって……だって、母上……本当に帰ってこないの!?どうして!?」

「で、出ていったからに決まっているだろう!!」

「じゃぁ、何で僕は置いていかれたの!?」


自分が言ったこと、母親を怒らせたことをすっかり忘れている胤は、


「ち、父上のせいなの?父上が、悪いんだ!!」

「静かにしなさい!!私は仕事だ!!お前は勉強の日だろう!!行きなさい!!」

「うわぁぁ……父上なんか大嫌いだ!!」


飛び出した息子を見送り、溜め息をつきながら扉を閉める。


「申し訳ない……妻とは色々あり……、その……上の二人を連れて出ていったので……」

「そうでしたか……まだ幼いお子さんには辛いことでしょう……」

「そう言って戴けると有難い……さぁ、こちらに……」


席を勧められた子翼は、腰を下ろす。

そして、


「先程、彼から聞いたのだが……水軍が訓練をしているとか……?」

「そ、それは……」


おどおどと周囲を見回す。


「大丈夫。ここは人払いをしている……さ、先程の息子はその目をかいくぐっただけで……」

「それでしたら……」


ホッとしたように溜め息をつくと、


「……こちらの先鋒は荊州けいしゅうの水軍……蔡瑁さいぼうどのが……指揮すると、それ以上は……」

「確か、荊州の船は大型が多かった筈……数は……」

「いえ……私はそこまでは、詳しくは……」


本当のことだから首を振る。

聞いていないと言うより、荊州の水軍など、子翼にはどうでもいいのである。


「あ、あの……この話は、内密に!!お願いします!!でなければ……私の命だけでなく、家族親族まで……」

「解っている。話を聞かせてくれてありがとう」

「は、はい……では、これでよろしいですか?」


子翼は、ほっとした様子で、友人と共に出て行くことが出来た。

そして、お礼の宴会をすると言う友人に断り、とっとと逃走したのだった。

頼まれた仕事は終わったのだ……後は、主がどうにかするだろうと……。




子翼と友人が、公瑾の屋敷から出ていったのを、偶然、相談の為に訪れた魯子敬ろしけいは、眉をひそめる。

見覚えのない男が、公瑾の屋敷から出てくるなどあり得ない……どう言うことだと……。

公瑾に会った子敬は問いただすと、子翼から聞いた情報を告げる。


「公瑾どの!?」


愕然がくぜんとした顔で、公瑾を見る。


「そ、それは……」


言いかけた子敬と、公瑾の耳に、ざわざわとざわめきが聞こえる。


謀叛むほんだ!!」

「周公瑾が、裏切った!!」

「引っ捕らえろ!!」


公瑾は呆然と立ち尽くしたのだった。

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